第15話 ゲロリンの恋

「あのさ、ゲロリンがさ。最近、どーもおかしいらしいぞ?」

「おかしいのはイッチでしょ!」

「商店街の噂だよう。土曜日以外でさ、商店街に来るんだってさ。」

「商店街にかい?何をしに行ってるだろう?」オサムちゃんも気になる様子。


「喫茶店があるだろ?マスターんち。あそこでコーヒーとホットケーキを食べてるらしいぞ。」

「それの何かおかしいのよ。甘いものが好きなんでしょ。あ、今度連れてってもらおうよ。マスターんちのホットケーキふわふわで美味しいもんね。」

「それがさ、母ちゃんが言うには、クニ姉ちゃん目当てらしいぞ。」

イッチの言うクニ姉ちゃんってのは、喫茶店「ベル」の一人娘さんなのよね。

私達の学校の卒業生でお転婆で有名な女の子だった。イッチや私達の事も妹や弟みたいに可愛がってくれてる。

特別に美人じゃないけど、長い髪をポニーテールにしてて、お店をチャキチャキと手伝ってる。商店街のあちこちに出前もしてるんだ。愛想がいいから商店街の人気者だ。その姉ちゃんにゲロリンが?無理矢理。

「そっか、ゲロリンも人間に恋をしたんだね。いい事だよ。」

「オサムちゃん、姉ちゃんはイケメン好きなのよ!フォーリーブスが好きなんだもん。ロックなんか知らないと思うよ。」私は言い返した。

「んでも、ひとを好きになるのは勝手だぞ!ゲロリンは優しいぞ!」

「まあまあ、本当に噂通りかはわからないだろ?ここはゲロリンに聞いてみないとね。」

ゲロリンめーー!姉御に近寄るなんて畏れ多いつうの!私はプンスカのプー!だった。

ゲロリンの家に集まった。

「お帰りなさいでありんすねぇ。学校お疲れ様でございます。」早速、ロクはゲロリンの背中に張り付いてる。余程、ゲロリンが好きらしい。

「あのね、今日はゲロリンに聞きたいことがあるのよ。これは取り調べなんだか、ね。ゲロってもらつわよー。」私はテレビの刑事みたいな言ってやった。

「なぁーんでありんすか?」

「あのね、ゲロリン、最近商店街に良く通っているんだって?」

「オサムさん、どどうして、それを!」ゲロリンはあたふたしてる。怪しい。

「俺が母ちゃんから聞いたぞ。ゲロリン、マスターんちのクニ姉ちゃん目当てだって。本当なのか?」

「あぎゃーっ!なっ何故にそれを知ってるでありんすか?」ゲロリンはすぐゲロった。

「えーっ。本当に姉ちゃんのとこが好きなの?姉ちゃんはフォーリーブスの江木俊夫がタイプなんだよ。今のゲロリンじゃあねぇーー。」

「クニさんは江木俊夫のファンなんでありんすか?」

「そうよ。だから、ゲロリンは完全にアウトね。」私は意地悪く言ってやった。

ゲロリンはがーんって感じで落ち込んでる。

「やめろよー、アキ。意地悪だぞ。ゲロリン、気にすんな。」

「そうだよ。クニ姉ちゃんが江木俊夫のファンなら、えゲロリンをそれに似せたらいいだけだよね。」オサムちゃんが変な事を言い出した。どう見ても無理じゃん。

逆立ちしたって違うじゃんか。

オサムちゃん、出来ないこともあるんだってぇー!ねぇ、ラドンーー!





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