第8話 葬儀屋は情報通
保安官が去った後、ロペはベストの内ポケットから書類を出して広げた。帝国巡回裁判官ハルビス・カイ首席判事発行。限定保安官としてフェアリ・ロペの名前が記されていた。 犯人逮捕の場合、公務執行が認められ、かつ執行妨害する者は排除していいという書類である。
「やるのかい?保安官をやればあんたは街から出ていけなくなる。襲われたら別だろうが」
老人は拳銃をかざした。
「メンテナンスするかい。いい銃だ。出世払いにしとくよ。夕暮れに来な」
ロペは頼むと、老人の店を後にした。
あらためて軒下の看板に銃砲店と記されているのを知った。
死刑台が片づけられた広場をうろつくように歩いていて、おびただしい血が地面に染み込んでいた。花嫁衣装の死体と絞首刑の死体が積み重ねられて葬儀屋が来た。
「葬儀代は誰が払うの?」
「よそもんには関係ないさ。あんたが払ってくれるんなら話すがね」
ポケットから一シルベル銀貨を黒ハットの痩せた中年に弾いた。
「棺代の足しにはなる?」
「どうも。粋狂だ」
うやうやしくハットを脱いで頭を下げた。
「こうして出くわしたのも縁のうちね」
「どれが悪いと思うよ。倅と女と男」
「みんなまともじゃないわ」
「そういうことだ。気にするこたねえ」
「刺された倅とやらはバカなの?惚れた男の死体の前で結婚式なんて」
「まともじゃない。デズ一族にまともな奴はいない。まだ姉さんは運に恵まれてる。まともな奴が来ている。すぐにまともじゃなくなるんだろうがね。北にバラスという宿がある。デズを殺したいらしい。ちょうど帝国保安官様が来てる。死体が増えれば稼げる」
眩しそうに空を見た。
死体は荷車に乗せられた。ゴザをかぶせられ、ハットを丁寧にかぶった男は去るとき片頬に笑みを浮かべていた。度胸はあるのかと挑発されている気持ちになった。
ロペは宿を訪ねてみることにした。自分が泊まっているのはバスタブ付で安宿ではないが、バラスはもっと洒落ていて、フロントの女も小綺麗にしていた。戦争が起きてから働く女が増えてきた。ただお互いに仲間意識などはない。特に旅をしているロペなどは蔑まれていた。どこも定住者は強いと思っている節がある。できるなら定住したいもんだ。帝国保安官に会いたいと話すと、理由を尋ねられた。葬儀社から来たと伝えたところ哀れみの表情で見られた。
「裏へ」
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