第14話 崩れゆく日常

優子の体は日に日に重くなっていった。食事を取る気力もなく、冷蔵庫の中身が空っぽになってからどれくらい経ったのかも覚えていない。

ただ、胸の奥にある得体の知れない重圧感だけが増していた。


あの夜以来、モモの幻影は何度も現れては消えた。

リビング、廊下、キッチン、どこを見てもモモの姿がちらつくが、手を伸ばしても触れることはできない。

それでも、その一瞬の幻影だけが、優子の心を揺さぶり続ける。


ある朝、優子はふと目を覚ました。

窓から差し込む薄い光が、部屋の空気をかすかに温めていたが、その光景すら遠い世界のもののように感じた。


「起きなきゃ……」

そう思って体を動かそうとしたが、腕が鉛のように重い。

まるで、全身が自分の意志に反抗しているようだった。


ふと視線を横に向けると、そこにモモがいた。

「モモ……?」

優子の声はかすれ、掠れるような囁き声にしかならなかった。


モモはじっと彼女を見つめていたが、いつもと違う。

その瞳には何か言葉にできない、不安を掻き立てるようなものが宿っていた。


「ねえ……助けて……」

優子は震える声でそう呟いたが、モモは何も応えず、静かに消えた。


その瞬間、全身が激しい倦怠感に襲われ、優子はベッドの上で一気に倒れ込んだ。

床に倒れ込んだまま、視界が揺れ、意識が遠のいていく。

薄れていく意識の中で、またあの声が響く。


「ほら、あなたには何もできない。」


それを最後に、優子の体は完全に動かなくなり、静寂だけが部屋を包み込んだ。

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