第22話 おばあちゃんの話はおにぎり食べながら聞く

日曜日に皆んなでおばあちゃんちに集まった。おばあちゃんはいつものように

人数分のチキンラーメンと生卵とおにぎりを用意して待っててくれた。

「まずはお昼にしましょうね。あらーっ、こちらがゲロリンさんなのね。

いつも孫やクニちゃんがお世話になっています。」

「あ、あ、いや、あのあちきこそお世話になってますでありんすーっ。」ゲロリンはすぐに顔が赤くなる。

丼にチキンラーメンを入れて真ん中に生卵をおくと、ちんちこちんのお湯を注ぐ、蓋をする。ぷーんとラーメンのいい匂いだ。

「おばあちゃん、おにぎりの中にきゃらぶき入れてくれた?」クニ姉ちゃんはきゃらぶきが好きなんだ。

「入ってるよ、、。ただ、どれかは秘密だからね。ふふ。」

「クニさん、きゃらぶきがお好きなんでありんすか?あちきも好きです。」

ちっ、ゲロリン鼻の下伸びてるよ。

おにぎりを皆んなひとつ選んで、パクリ。

「やったーー!きゃらぶきだわ。私さご飯の先っちょからきゃらぶきが出てたの見つけたんだ。ラッキーー!」

「ありぁりぁーっ。あちきもでありんすよ。ラッキーーーでありんすなぁ。」

なっななーんだってぇ、クニ姉ちゃんとゲロリンが見つめあって笑ってるうぅ。

「俺、梅干しだった、、。タラコが良かったなぁ。」

「私はと、昆布かぁ。おかかが良かったなぁ。」

「僕はタラコ。んまいーー!」

おばあちゃんはロクのためにもご飯に昨日の残り物をあげながら笑っていた。

チキンラーメンも半熟卵で美味しい。

おばあちゃんは、そんな皆んなを見ながら、ゆっくりと話始めた。


「あの家にはね、サヨコさんと言う女性が住んでらしたの。」おばあちゃんが話だすと、シーンとなった。

「私は、お見合いでおじいちゃんと結婚したのね。昔はここは本当になーんにもなかったの。畑ばかりでね。おじいちゃんのお母さん、お父さん、おばあちゃん、おじいちゃん達との暮らしは窮屈だったわ。私のお父さんは県庁の役人をしていたからね、街中で暮らしてたの。だからだと思うんだけど、服装から髪型、話す事やらが村の人達の好奇な目に晒されてね。ある事ない事を噂されて、それをおじいちゃんの家族に叱られてね。だんだんと元気を無くして行ったの。

家事も任せてもらえなかったかな。私、器用じゃ無かったからね。それで、お風呂やかまどの薪を拾ってくるのが私の仕事になったの。

それは、嬉しかったのよ。村外れに行くとね、誰にも会わなくていいから。

そんなある日、あの雑木林に辿り着いたの。雑木林は急に開けて、そこには庭と家があった。縁側には女の人が座っていたの。透き通るような白い肌と黒い長い髪。

まるで日本人形みたいだった。」おばあちゃんは、思い出に浸るように空を見上げてた。


おばあちゃんの話の内容はこんなだったんだ。

サヨコさんはおばあちゃんに気がついたんだ。その驚きようは離れていてもわかったんだって。おばあちゃんは怪しい者ではありませんと言ったんだけど、サヨコさんは「私のそばに来ないで!」って強い口調で言ったらしい。おばあちゃんは、変な人だと思われたと落ち込んでたんだって。

そしたら、サヨコさんが「貴方は、この村の人?」って聞いてきたんだって。

おばあちゃんは、お嫁に来たばかりでこの村に慣れてない事を話した。

そしたら、サヨコさんが、「そう、都会からこの村に来たのでは慣れない事がおおいでしょうね。」と答えてくれた。

そこから、少しずつ話をしていたら二人は同じ20歳だとわかった。

おばあちゃんは友達が欲しいって思ってたから、サヨコさんに頼んだそう。

サヨコさんはしばらく考え込んでいたけど、友達になってくれる約束をしてくれた。ただし、サヨコさんには近寄らないを守るのが条件だった。

それからは、薪を拾いに行くと行ってはサヨコさんの所へ出掛けた。サヨコさんはおじいちゃんとおばあちゃんと暮らしているやうだった。縁側に座っていない時には、庭から声を掛けるとおばあちゃんが出てきて、サヨコさんを呼んでくれた。

サヨコさんが「ばあや、じいや」と呼んでいるのを聞いて使用人なんだとわかった。サヨコさんの様子をよくよく見れたら、総絞りの着物に鼈甲やメノウの帯締めなどを付けているからとても裕福な人のだとおもったそう。これほどの裕福な人が何故にこんな人里離れた隠れ家のような家に住んでいるのだろうと不思議でたまらなかったんだって。

いつものようにサヨコさんを訪ねてると、庭の隅にあずまやがふたつ作られていたそう。ひとつはおばあちゃん用、ひとつはサヨコさん用。

おばあちゃんはやっと信用してもらえたようで嬉しかったけど、本当はひとつのあずまやでいいのにって。そこで、今のファションはモガなのよとか雑誌を見せたり紅茶なんかを飲んだりしてた。おばあちゃんは嫁いでから紅茶なんて飲んで無かったから美味しくて夢心地。

仲良くなればなるほど、サヨコさんがどうして、こんな生活をしてるのかを知りたくてたまらなくなったおばあちゃんだったの。

そして、ついにサヨコさんの核心に迫った。






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