第9話 帝国保安官は正義の味方?
煙草の煙の中、一仕事終えた執行官と黒シャツ姿の髪の長い男は椅子にもたれて待っていた。急いで準備して体裁を整えた様子だった。
「どちらが帝国保安官?」
「俺だ」黒シャツが答えた。「賞金稼ぎは葬儀社を訪れる。保安官と話したが、怪しいことはあるが証拠はないそうだ」
保安官もグルだと言いかけたが、誰が敵かわからないので控えておいた。
「証拠がないなら現行犯で逮捕だ」
「頭のネジが落ちてるわよ」
「よく言われる。だが俺の頭の中で転がってるのは薬莢だ。六人集めた」
サスペンダーをした少年が飛び込んできて、黒シャツの耳に何やら告げた。
「三人になった。これまで五回中二回はうまくできたんだがな」
「わたしはやめておくわ」
「ここまで聞いておいて返すわけにはいかんな。バイス、捕まえろ」
少年は銃を構えた。
「当たるの?」
「当たらんだろうな」黒シャツは椅子から立ち上がると「帝国保安官のヨセフだ。何とかデズ一族を削ろうとしてるんだがな」
初老の執行官は無関係で早く街から出ていきたいと懇願した。ヨセフは罪もない人を吊るしておいて逃げようと言うのかと片眉を上げた。
「私は書類に従うだけだ」
「世知辛いな」
「わたしはあんたには乗らない。好きにさせてもらうわ」
ロペはベストのポケットから出した保安官の指名手配書を見せた。
「ほお」ヨセフはニヤついた。「見せてやる。執行官殿。ここの保安官はクズだ。誰が推薦した。調べろ」
分厚い書類の束から一枚を取り出してヨセフに渡し、彼はロペに見せてきた。バイスという少年が覗き込んで任命権者はデズだと呟いた。
「読めるの?」
「珍しいだろう。これでも読み書きできるんだよ。信頼できる筋からの紹介だからな。保安官見習いだ」
「執行官、逮捕状を出せ」
「私に権限はない。出せるのは裁判所への逮捕状の請求くらいだ。それに殺される」
「俺が守ってやる」
執行官は震えながらも裁判所への逮捕状請求を書いた。ヨセフはバイスに渡した。
「俺の馬を使えば一日で行ける」
バイスは裏口から飛び出すと、外で馬のいななきが聞こえて、すぐに馬の足音が遠ざかった。
「今日か明日には逮捕状が出る」
「待ってくれるの?」とロペ。
「一日や二日くらい葬儀屋に握らせれば何とかなるだろうよ」
「なら逮捕状なくてもいいんじゃない」
「俺は帝国保安官なんだぜ」
「あ、そう」
やっぱりネジが落ちてる。
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