春の匂い
眠るねこ
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買い物から帰って玄関の扉を開けると、そこにお迎えの姿は無かった。
日が沈むには早く、まだ眠っている時間帯だった。
「ただいま」
代わりに声をかけたのは、先月に行きつけのスーパーで出会った室内履きだ。手触りが、うちの子みたいだったので連れて帰ってきた。ベージュとブラウンの色違いに肉球柄が施されているそれらは、いつの間にか我が家の玄関に馴染んでいた。
着替えを済ませてから、買ってきた食材に手を付けた。冷蔵庫の空いている場所に入れ終えると、そのまま寝室に向かった。布団には、こんもりとした小山が出来ていた。
そっとめくって中を覗く。そこには寄り添って眠る二匹の姿があった。起こさないように撫でながら、小さなお腹に顔を埋める。ゆっくり呼吸をすると、柔らかな春の匂いがするのだった。
日々のこと 水中チサ @c_37soko
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