第4話「社員食堂が大パニック!」



「社長、大変です!」


今日も元気にレオが飛び込んでくる社長室。もはや朝の定番になりつつあった。


「今度は何?」


「社員食堂でドワーフ料理長が暴れています!」


「はぁ!?」


* * *


社員食堂は大混乱の真っ只中だった。


「我が『スタミナ全開!魔力120%回復カレー』に文句をつけるとは何事じゃ!」


包丁を振り回すドワーフ料理長のゴルドー。その前で震え上がる社員たち。


「料理長、このカレー、確かに魔力は回復するんですが...」

「もう一か月同じメニューで...」

「胃が...胃が...」


社員たちの悲痛な声が響く。なるほど、全員の顔色が明らかに悪い。


「社長!」

メリッサが厳しい視線を向ける。

「これでは労働生産性が15.3%も低下します」


「分かってる、分かってるから...」


圭介は恐る恐るゴルドーに近づいた。


「あの、料理長。新メニューを検討してみては...」


「何!?」

ゴルドーの髭が逆立つ。

「我がドワーフ伝統の精力剤カレーほど、社員の生産性を上げるメニューがあるというのか!」


「いや、それは分かるけど...」


「よし!ならば勝負じゃ!」

ゴルドーが突然、白い布を取り出す。

「社長が我がカレーより優れたメニューを作れるというのならば、この料理長の座を明け渡そう!」


「えっ、私が作るんですか!?」


「社長、お願いします!」

「私たちのお腹を救ってください!」

社員たちの悲痛な叫び。


「料理の腕前なら、前世で一人暮らし5年の経験が...」

圭介が呟く。


「なにを言っているんですか、社長」

メリッサが冷ややかな目を向ける。

「あなたは経営に専念すべきでは?」


「いや、これも立派な経営判断だよ」

圭介は意を決して前に出る。

「従業員の健康管理も、経営者の責務だからね」


「おお!」

レオが感動した声を上げる。


「ふん」

メリッサは小さくため息をつく。

「では、私も審査員として参加させていただきます」


「調理開始!」

ゴルドーの声が響く。


料理対決が始まった。ゴルドーは得意のカレーを、圭介は前世で覚えた「肉じゃが」を作る。


「な、なんじゃこれは...」

ゴルドーが圭介の料理を口にする。

「この懐かしい味は...まるで母ちゃんの料理のようじゃ...」


大粒の涙を流すゴルドー。周りの社員たちも「優しい味!」「胃にやさしい!」と大絶賛。


「メリッサさんもどうぞ」


「...」

一口食べたメリッサの表情が、僅かに緩む。


「まあ、合格...という所でしょうか」


この日から社員食堂のメニューは、「スタミナカレー」と「母の味シリーズ」の2本立てとなった。


「よかった...」

圭介はほっと胸を撫で下ろす。

「でも、なんで料理の腕前だけ持ってこられたんだろう...」


異世界の企業経営は、今日も波乱の連続であった。

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