第9話 なんでこんな時に便所なんだってば
土曜日の半ドンの日がやってきた。決戦の土曜日だ。
おばあちゃんにはお弁当をお願いしといた。早く行かなきゃなんないもんね。
おにぎりと水筒にお茶を用意してくれた。おにぎりの具なんだろ?楽しみだなぁ。
おばあちゃんが刺繍して作ってくれた手提げに、お弁当と武器も入れた。
私達は目をキラキラさせて小走りにゲロリン基地に向かった。
「あなたーをまつのーぉ、テニスこーーと。ごたちのなかのこるぅー。」イッチは天地真理ちゃんの歌を突然歌い出した。怖がってる時って絶対真理ちゃんだからわかりやすいなぁ。
ゲロリン基地についた。
「あ、ゲロリンがもう出掛けるぞ!」イッチが小声で叫ぶ。
「何よー、おにぎり食べる暇なんじゃ無い。あーお腹すいてるのに。」私はまだ暖かいおにぎりが食べたかったからゲロリンのたーけーと思った。
「おにぎりは後にしよう。とにかく、絶好のチャンスなんだから。」オサムちゃんが言うなら仕方ない、、、。
ゲロリンはスキップしながら出掛けていった。手にはお母さん達が買い物の時に持ってく買い物かごをぶら下げてる。どこで買ったんだろ?商店街の金物屋さんだわ。だけど、ピンク色に赤色のシマシマって?変なの。
「さぁ、行こう!」オサムちゃんの声ではっとした。そうよ、ぼけっとしてちゃダメ。しっかりしろ!アキ。
誰もいないゲロリンの庭に立ってみると空が大きく見渡せた。庭の端っこには物干し台もある。宇宙人も洗濯するのかなぁ。
開けっ放しの家に恐る恐る上がる。靴は持って行かなきゃ。ロクは縁側の下に隠れてる
そこはペルシャ絨毯が敷き詰められていて、大きなソファーとテーブル。
ブラウン管のテレビ、黒電話、ステレオまであった。
「ねぇ、すごいわよねぇ。オサムちゃんちの応接間みたいじゃない?」
「うん、確かに。でもさ、ある意味普通だね。」オサムちゃんは少しがっかりしてるみたいだった。
「イッチ?オサムちゃん!イッチがいないよ!」
「えっ!いないって?罠でも仕掛けてあっんじゃないか?」
わたしとオサムちゃんはその部屋から出て、玄関や廊下を探した。こんなところに階段があるって見てたら。
「おーい。アキ、オサムちゃーん。俺はここだよ。」イッチの声がする。
その声を頼りにたどり着いたのは、木のドアの前、、。
「ねぇ、オサムちゃん、ここってさ、たぶん、、。」
「アキ、オサムちゃん、ごめんよ。お腹がいたくなっちゃったんだよぅ。今、うんちしてるから待ってておくれよぅ。」
はぁーーつ、こんな時にうんこってさ。イッチのばかーーーっ!
「ワン!ワン!」
「イッチ、オサムちゃん、ロクが鳴いてるよ。ゲロリンが帰ってきたんだ。
どうしよう?」
「イッチ、早く便所から出ろよ。何処かに隠れなきゃ。」
イッチは焦って出てきた。どこに隠れるの。もう、そこまでゲロリンは来てる。
「2階だ!とにかく2階に行こう!」オサムちゃんに言われて、イッチも私も急いで2階へ上がって行った。
2階には二つの部屋があった。ひとつはベットが置いてあったからゲロリンの寝床なんだろう。
もうひとつの部屋は勉強机とギターが何本かあった。押入れを見つけたからイッチとオサムちゃんはそこに入った。2人でぎゅうぎゅう。私は、洋服箪笥の中に隠れることにした。洋服箪笥はあんまり服が掛かって無かったから、それって入り込んだ。
入り込んでから、何かおかしな物が体に当たるのを感じたのよ。なんだろ?
じーっと暗い中、目を凝らして見たら、ダッコちゃんみたいなビニールの人形だった。ダッコちゃんよりずっと大きいし、なんか女の人みたいだった。
「何?これ?お化け屋敷のお化けーー!」と叫びそうになるのを両手で口を押さえて必死に我慢した。
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