第5話修学旅行
「では、修学旅行の班を作ってください。」
ー高校生活メインイベントの修学旅行。想い出づくりしなくっちゃ。ー
もちろん切開は萩原と一緒の班になる気満々だが、問題は他のメンバーをどうするか。
まず女子は正木は外せない、彼女と仲が大河原を誘おう。
さて、男子はどうしよう。
このクラスでは山城、斉藤、萩原、石井がモテ男なので、萩原を班にいれたら、モテ男達は入れられない。
ー女子の嫉妬には気をつけないと。ー
萩原と仲のいいのは、喜久井と稲盛と石井。
石井を外して萩原、喜久井、稲盛、切開、正木、大河原でいこう。
切開の思惑通りで班のメンバーがきまり、班で見学する場所も決まった。
銀閣寺から哲学の道を通り永観寺と南禅寺へ。
なかなかロマンチックなコース。
きっと萩原くんとの仲も一段上がるはず。
修学旅行当日、
「良いわね。銀閣寺の雰囲気。」
「写真を撮りましょう。」
「じゃ、撮るよ~。」
「見せて、見せて。」
「少し急ごう。時間内に全部観れなくなる。」
ー和気あいあい、いいメンバーを選んだわ。ー
哲学の道では萩原と並んで歩いて、ツーショットも沢山撮れた。
ー帰ったら、即、アルバム作ろう。ー
予定のスケジュールは全て完了。
後はホテルに戻るだけ。
一台の軽自動車が私達の目の前で止まった。
ー道でも聞きたいのかな?。ー
ところが、軽自動車から出てきたのはチャラそうな若い男性三人組。
「ねえ、彼女。送ってあげるよ。」
三人の男達は切開をナンパしはじめた。
「今、修学旅行中でホテルに戻るところですから、失礼します。」
切開は毅然として、断った。
ー男子達に迷惑かけられないもの。ー
「何だよ。送ってやるって言ってるだろ。」
一人の男が切開の腕をつかみ、軽自動車に無理やり乗せようとした。
切開を助けようと、萩原が構えているのが見えた。
ーダメ。男子が出たらケンカになっちゃう。ー
切開はその男の力を利用し、自分の腕を掴んだ手を振りほどき、地面に叩きつけ、後ろ手を押さえ動きを抑えた。
一瞬の出来事で、皆が唖然とした。
「私、合気道の有段者よ。まだ、何かする?。」
切開がキッとして言い放つ。
「すみません。友人が見知らぬ男性に無理やり車にのせられそうで。大阪599 ろ 21-36です。場所は…。」
正木が警察に通報して、男達は大急ぎで車にとびのり逃げていった。
「大丈夫?。掴まれた所が赤くなってる。」
萩原が切開の事を心配している。
「大丈夫よ。私、キツくて引いた?。」
「そんな事ないよ。かっこよかった。」
萩原は本気でそう思っていた。
ー俺も、空手か何か始めよう。ー
「正木さんが警察に電話してくれたお陰よ。ナンバープレートを教えるなんて。本当に機転が利くわ。」
切開は正木に感謝した。
「もちろんよ。私、切開さんの事、大好きなの。愛してると言ってもいいわ。私の切開さんを、あんな男達の魔の手に渡せるわけ無いでしょう。」
正木のいきなりの愛の告白に皆はポカンと口を開けた。
ーちょっと感じてたけど。正木さん、本当に私の事が好きだったなんて。ー
「ナンパする人ってADHD(注意欠如多動症)らしいわ。行動制御の機能に何らかの異常があって、前頭葉がうまく働いていないんだって。」
正木が続けた言葉で、やっと皆が笑った。
「とにかく、大事にならなくて良かったね。」
大人しい大河原がため息まじりで呟いた。
「こんなに楽しい修学旅行をあんなヤツラの為に台無しにされなくて本当に良かったよ。」
この喜久井の言葉は、このグループの全員が思った事だった。
切開枸杞《きりひらくこ》は切り開く 高井希 @nozomitakai
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