生まれた国や育った境遇、そこで生まれた価値観の違いも越えて。

読後に清々しい気持ちになれる、素晴らしい作品です。

 この作品はジャンルをSFと設定されていますが、舞台を仮想の場所に置き換えてあるだけで現代ドラマでもあるし恋愛ドラマでもある、そう思って読んでいただいた方が良いのかなと思います。

 海の国境線沿いにある離島の灯台でたった一人、灯台守として暮らす主人公。そこに、仮想敵国から流れ着いてきた一人の女性。連絡船が来るまで保護する事となった期間の間に二人は様々な対話によってお互いの価値観をぶつけあい、理解しあっていく。その先にどうなるかは読んでみてのお楽しみです。

 印象的だったのは作品の中に二人が共通して愛読していた一冊の本が登場する事。人は誰しも生まれた場所も育つ境遇も、その中で生まれる価値観や考え方も当然違う人間に成っていくわけですが、そういうものを越えて考え方や物の見え方というか「同じ心の形」を持った人と巡り会える事がある。そういう事が起こり得る事を信じさせてくれる描写でとても良いなと個人的に思いました。

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