第11話

午前の授業。




「でも、それって当たり前じゃないですか?そんなこと、誰もが知ってることじゃないですか?」




ジェヒョクが口を開くたびに、キム・ジンミョンの顔色がどんどんやつれていった。




午後の訓練。




にっこりと。




ジェヒョクが明るく笑顔を見せるたびに、泥まみれになった学生たちは次々と息絶え絶えになった。




知らない人が見れば、カン・ジェヒョクが一人でクラス全体をいじめていると勘違いしてもおかしくない光景だった。




しかし、当事者たちにとってはそれが現実だったのが問題だった。




「今日も充実した一日だったな。さっさとシャワーを浴びて、夕食を食べよう。」




「あ、あの野郎……!」




「あいつ、俺の背中を13回も踏みやがった……。」




「耳から泥水が出なくなるまで洗ってたら、今日も夕食に間に合わないな……。死にそうだ、ほんとに。」




1年生Bクラスの学生たちは、死ぬ思いをしていた。




**地形適応訓練**。




ただでさえ難易度が高い訓練だが、カン・ジェヒョクのせいでさらに難易度が上がっていた。




油断した瞬間に頭や肩、背中を踏みつけられてバランスを崩し、沼に突っ込む羽目になるのだから。




「カン・ジェヒョク、あいつのステータスめちゃくちゃ高そうだけど、本当に『緑』なのか?」




「入学する前にレベル上げしてきたんじゃないか?ほら、金を払えば『お膳立て』してくれる中小ギルドとかあるって聞くだろ。」




「それに意味あるのか?どうせ訓練課程は同じなんだから、レベルなんてすぐ追いつかれるだろ。」




「数ヶ月だけ強そうに見せたかったんだろうけど、考えたら腹立つな。カン・ジェヒョクの入学審査、誰がやったんだ?人がどれだけ間抜けなら、レベル一つ確認できずにあいつをBクラスに放り込むんだ?」




『理事長様だ、この馬鹿どもめ。』




キム・ジンミョンは舌打ちをした。




彼はカン・ジェヒョクの入学審査を理事長が直接行ったことを文書で確認していた。審査結果を疑う理由はなかった。




だが、妙な気分だった。




『カン・ジェヒョクはレベル1で間違いない。基本ステータスが他人より高いだけだ。それにしても「緑」判定を受けただと……?』




初心者用の魔力測定器は、対象の潜在能力を推測する。




測定結果が「緑」というのは、対象が最大でD級プレイヤーの資質しか持たないことを意味し、これは覚醒時点でのステータスとスキルの質が低いことの証拠だった。




学生たちがジェヒョクの魔力測定結果を疑う理由だった。




しかし、キム・ジンミョンはその答えを知っていた。




『ステータスが高いのに「緑」ってことは……開花したファーストスキルの等級が極端に低いってことだな。』




スキル研磨を担当する教官がジェヒョクのスキルを称賛していたが、その見解を信頼することは難しかった。




彼はプレイヤーデビュー初年度に両腕を失い、夢を断たれた人物。




政府が純粋に福祉目的で雇用した、低レベルのD級プレイヤーに過ぎなかった。




『気の毒な話だ……。』




プレイヤーの世界がいかに冷酷かを改めて実感したキム・ジンミョンは、すでに遠ざかったジェヒョクの後ろ姿を憐れむように見つめた。




もちろん、彼はジェヒョクを嫌っていた。




あの野郎がなぜよりによって自分が担当するクラスに編入してきたのか、昨日も夜中に思い出して布団を蹴り飛ばして起き上がったほどだ。




だが、今日を境に少し見方が変わった。




『覚醒時点でステータスが高いというのは、それだけ激しく努力したという意味だ。』




激しいどころか、必死に努力したに違いない。




16歳という若さでファーストスキルを開花させたのは、単に運が良かったわけではなく、正当な代償として得たものだろう。




だが、その代わりに低級なスキルを手に入れたとしたら、その喪失感はどれほどだっただろうか。




『俺はそんな奴に運がいいなんて言ったのか。』




喉に刺さった棘のような気分だ。キム・ジンミョンの表情はますます暗くなっていった。




* * *




スパアン――!




