第3話

 目が覚める。

昨夜の出来事が嘘であったかのようにぐっすりと眠ることができた。


『アビス・メイ』


それが彼女の名前であった。

彼女はやはり吸血鬼であり,俺よりも1000歳以上年上であることも分かった。

昨夜,彼女に血を与えることはなかった。

どうやら正式な契約を結ぶための準備をするらしい。


『めんどくさい。』


今日は平日。

学校がある。

俺は制服に着替えて学校へと向かう。

朝ごはんを食べる気は出なかった。



 学校にはまだ誰も居なかった。

俺は気分転換のために校舎内を歩く。

今は10月。

文化祭の準備物。

錆びついたバスケットゴール。

閑散とした校舎には人の気配がない。

先生もまだ職員室にいるのだろう。

しばらくしたら他の生徒たちもくるのだろう。

俺は教室で自分の机に伏せ,目を閉じた。


『早く夜になってくれ。』


そう思いを込めて。

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