彫刻と仮面
私...
認められている。
私は、綺麗だなぁと思うくらい。人に磨かれた
そんな程度だろう。自分で磨いたのならもう少し面白い物なのだろうか?
別に家庭や環境が悪かった訳じゃない。両親は私を愛してくれていると思う。
悪いのは、人を喜ばせる方法を。人に合わせる以外に思いつかなくて。
彫刻刀を人に渡して、それで自分にできる事やりきったかのように
満足したのは私だ。
それからは、頑張っても頑張っても私が
突きつけられ続けた。自分なんかより他人の方が私を綺麗に創れるって。
...独り思索はここまで。
そんなだから時々、
大体独りの時間で補強は終わるのだが、今日は新学期初日。ずっしりとした
ストレスがのしかかる。多分また削られるのだろうな。
早朝の教室は静かだ。数時間で鼓膜を破るような騒音の源と化すとは到底思えない。
「と言うか思いたくない...」口をついて出た言葉に気の緩みを自覚する。
でも、周囲の警戒すら怠っていた事には気付かなかった。
ガラガラっと。扉が開いた音がした。疑問の余地もない。見られた。終わった。
...おkもういいや諦めがついた。不登校になってやろう。
繕う気も失せたまま見上げると、アイツがいた。
異性の知り合いも結構居る私だが、こいつはわりと記憶に残って居る。
友人のみんなを不快にさせないように、人の観察を続けている私。
それで上手い事皆に合わせているのだが、こいつは何処か私と思考が似通っている
所がある。比較的気楽に話せるのでこいつとは結構仲が良い...はずだ。
付き合ってんのか?とか言ってきた
目を合わせる。驚愕と、嬉し...さ?がアイツの眼に映る。
さて、どうしよっかなぁ。広められたりすると面倒だ。かと言って...
一瞬で再開した独り思索を遮るようにアイツが口を開く。
「僕なんか邪魔したっぽいね、ごめん。」...は?こいつ偽物か何かか?
一人称が違う。後、何故か言葉に底冷えするような抑揚がついている。かと思えば
私の
さっきの声を聞いた後だと芝居感が拭えない。まさかアレがアイツの素?
それなら...もういいか。お互いに日頃は隠している
向こうも探られたくないだろうし。そう思って。
誰にも見せたことがないくらいに
自分の席に、私の席の隣に座った。普段は想像もできないくらい丁寧で、
ゆっくりと。そうして私たちは端から見ると、今から殴り合い始めそうな
剣呑な雰囲気で。お互いを
私たちは惰眠を貪った。
件の名前を覚えてないバカップルに茶々入れられた。クソっ...。
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