17. お疲れ様ヴェルトライゼンデ:ドリームジャーニーの血統をつなぐ希望の星

 2025年1月19日に開催された日経新春杯(G2)に出走後、今年2月に屈腱炎を再発し、引退が決まったヴェルトライゼンデ(父ドーリームジャーニー、母マンデラ、母父アカテナンゴ)。


 数少ないドリームジャーニー産駒の活躍牡馬として、大きな期待を背負って8歳まで現役で頑張った父親譲りの容姿も雄々しい黒鹿毛です。

 長い現役生活の中、数々の怪我にも泣かされてきましたが、通算16戦4勝、獲得賞金額のべ3億7000万円は立派の一言です。


 G1こそ未勝利ですが、コントレイルやサリオスの2着(二頭とも現在、社台SSさんで種牡馬入りしています)、ダービー戦では3着の善戦を見せた実力馬であることに異論はありません。

(ただ、同期・同時代に無敗三冠馬とか、どえらいのが居たが故の巡り合わせの悪さは否めません……)


 怪我の再発という無念の引退とはなりましたが、一度は乗馬に転向が決まっていたにもかかわらず、急遽サラブレッドオークションに出品されることになり、かなり異例の事態に界隈がざわついたのが先週の話です。


 そして、2月13日のオークションも筒がなく終わり、オークションサイトの結果を覗きに行ったのですが、最終的に210件の入札があって760万円(税込836万円)で無事に落札されていました。


 募集要項に目を通したところ、大方の予想どおり種牡馬への道を模索することが前提の出品だったことが判明し、ドリームジャーニー産駒の血統がつながる望みができました!


 父ドリームジャーニーといえば、2歳時からG1を制し、古馬になってからも活躍したグランプリホース(しかもJRA史上最軽量G1牡馬の記録も保持)であり、晩成型といわれた祖父ステイゴールドの種牡馬価値を(早熟馬も出せると証明したことで)一気に引き上げた偉大なお兄ちゃんです。


 ドリジャ兄貴の大活躍があったからこそ、「もっかいステゴ付けてみようか」で爆誕したのが、全弟(同父母の弟)オルフェーヴル。

 言わずと知れた、JRA史上7頭目のクラシック三冠馬の称号を得た金色の暴君です。


 母マンデラも海外重賞で好成績を修めているドイツ生産馬であり、ヴェルト以外の活躍馬として、G1馬ワールドプレミアやワールドエース(両馬とも父ディープインパクト)を排出している名牝です。


 余談ですが、ワールドプレミアといえば、菊花賞馬として挑んだ2021年の天皇賞春では、ディープボンド悲願のG1を阻んだ(号泣)最終直線の脅威の伸びと粘りが印象的ですし、ワールドエースの印象的なレースといえば、2012年の皐月賞(G1)でしょう。

 ゴールドシップが「ゴルシワープ」で有名な、荒れ馬場の最内に重戦車みたいな走力で突っ込んで1位をもぎ取った、あのレースで、膨らんだ大外からとんでもない末脚でぶっ飛んできて、他馬をまとめて撫で斬り2着を掻っ攫って行ったのが、ワールドエースです。

 つくづく、とんでもないレースでした。


 父方も母方も豪脚揃いの猛者という頼もしい血統。

 そして何より、希少なドリームジャーニー産駒の後継種牡馬としての夢と期待を背負っているヴェルトライゼンデ。

 落札者様の個人情報は、オークションサイトでは伏せられていますが、どうやら競走馬としてのヴェルトの命名に関わった出資者の方らしいという話があるので、思い入れの強さを感じて胸熱です。


 祖父ステイゴールドが、国産馬として初の海外G1を制した香港ヴァーズ出走時の漢字名が「黄金旅程」なんですが、そこからドリームジャーニー(夢の旅路)、そして、その子にヴェルトライゼンデ(世界旅行者)と名付けるセンスの塊ですよ。カッコ良すぎますね。


 そんな命名者のお一方ですから(ヴェルトは元々、一口90万合計3600万という共同出資馬なので)、産駒の血を残すことにも真剣だということは間違いないでしょう。

 落札者様、おめでとうございます&種牡馬としてのヴェルトライゼンデの活躍を心よりお祈り申し上げます。

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