第4話揉め事

「ちょっと待ってて。」

切開は知り合いの元テキ屋系ヤクザの田中に連絡した。

彼は、ヤクザをやめようと組長に申し出たが、脅されて辞めさせてもらえなかった。

それを両親が、警察と協力して組の脱退届を提出して、今、田中はお好み焼き屋をしていた。

田中は切開の両親に感謝し、今回の引っ越しの手伝いにも来てくれて、今回、縁日の道具や材料の手配も手伝ってくれていた。


「やめてください。物を壊さないでください。」

「いいだろ。俺達の勝手だろ。やめさせたければ、かかってこいよ。」

不良達はやりたい放題。

クラスメイトはオロオロするだけで成すすべがない。


そこに田中が現れた。

「おい、にいちゃん。かかってこいって言ってたな。面白い。俺とやろうぜ。」

数年前まで本職のヤクザだった田中の迫力に不良達は逃げ出した。


田中も切開に迷惑がかかるのを心配して、声もかけずに教室から出ようとした。

クラスメイトは何が何やら解らず混乱している。

「田中さん、ありがとう。待って、皆に紹介したいの。皆、この人は、教室で不良が暴れていて困っているって、私が頼んだから助けに来てくれたの。」

「お嬢さん。俺はお嬢さんのご両親に弁護してもらってヤクザを辞められたんです。だから、こんな事、朝飯前ですよ。」


「ありがとうございました。」

正木さんが真っ先に田中にお礼を言った。

「ありがとう。」

「助かりました。」

クラスメイトが口々にお礼を言った。


「いや、お礼なんか言われるほどじゃ…。駅前でお好み焼き屋やってるんで今度食べに来て下さい。サービスしますよ。」

田中は照れながら帰っていった。


「切開さんの両親って、弁護士なんだ。凄いね。」

「凄くないよ、両親が二人でやってる小さな弁護士事務所だから、大したことないんだ。」


「元ヤクザの人って怖くないの?。」

「田中さんは今回の引っ越しの手伝いもしてくれたし、とっても親切で優しい人なの。」


「俺、駅前のお好み焼き屋に入った事ある。安くて美味かったし、普通の店だった。」

「じゃあ、こんど打ち上げに皆で行ってみましょう。」

「その前に、片付けて、営業再開しましょう。」

正木の号令で片付けをして、廊下に出て呼び込みをした。


「切開さん、見直したよ。」

山城が声をかけてきた。

「なにを?。」


「切開さんって、計算してる感じだったから、元ヤクザと自分が知り合いなんて、イメージダウンの可能性がある事なんか隠すと思ってた。」

「山城くんて、よく見てるのね。確かに私、計算してるけど、親切にわざわざ助けに来てくれた人を避けるなんて出来ないわ。」

山城はニコッと笑って切開の頭を撫でた。


切開は顔を真っ赤にして逃げ出した。

ーダメダメ。私は萩原くんの彼女になったんだから、浮気なんかしないのよ。ー


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