第3話勉強会

ー本当は萩原くんに勉強を教えてもらいたいけど、女子の反感を買いそうね。正木さんと仲良くなって、勉強を教えてって頼もうかしら。ー


正木さんに近づくチャンスはすぐにやって来た。

正木が先生に言われて重い荷物を一人で運んでいた。

「正木さん、重いでしょ。半分持つよ。」

切開は正木に声をかけた。

ーやった。チャンス到来。ー


「ありがとう。切開さん。」

「こんな遠くまで。いつも正木さんが運んでるの?。」

「そうなの。世界史の先生、いつも私に頼むの。」

「じゃあ、今度から私に言ってね、半分持つよ。」

「切開さんって優しいのね。」

「え?、普通だよ。それより、早く中間テスト終わらないかな。私、見たい映画があるんだ。」

「切開さんも映画好きなの?。私、映画大好きなの。」


ー正木さんの映画好きはリサーチ済みよ。ー

「じゃあ、今度一緒に映画見に行きましょう。でも、追試にならないといいけど。」

「追試なんて、切開さん、頭良いでしょ。解るわよ。」

「でも、前の学校と教科書が違う教科もあるし、教え方とか、違うでしょ。」

「それなら、放課後、図書館で一緒に勉強しましょう。先生のテストのクセも教えてあげる。」

「うれしい。でも、迷惑じゃない?。」

ー本当は、狙い通りだけど。ー

「大丈夫。私も復習になるから。明日の放課後から始めましょう。」


次の日の放課後。

正木と切開は早速、勉強会をはじめていた。

ー正木さん、教え方も上手ね。良い人を選んじゃった。ー

「正木さんと切開さん、二人で勉強してるの?。」

萩原がカバンを持ってあらわれた。

「萩原君も図書室で勉強?。」


「そうだよ。俺、正木さんに英語の文法で解らないところを教わりたかったんだけど。」

「私も萩原くんに数学でいくつか質問があるけど。」

ーこれは、チャンス。下心を隠して、さりげなく誘うしかない。ー


「じゃあ、萩原くんも勉強会の仲間に入ればいいんじゃない?。正木さんも教えるばかりだと、つまらないでしょ。」

切開が提案すると、二人も同意し、三人での勉強会ということになった。


ーやったー!。萩原くんともっとお近づきになれちゃう。ー

切開は内心で大喜び。

勉強会を終えて、三人での帰り道。

「もう暗くなっちゃったね。」

「切開さんの家は駅の近く?。」

「そうよ。南側。」

「じゃあ、萩原くんの家の近くね。私、その角で右に曲がるから。じゃあね。」

「うん。今日はありがとう。また、明日。」


切開と萩原は並んで歩いて行く。

ーわー。ラッキー。一緒に帰れるんだ。ー


「萩原くん、手に持ってる本はなあに?。」

「ああ、これ、ミステリー。図書館で借りたんだ。」

「萩原くんも、ミステリー読むの?。私も何冊か読んだの。どの作家がお気に入り?。」

「東野氏とか有栖川氏とかが多いかな?。」

「探偵Gとか私も読んだわ。特にXの献身は凄かったね。」

「ああ、あれは映画にもなったしね。映画といえば…。」

ー話をするのが楽しくて、あっという間に家についてしまった。ー

「あ、私の家ここだから。」

「うん。じゃあ、明日また。」

「ええ。またね。」


中間テストの結果が張り出された。

正木 学年5位

萩原 学年6位

切開 学年9位

であった。

「正木さん、凄い学年5位よ。」

「ありがとう、切開さんだって、転校したばかりで、学年9位は優秀よ。」

「俺、いつもより、成績上がってた。勉強会の成果かな?。」

「私もよ。ねえ、切開さん、萩原くん、これからもテスト前に勉強会を続けない?。」

「賛成。私も今度はもっと頑張るわ。」

ーこれで、成績の心配もないし、おまけに萩原くんとずっと仲良くできる。本当に最高。ー


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