第32話 ジェニーの大冒険⑤


「おお〜〜…?」


 遠いが、やっと街が見えて来てジェニーはちょっとテンションが上がったのだが…。


「…遠いねぇ〜〜」


 かろうじて見える門から伸びる行列が伸び、伸び、伸び過ぎて、これ本当に入れるの?状態だった。

 ジェニーは心配になり、そう呟いた。


「…これは想定外だなぁ〜〜」


 直ぐ傍に座っているお父さんも馬車を止めて長蛇になった列を眺めている…それを見て、キリッとしたお父さんは引っ込んじゃったなぁーとジェニーは少し残念に思っていた。

 勿論、今のお父さんも大好きだけど、キリッ!なお父さんは珍しいので、ちょっとだけ。




「おー…」


「俺らが来た時よりも凄まじいなぁ…」


 お父さんがグレ兄とレオ兄に前回もこんなに並んだのかと尋ねてた。

 前回も並んだ事は並んだみたいだけれど、こんなにでは無かったみたいね。


 馬車を列より手前で停めたのは、あんまりも長蛇になり過ぎた列の最後尾がごちゃついているのと、その影響で中々前に進めずにイライラした者同士が揉めているからである。


 これが一件どころじゃなく多発している様で、兵士さんが全然対応出来て無いみたい。


 だから今はお父さんが、危険だからって言ってちょっと離れた地点で様子見している所なのよ。


「並ばれないのですか?」


「いやぁ…流石に家族連れであの喧騒地帯に入る勇気が無くてですねぇ〜〜」


 後から来た馬車のおじさんに話しかけられて、お父さんがはっはっは、と笑いながら答えている。


「そろそろ野営の準備するぞー」


  暗くなり始めたから、今日はここで野営するみたい。


「ああ、最後尾でも揉めているのですねぇ〜〜」


 お父さんに話しかけて来た多分商人のおじさんも、お父さんの言葉に最後尾を見て、空を見て、ふむふむしてから


「私もお隣で野営させて貰ってよろしいでしょうか?」


 って荷物をすでに降ろしつつ聞いて来てたよ。


「どうぞ、どうぞ」


 ゆったりマイペースに話す様が、お父さんそっくりでちょっと見てて面白い。


 まあ、うちの馬車って中が快適だから、外でやるのは食事作り位なんだけどね。

 おじさんは外にテントを張りつつ、お父さんとおしゃべりを続けてたよ。

 これはあれだね。情報交換って奴だ!

 …でも、おじさんの方がかなり情報持ってて、お父さんは「ほー」って聞くだけなんだけどね。


 私ら家族も耳ダンボにして、おじさんの話を聞いてたし。てへっ。

 …ちゃんとご飯の準備はしていたので許してちょんまげっ!

(↑時々出る日本的表現は全てアレン作の漫画から得た知識からです)



 …それで、おじさん改め、ダントスさんのお話では。


 元々魔物の脅威に晒されていた辺境伯が治める領地に、ロストテクノロジーな魔道具がもたらされて魔物の脅威が減ったんだって。


 それは凄いねっ!


 それを聞いた近隣の村とか町とかの人達が、救いを求めてこの地を訪れているのがこの騒動の原因らしい。


 ここ5年位、徐々に魔物の数が増えてて皆が不安に思っていた所に、救世主の様な魔道具が登場!

 その恩恵に預かりたい人達が辺境に押しかけているんだって。


 私たちが、初耳!みたいな表情をしていたからか、ダントスさんにめっちゃ不思議がられたよ。


「庇護を求めて来られた訳では無いのですか?」


 って聞かれちゃったもん。

 それでお父さんが、こっちの事情を説明。


 事情って言うか、只の見学なんだけどね。


「まあ、若い子達は都会に夢を持ちますからなぁ…」


 って、優しい目で見られたよ。

 私と、お父さんが。


 …幼い子供の夢と、親バカなお父さんを見る感じが…居た堪れないよね。

 良いじゃん、良いじゃん。

 別に憧れてなんか無いけど、ちょっと見てみたかっただけだもんね!ぷんぷん。


 その商人さんは、元々この街の住人さんで店舗も持っているらしいよ。

 今は、人口が多くなり過ぎた所為で食べ物が減っちゃったから、近隣の街へ直接買い出しに出ていたらしい。

 わぁっ、大変だぁ。


 ダントスおいちゃんの言う事には、この長蛇の列もいずれは解消するだろうけれど、中はちょっと人多過ぎでトラブルが絶えないんだって。

 折角村から出て来たんだろうけれど、一旦落ち着くまで見学は諦めた方が良いだろうって…。

 折角ここまで来たのにぃ…涙目。


「治安も悪くなっているなら仕方無いですね。また改めます」


 ってお父さんが馬車を引き返しちゃうから、私は思わず泣いちゃった。

 …だって、本当に目の前なんだもん。泣。



 ちょっと引き返した森の中で


「———じゃあ、裏口から入ろうねぇ」


 って。


「……ひっく……帰らないって事?」


「うん。もう一回来るのは面倒臭いし」


 …帰らないらしい。

 後、裏口って何処??


 お父さんは馬車の方向を変えて、またスムーズに走り出したよ。

 馬車は走るよ、どこまでも?


 …それで、今。

 本当に街の中に入れちゃったけど……良いのかな?


 裏口って言ってたけど、かなりの力技だったよ。

 人通りの皆無な高い囲い壁に近づいて、魔法で壁に穴を開けて「ね」だって…。


「え、これ怒られない?」


 って聞いたら


「バレないから大丈夫!」


 って。

 …お父さんって、思ったよりかなりアグレッシブだよね。と思いました。


 まあ、これで街見学できるからいっか!と思った私も、大概だと思うけど。やっふぅっ!!



※注※

 入ってすぐに穴は綺麗に塞ぎました。帰りは堂々と表の方から出る予定。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る