13.
「⋯⋯さっき、ママが大河のこと大好きって分かるって言ってくれていたよね。その大好きをしてくれているのかな?」
そう訊くと、こくんと頷いてくれた。
「ふふ、そうなんだ。ありがとう」
姫宮も抱きしめ返して、その柔らかな髪を撫でた。
まだ寒い時期。だが、部屋が過ごしやすい温度にしてくれているおかげでそうとは微塵とも思わない。それとは別に我が子の体温が暖かく、姫宮は眠りかけているのを気を張ってどうにか目を覚まそうとしていた。
「大河、は⋯⋯眠くない⋯⋯?」
眠たげにゆっくりとした口調で訊ねると、大河は首を縦に振った。
小さく笑った。
「そう⋯⋯。じゃあ、まだ起きていようか⋯⋯」
とは言っても、何をしようか。
こういう日がくることを想定して、絵本を何冊か買っておいたのを思い出す。
「大河。絵本でも読む?」
絵本が置いてあるサイドチェストを指差す。
大河は顔を上げ、そちらに目を向ける。
逡巡しているらしい息子のことを見ていると、やがて頷いた。
「分かった」と返事をし、早速取ろうと半身を起こそうとしたが、大河が一向に離れることはなかった。
「⋯⋯大河。少しの間離れてもらってもいいかな。身体が起こせないんだけど⋯⋯」
そう言ってみても、離れる様子がなかった。
「⋯⋯えと、絵本を読みたいんだよね?」
うん、と頷く。
「その絵本を取りたくて、けど大河がそうしていると身体を起こすことができないから、少しの間だけでもいいから、離れて欲しいんだけど⋯⋯」
大河が姫宮のことをじっと見てくる。
離れたくないから、この状態で取ってきて欲しいという目なのだろうか。
それは難しい話だ。しかし、大河は自分の意見をなんでも押し通そうとする。だから、姫宮がなんとかして取るしかない。
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