どうしてこう人間の世の中はくだらないんだ

 何らかの事情があって診療所を営む知り合いの家に居候し診察室の片隅で生活している。診察室と待合室の他には台所があるだけでそもそも僕が寝泊りするには狭すぎるものでそういうことになってしまった。夜の間は診療もなくベッドで悠々と眠ることができる。それでも急患などがあったりすると患者のためにベッドを明け渡すしかない。毛布に包まりながら壁際の折りたたみ椅子に座って診察が終わるのを待つ。深夜の診察が終わり医者らしき知り合いの年配の女性が「お腹空いたでしょ?」と言うなり台所で何やら夜食を作ってきてくれた。マグロとキュウリのヅケを串刺しにしたもの。それを食べながら女性と話をしていたのですが、彼女は何だか奇妙な宗教じみた新進小説家の世直し論とやらに嵌っているらしい。延々その話ばかりなので、辟易してしまった。二時間ほど話に付き合ってようやく彼女が診療所を出て行ったので僕は再び診察ベッドに戻り眠った。翌朝診療所の外からけたたましい拡声器を使った声に起こされた。その声に耳を傾けながら窓の外を見ると選挙カーの前に立った白いスーツを着た候補者らしき若い男性が演説をしている。両脇にはピンク色のスーツを着たうぐいす嬢らしき数人の若い女性がいて周りには聴衆もかなり集まっている。「私は皆さんもご存知だろうと思われますが小説家として一応はそれなりの成功を収めた男ではありますがこの度かねてより密かに憧れていた政治の道に飛び込むことを決意いたしました。つきましてはその決意の程をふんだんにつぎ込んだテーマソングを聴いて頂きたく存じます。ミュージックスタート!」選挙カーのスピーカーからBGMが流れ男は歌い始めた。うぐいす嬢たちはコーラスをしている。どうして小説家が選挙に出馬するからといって歌を唄う必要があるのだろう。テレビクルーが生中継しているようなのでテレビをつけてみる。コメンテーターの男性が口を開いた。これはオウム真理教のパクリですね。キャスターが答える。全くその通りです。だから小説家という人種は鼻持ちなりません。するとコメンテーターは鬼のような形相で「あんなヤツが小説家だと公言するのは、私は認めませんよ!」と憤慨を顕わにしたのでキャスターは慌てて「先生のような人であれば構わないのですが。一般的な話をしたまでで」と弁解。僕はそれをぼんやりと聴きながら「どうしてこう人間の世の中はくだらないんだ」と呟いてから冷蔵庫の上に置いてあった夜食の残りを手に取ったが酸っぱい匂いがするので口に運ぶのは諦めて大きなため息をひとつ吐きベッドに戻った。(夢日記二終り)


 立派に小説してるじゃないか。それならいっそネットの文章でもいいんじゃなかろうか。ついでにインターネットの怪談「にんげんのゴミ箱」への投稿文も二作ばかり見てみよう。

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