第2話ノートを借りて

昼休みを無事に乗り切り、五時間目。

「じゃあ、関数を解いてもらう。58ページの6番の練習問題を解いてみて。」

「先生。58ページに練習問題がないんですけど。私の教科書違ってますか?。」

「あれ?。本当だ。年度を間違えて渡したのかな?。とりあえず、隣の人に見せてもらって。教科書は取り寄せておくから。」


「ごめんなさい。えーと。」

「萩原だよ。よろしく。机もっと寄せないと見えないね。」

「ありがとう。萩原くん。」

ーやったー!。見かけもいいけど、内面もよさげじゃん。初日で仲良くなれるかも。ー


「ここ、来月の中間テストに出るから覚えておくこと。」

先生の言葉で、切開は大げさに慌ててみせた。

「え?。来月中間テストなの?。どうしよう。前の学校と授業内容が違うかも。」

「放課後、僕のノートでチェックすればいいよ。今日授業がなかったノートも明日持ってきてあげるよ。」

「萩原くん。本当にありがとう。助かるわ。」

ー本物に優しい。タイプ。絶対仲良くなりたい。ー


次の日、

「ノートを見せてくれたお礼にクッキーを焼いたんだけど。甘い物大丈夫なら貰ってほしいな。」

切開は恥ずかしそうに、クッキーを萩原に渡した。

「 そんなの良いのに。」

萩原はちょっと照れくさいようだったが、それでもクッキーを受け取った。

「ずるいぞ、萩原だけに。」

「皆の分も焼いたの、どうぞ。」

「俺、貰う。旨いよ。」

「本当美味しい。」

「こんなクッキーで喜んでくれるなんて。今度は他ものを食べてみてね。」


ーお礼が出来る女性は愛され上手。料理上手のアピールをして、ついでにクラスメイトの好感度もアップよね。ー


「切開さん。これ、残りのノート。前の学校の授業内容と違うのがあったら、コンビニでコピーすればいいよ。」

「萩原くん、ありがとう。今すぐチェックするね。悪いけど、現国と化学のコピー貸してくれる?。明日の朝、必ず返すから。」

ーこのノートの取り方は、勉強が出来る証拠。きっと萩原くん、成績も良いはず。今度一緒に勉強しようって誘おうかな?。ー


「切開さん、萩原くんにノート借りたでしょ。」

「ええ、凄く助かっちゃった。萩原くんて、親切ね。」

「萩原くん、顔も頭も性格もいいから狙ってる子が多いのよ。」

ーじゃあ、あんまり馴れ馴れしくすると、反感買う?。ー


「そうでしょうね。萩原くん、モテるだろうな。他にクラスの男子で誰がモテるの?。」

ーここは、さりげなく他の男子の話に話題を移すべきよ。ー


「斉藤くんがスポーツ万能でモテるし、後は、石井くんが生徒委員で人気があって、山城くんもチャラいけど、モテるんじゃない?。」

「そうなんだ。じゃあ三浦さんは、誰が好み?。」

三浦さんは、顔を真っ赤にして否定しだした。

「違うよ。私、別に男子に興味ないし。」

ー解ってるよ。萩原くんが好きだから、私にクギを刺したのよね。ー


「そうなの?。三浦さん可愛いから、彼氏いるんでしょ?。」

ー女の子は褒め言葉に弱いのよ。ー

「え?。彼氏なんかいないよ。切開さんこそ、どうなの?。彼氏。」


「私、家が厳しくて。それに、まだ早いかなって。」

「切開さんの両親、うるさいんだ。かわいそう。」

「異性関係に厳しいだけよ。他の事では優しいわ。」

ー家族の悪口は諸刃の刃。気をつけないと。ー


「そういえば、来月、中間テストなのよね。誰か勉強を教えてくれそうな人、いないかな。」

切開は心配そうな表情を作ってみせた。

「女子で勉強が出来るのは、朝倉さんと、正木さんかな。正木さんクラス委員だから頼めば教えてくれるんじゃない?。」

三浦の成績は決して良いとはいえなかった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る