第23話 寂しい時には泣きましょう

おばあちゃんの話に皆んなは釘付けだった。早く続きを知りたい。

「おばあちゃんの実家からキャラメルやらビスケットが届いたのね。村ではそんな物は売って無かったし、食べる人もいなかったの。だからね、家族には秘密にしてサヨコさんと食べようと持って行ったのよ。サヨコさんの紅茶に合うと思ったのね。」


おばあちゃんはサヨコさんのところへ行って、いつものようにあずまやでお喋りしながらキャラメルやビスケットを食べたの。おばあちゃん、今日こそはサヨコさんの秘密を聞きたいと決心してた。

「サヨコさん、聞いてもいい?」

「何かしら?ケイコちゃん。」

「不思議に思うのね。サヨコさんはどう見ても裕福な家のお嬢さんにしか見えないの。なのに、どうしてここに住んでいるの?」

サヨコさんは困った様子で考え込んでいたけど、おばあちゃんの目をしっかり見つめて話し出した。

「隠しておくのは疲れちゃった、、。だから、ケイコちゃんには話しておきます。

私はらい病なの、、。知ってるかな。」

「ええ。知ってると言うか、名前だけね、、。」

「この病気はね、罹っても薬では治らない。手や足の感覚がなくなったり、変形したりするのね。皮膚が引き攣れて顔が変わってしまったり、、、。

女学校の時だったの。体に赤い斑点が出てきたのね。初めは気にもしてなかったの。それを母が見つけて懇意にしてる先生のところでこっそり診察してもらったの。らい病だって言われたわ。恐ろしかった、、。

父はこんな事が世間に知られてしまったら、兄や妹の人生まで終わってしまうと言った。そして、ここに家を建て、地下室が私の部屋になったの。」

おばあちゃんはびっくりした。らい病の話は聞いたことはあった。ただ恐ろしい病で罹った者は何処かの小島の施設で一生を暮らすと言うものだった。

おばあちゃんは、サヨコさんに駆け寄って抱きしめたんだ。

「その当時、私も家族と離れて友達もいない所へ来てたからね、サヨコさんの寂しさがわかったのよ。」

おばあちゃんの行動にサヨコさんはびっくりしたんだって。

病気がわかってからは、あれほど仲の良い家族さえ手さえ差し出してくれなかったから。ふたりは抱き合ってわんわん泣いたんだって。

「散々泣いたらね、スッキリしてね。サヨコさんが地下室に案内してくれたのよ。

素敵な部屋だったわ。蓮は花の蝋燭立て、凝った木彫りのベット、立派な机と椅子。

本棚には「少女の友」がズラリと並んでいたの。桐の箪笥には見事な着物が入っていたの。それからは地下室で一緒に過ごしたわ。楽しかった、、。

だけどね、その後、おじいちゃんのおばあちゃんが脳溢血で倒れてね。私がお世話係になっちゃったの。サヨコさんに会いたいと思ってもお世話は一日中だったから、、。」

「え?おばあちゃん、サヨコさんとそれでさよならだったの?」私は聞いた。

「おじいちゃんのおばあちゃんが結局は亡くなったのね。半年くらい寝込んでいたけれど。私はお葬式とかが終わって、すぐにサヨコさんの家を訪ねたの。

そこには、もう、誰もいなかった。地下室にね、風呂敷包みと手紙が置いてあったわ。それが、これよ。」おばあちゃんは風呂敷包みをちゃぶ台の上に置いた。

風呂敷の中には小さなスケッチブックにサヨコさんが、毎日あった何でもないような事を絵にしていた。その日見た花、ご飯のお菜、おばあちゃんと話した話とか

最後のページに、

「ケイコちゃん、ありがとう。いつか、また会える日を楽しみにして私はここを卒業します。」そう書いてあった。

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