14.
どうやって取ろうかと考えていた時、大河が何かしていることに気づき、そちらに意識を向ける。
大河が小さな手を目一杯伸ばしているところだった。
「どうしたの、大河」
訊ねると、人差し指を突き出し、変わらず限界まで伸ばしていた。
なんだろうと思いつつ、その指先を辿ると、絵本があった。
「もしかして、大河が取ってくれるの?」
すると大河は、うんっと大きく頷いた。
自分がその状態でいたいから、自分で取る、ということなのか。
半ばも合っているかどうか分からない息子の考えていることに、けれども自分で取りたいならばとしっかりと抱きしめて、ゆっくりと起き上がった。
「読みたい本を選んで」
サイドチェスト側に身体を傾けて大河が取りやすいようにしてあげると、大河は一番上にあった絵本を手に取った。
それは、『ラプンツェル』だった。
深い森の中に囲まれた、出入口のない高い塔に暮らすラプンツェルが、大泥棒フリンとの出会いがきっかけで初めて外の世界を旅立ち、自身の生い立ちを解き明かす冒険譚というもの。
買ってきてくれた安野が、週末の夜頃にテレビでやっていたらしく、そのこともあって、本屋に立ち寄った際、つい買ってきたと言っていた。
前よりも寝れるようになり、とはいっても深く寝れているわけではなく、夜遅くまで起きていられない姫宮は、テレビでやっていることもそもそもその物語を知らなかったのもあって、先に読んだが、勇ましく、たくましいと思った。
若さを保ちたいという自分勝手な願いを叶えようとする魔女によって、『魔法の髪』を持つ、外の世界を知らずに過ごすことを強いられるものの、ラプンツェルは悲観することなく、唯一外が見れる窓から思い馳せていたり、持ち前の好奇心と芯の強さが、外に踏み入れてからより発揮し、単なるお姫様とは違うカッコいいと思わず惚れ惚れさせられた。
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