第34話


〜ムクロジ(村人)サイド〜



 ———アレンは小さい頃から変わった子じゃった。


 父親であるルベルドの奴は畑仕事で身体はムキムキじゃったが、畑を荒らしに来た小さな野生動物にも屁っ放り腰で、追い払うのも困難な見掛け倒しな奴じゃ。


 あいつは、顔だけ!


 と、村でも有名(ステラちゃんと結婚したやっかみ)だったから、親父に習ったみたいな可能性は皆無な筈じゃ。


 …しかし、誰に習ったのか(村人で教えた者も皆無…というか、わしらも畑に出てきた奴を何とか倒せるか、追い返せる位の腕前しかない)…森に入って、あろう事か仕留めて来れる腕があったのには、皆で驚いたもんだ。(女どもはホの字であった…ワシも女であれば、狙っておったぞい!)


 それでやっかまれて終わらないのがアレンの凄い所でなぁ。


 何と、ワシらにも簡単に作れる罠を開発しよったんじゃ!

 食卓に肉が上がる喜びと言ったら無かったわい。

 それで、アレンが知恵もの者って言うのが村全体に広がっとったの。


 …ああ、唯一村長の息子のダグマが歯噛みしとったがなぁ…あれは一々アレンと比べる村長が悪いと思うぞい。

 そりゃあ、グレるじゃろ。

 あの年齢の子じゃと。


 …まあ村長の気持ちも分からんでも無いがの。


 アレンの様になって欲しいって願いもわからんでは無いが。

 ダグマとアレンは同じ年じゃったからなぁー。

 ダグマからしたら、屈辱以外に何も無かっただろうのぅ。


 ああ、あれもいけんかった。

 アレンは昔っからこの村に残る宣言もしておったから、村長はダグマにも残って欲しくてアレンがどうした、アレンがこうしたと囃し立ててたんじゃ……逆効果じゃったのは明白じゃろ?


 息子に奮起して村を立て直して欲しい願望が先走って起きた悲しい事故じゃな。


 結局ダグマは早々に村を出て行ってしまったし、それまでの行いを反省した村長がアレンも村から出奔させようとしていたのは…完全に大暴走じゃったよ…。


 アレンは完全に巻き込まれただけの被害者じゃった。

 ダグマにも相当に恨まれておったしの。

 

 …アレンは多分割と他人に興味無いんで、その騒動後も村長とは一切ギスギスせんかったのには驚いたが。

 ワシだったら…最低一発は殴ったんじゃないか?

 ダグマは割と影響力あったから、アレンは彼女と別れてからはぼっちだったし。


 あれを気にしないのは凄いなと思ったもんだった。

 ワシ、あんなハブ耐えれん。



 …それからもちょくちょく、村の利益になるような知識をアレンがポロポロ出してくれたお陰で、村は結構発展していった。

 街に夢を持つ若者は絶える事なく出て行っていたが。


 俺ももう2人、子供をこさえた位だからなぁ。はっはっは。

 衣・食・住が整って、おっかあが見違える程の美人になればなぁ…。

 不可抗力じゃ。



 

 そんな変化を村にもたらせたアレンは今、娘っ子がちょっと街に興味を持ったってんで、今はその街を見学しに出てんだよなぁ。


 それを聞いて思った。

 …目から鱗じゃったわ!

 その手があったか!!みたいな。


 アレンが帰って来たら、ちょいとその馬車でも借りて皆で行ってみたい願望が湧く位には皆ソワソワしてるからな。村全体で。


 斯く言うワシも、そんな雰囲気に飲まれている1人である。(何せ、生まれたのが娘2人なもんで)




 …家のおっかあが綺麗になった原因もきっかけはアレンだ。

 あのアレン発明の風呂な。

 あれは仕事終わりにも良いもんだと思うが、女どもが姦しい位騒いどったわい。


 …ワシの家も女3人じゃろう?

 川で身を清める位は定期的にやっとったが、ボデーソープ?に、サンプーにリンスだぁー、保湿がどーのーの配合はまさかのワシら男衆の仕事とは……。


 色々、配合がどうのこうのとごちゃごちゃするのに、ワシ3人分だからの。

 ワシは基本の奴で十分じゃったけど。


 アレンは大変な物を作り出したもんじゃと思ったが。

 家族からの株がどの家でも軒並み上がったのは男衆的にもまあ満更では無かった。

 ワシも色々な意味でニッコリじゃったしの。


 …もしかしたら、3人目の子が出来るかもしれん。(次は男の子希望じゃ…肩身が…)



 アレン家が旅中は、畑仕事は皆で順繰りで回しておるのだが……もうそろそろ帰って来るんじゃ無いかの。


 うちの子らも、その娘っ子にお土産をねだっておったからな。

 帰って来るのを心待ちにしておるのじゃ。


 ワシらも村を出ていかなかった勢ではあるものの、街は気になっておったからの。

 土産(物理)も楽しみじゃが、土産話も大いに期待しておるのじゃよ。ほっほっほ。




「街よりこの村の方が過ごしやすいですよ」


 と、最近入村したアズマさんが褒めてくれとったけど…謙遜して、こちらに花を持たせてくれてるだけだと思っておったのだ。


 ———まさかそれが本心だったなんて誰も思わんよなぁ?




 …アレン一家が(アレン以外)街に心を折られて帰って来るまで後幾日。



 


 


 




 

 





 


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る