鋭く放たれた一閃。夜の闇を切り裂くように疾風のごとく刀が抜かれた。




力強く、速く、それでいて揺るがない。まさに光のごとき一撃。




ジェヒョクが目の前の仮想の敵に振るったその刃は、敵の首を地面に転がした後でようやく闇に消える刀身がわずかに目に映る程度だった。




「ハァ……ハァ……」




一撃の勢いに変わりはないが、刀を振るった本人の息遣いは限界に近い。




それでも彼は手を止めることなく、次の一撃を準備した。




ジェヒョクが追求する居合術とは、最期の瞬間においても完璧であるべきもの。




当然、修練の際も疲れたなどと言い訳をしない。




意識を失うか、指先一つ動かせなくなるまで練習を続ける。彼の修練がまさに「苦行」と呼ばれる所以である。




そう、疲労感という感覚はジェヒョクにとって非常に馴染み深いものだった。




だが、この「時間帯」は彼にとって異例だった。




まだ深夜1時を過ぎたばかり。




それなのに、すでに体から力が抜けてしまっている――。




「アイツら……役に立つっちゃ立つな……」




最後に三度だけ刀を振るい、ジェヒョクはついに仰向けに倒れた。そして力尽きた感覚に集中した。




体が疲れる前に、魔力が先に底をついていた。




これは地形適応訓練の余波だった。




沼地に早く順応するため、魔力を使わざるを得なかったのだ。




カン家の魔力運用法は「集中」と「発出」に重点を置いており、沼の圧力から逃れるのに役立つが、その反動は思いのほか大きかった。




さらに同級生たちが次々に襲いかかってきたのだ。




せめて自分の襟くらい掴んでやろうと必死に食らいついてくる彼らに、体力と魔力を予想以上に消耗させられた。




みんな一丸となってモンスター役を務めてくれたおかげで、修練には大いに助けられた。




『明日からはもっといじめ抜いてやるか。』




1年生Bクラスの学生たちにとっては青天の霹靂の知らせである。




今頃、心地よい眠りに落ちている彼らの夢が悪夢に変わっていることだろう。




にやにや。




邪悪な笑みを浮かべたジェヒョクが、自分の口元を軽く撫でた。




ライオンの城に入学してから、頻繁に笑顔になる気分だ。




最初は無理に笑っていた。君たちがいくら父やカン家を中傷したところで、自分を動揺させることはできないと宣言するための努力だった。




だが、わずか数日で彼は、自分が心から笑えるようになったことに気づいた。




まず勉強がとても楽しかった。これまで知らなかった知識を吸収する過程が、想像もできなかった満足感を与えてくれた。




訓練の内容も気に入っていた。沼地で転がり回る新しい経験が、修練に大いに役立った。実際、ステータスも驚異的な速さで向上していた。




そして何よりも、いまだに父を尊敬する人々がいることを確認できた。




これほどありがたいことはなかった。




ジェヒョクは父を憎むどころか呪うほどだった。抗議デモの叫び声をモーニングコール代わりに目覚め、子守歌代わりに眠りにつくほどに。




怒りと殺意に満ちて腐っていく心に、小さな逃げ道ができたような気分だった。




『入学して正解だった。』




単なる避難所として見なしていたライオンの城が、もしかすると特別な場所になり得るかもしれない――そうジェヒョクが思ったその瞬間だった。




バサッ。




赤いラインの向こう側、森の中から何かの気配がした。




続いて茂みを裂く音と共に、大きな影が赤いラインをためらいもなく越えてきた。




「なんだよ、くそっ……」




赤いラインの「向こう」が危険区域だって話じゃなかったのか?




モンスターがラインを越えてくるなんて、こんな表示に意味があるのか?




『もっと後ろにラインを設置しろよ。』




一度ならず二度もモンスターの襲撃に遭う羽目になり、ジェヒョクは自然と口から愚痴がこぼれた。そしてようやく立ち上がると、珍しく警戒心を見せた。




『素手で抑えるのはきつそうだな。』




本当に疲れていた。




かろうじて横になって休んだおかげで、一度だけ刀の柄に手をかける余力が残っている程度だった。




グルルル……。




オーク戦士の後ろから2匹のオークが続いていた。




合計3匹。




これらを一撃で抑えるには殺すしかない。急所を避けて刀を振るう余裕などなかった。




「ハッ。」




あまりの状況に呆れたジェヒョクは、スキルの価値がいかに偉大であるかを改めて実感した。




彼がかつて開花させた25のスキルのうちの一つ、【再生】を思い出したのだ。




***




<再生>


タイプ:パッシブ


致命的なダメージを受けたり、疲労度が限界に達した際に、肉体を完全な状態に回復します。


再使用待機時間:8時間




***




もし俺が、ファーストスキルを持つ覚醒者だったなら。


こんな状況でも笑っていられただろう。




『スキルってやっぱり反則級だな。』




だからこそ、もっと必死に鍛錬を続けるべきだ。最強のスキルを手にするその日まで。




ジェヒョクは心を新たにしていたが、まだ知らなかった。


自分が開花させた25個のスキルが、どれほど貴重で価値あるものなのかを。




そのうちの1つでも手に入れた者は、S級プレイヤーとして成功を約束される。


だが、ジェヒョクにとってそれは満足のいくものではなかった。




彼の目標は「国宝級」。その中でも最強の存在となることだ。




『それならば仕方ない。』




誰かにとっての夢であるS級スキルですら、彼を満足させるものではなかった。




「来い。半分だけ殺してやる。」




疲れ果てた経験は、想像以上に強力な武器になり得る。




刀の柄に手をかけながら上体を傾けたジェヒョクの集中力は、刀の切れ味のように研ぎ澄まされていた。




敵は3体。タイミングは――




『今だ。』




3匹のオークが跳びかかってくる瞬間、ジェヒョクの刀鞘が半回転して逆刃に変わった。




スパアン――!




淡い剣光が夜の闇に溶け込む。




逆刃で抜かれた刀は、オーク戦士の喉元と2匹のオークの鼻面をほぼ同時に打ち抜いた。




「グギャアアアッ!」




「そうそう、感謝の意はもういい。耳が痛い。」




ずるり、ずるりと後退するジェヒョク。




地面に倒れこんだオークたちは傷口を押さえて悲鳴を上げていたが、ジェヒョクはその隙に静かに後退していた。




崩れた城壁に足を取られそうになったが、それは些細な事故だった。


徐々に現場から距離を取っていく。




城門の上にある獅子の彫像が、今日も変わらず彼の姿を見つめていた。




***




[<獅子の城>の隠しクエスト発生条件を1つ満たしました。]


[隠し報酬としてステータスボーナスを獲得します。]


[<獅子の城>の意思が、あなたと対話を望んでいます。]




***




システムメッセージがジェヒョクに語りかける。


それは韓国だけでなく、全世界の注目を集めるような内容だった。




だが、その声はジェヒョクに届くことなく空しく漂っていた。




彼はまだプレイヤーとして覚醒していないため、システムと交信することができなかったのだ。

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