第7話 花嫁は誰に嫁ぐの?
「デブが花嫁を撃った。ナイフで花嫁が刺したのかな」
パンをくわえたまま、ロペは花嫁と花婿とところへ駆け寄ると、血と泥に塗れた花嫁は絞首台から降ろされた男へと手を伸ばしていた。腹を刺されたデブデズはロペを押し退けて、花嫁の体に銃弾を浴びせた。ロペは取り巻きがデブデズを制する間に店へと戻った。
「愛のために死んだわ」
「よく抜かなかったな」
「お金にならないわ。この街にガンスミスいるかしら。ちょっと見てもらいたくてね」
「ここにいる」
老人は玄関のところで牢屋のような太い鎧格子のドアを閉めた。
「見せてみな」
ロペは弾を抜いて渡すと、老人はコテのような指で撃鉄に触れたところで動きを止めた。
「天使の銃だな」
「イミテーションよ」
「どうかな。わしは帝都の工房で修行してきた。とある魔法使いが組んだものを持ち込んできてな。どうしても撃鉄に問題が生じる」
「魔法使いと話したことは?」
「むろんある。こいつは一点もんだ。あのときの銃だ。加工はわしが監修した。だが撃鉄だけはどうもならんだな」
「治らないの?」
「治らんが部品がいる」
老人は手提げ金庫を持ってきて、油紙で包んだ部品が丁寧に納められていた。
「使ってどれくらいになる」
「十年弱くらいかな。原因はわかる?」
「安い弾を使うからだ。軍に供給する品にも同じことが言えるが、あれは使い捨てだ」
「繊細なものはわたしには合わないわね」
老人はルーペで覗いた。撃鉄の材料が薬莢に詰めた魔法のエネルギーに負けてくる。特に一級品の弾丸を使うと、威力も精度が増すが負担が増えてくるらしい。
「そこに安物を使うと垢が溜まるだろうとは話していた。改良するまでメンテナンスしながら使うしかないな」
「預けないといけない?」
「ここに部品はあるんだ。退職するときパクってきた。一ゴルベルはもらいたいね」
「保安官でも殺すかな」
扉を叩くので、ロペが見ると保安官が立っていた。老人は何もなかったかのようにロペの銃を下に隠してから鎧戸を開けた。
「ここに女がいるはずだ。あ、おまえだ」警棒を向けた。「ガリア様が刺されたのは見たか。肥えた男だ」
ロペは頷いた。
「正当防衛だな。証言できるか」
「女が刺した。窓から見えた」
「記録しろ」手下に命じた。「これで済んだ。銃を持ってるのか。見せろ」
老人は銃を見せた。
「ポンコツだな」
「もう鎧戸を開けてもいいのか」
「治安は守られた」
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