第31話 アンナの大誤算
街へ行く旅の道中で、イチさんを口説き落とすつもり満々だったのに…馬車に乗った途端に急に眠くなって…気づいたらもう街に着いていて1人で宿のベッドに寝ていたなんてそんな事あり得るの…!?
…思わず現実逃避しちゃったわよ…。
これじゃあ、当初の計画は水の泡じゃないっ!と途方に暮れるしかなかった。
親切な事に、宿代は一週間分事前払込されてて助かったけど…“そうじゃないっ”としか思わなかった。
自分の不甲斐なさに、思わず舌打ちしちゃったわよ……。
起きてたら今頃はイチさんと一緒に不安も無く過ごせていたかもしれないと思うと、途端涙が出て来たのは仕方のない事だったと思う…勿論、くやし涙よ!!
…幼い頃から要領の良かった私は、村1番の最良物件と言われていたレオンと付き合ってて人生イージーモードで過ごして来た。
周りの女の子達にはそれはそれはかなりやっかまれてたけど、その視線が気持ち良いって言うポジティブタイプの私は、さほど気にしてなかったのよね。
寧ろもっと見て良いわよ!って思ってた。
まあだからこそ、女友達は終ぞ出来なかったけれど…特に問題はなかったわ。
…本当はレオンのお父さんが1番の最優良株だったんだけれど…奥さんへの溺愛っぷりは有名だったし、リースさんは見た目はどうあれ、家事は人並以上に出来る人で良いお嫁さんだったので諦めた。
…その頃にはもう、レオンと付き合ってたって言うのも勿論有るけどね。
レオンと私はお互い一目惚れ。
きゃっ!!
アレンさんは毎日、レオンは偶に森へと入っていって野生の動物を狩ってくるのよ。
私はレオンの彼女だったから、仕留めた獲物の一部を譲り受ける事もしばしばあった。
罠もあるから肉が食べられないとかって事はなかったけれど、畑にかかっているのは小さめの鳥が9割。
ごく稀に迷い込んだ小動物も生息しているから他の肉を食べたことがないって訳ではないけれど、鳥以外の肉は滅多に食べれなくて大抵はご相伴に預かるしかないのよね…私、マジで勝ち組だったの。ふふふふふ。
でも、いずれ別れる事は決まってた…。
だって彼、あの村からは出ない組だったから。
いや、私も散々説得したのよ?
一緒に着いて来て欲しかったもの。
でも、駄目だった。
あれだけ言い続けて駄目ならもう無理よ。
…私も私で、街を諦めきれずだったからお互い様ではあるんだけれど、結局破局するしか無かったわ。残念。
…でも、1人ではやっぱり不安でしょう?
そこに丁度街から来たっていう夫婦が現れたんだけど。
美男美女で商人さんなんだって。
何でわざわざ街から村へ?とは思ったけれど、村は沸いたわよね。色々な意味で。
奥さん、顔は良いけれどとっても不器用で、家事は一切出来ないって(笑)。
え、これならアプローチすればもしかしたらっ!
っていう空気が村から出て行く女子勢に広がるのは本当に直ぐで。
私も猛アプローチしたわ。
告白もしたし。
村では節操なし!みたいに言われたけれど…もうレオンとは別れ済みだし、ジェニーちゃんに睨まれる謂われも無いと思うけど。
文句あるなら、村から一緒に出てくれれば良かったのよ!とも思っていたし。
玉砕したけど!まあまだ知り合って数日だものね。
幸い、街への移動を夫婦で請け負ってくれたから延長線突入!だって息巻いていたのにっ!!
私、マジ何で寝ちゃったかなぁ〜〜…。
宿の人に聞いたら、当然もうあの夫婦はこの宿からは出た後だって聞かされて。
はい、詰んだわ!
探そうかとも思ったけれど…こんな広い街で出会えたら奇跡よ。
それに絶対奥さん同伴でしょ?
流石にあの奥さんの前で口説くとかは出来ないし…諦める以外は無いわね…はぁ…。
まあ不幸中の幸いで、もう街へは着いているし。
一週間の宿代は払込済みだって言うし。
私の持ってきた荷物も部屋の中にあるから今まで村から出て行った組よりは恵まれている事は確実だから…これで納得するしか無いわよね。
その時は無理矢理そう自分を慰めたんだけど。
この街、今もの凄い人口が高まってるらしくって、働く所が無いの!
意味わかんないわよ!!
何か最近、凄い魔道具を領主が手に入れたらしくって…何だっけ…結界の魔道具っていう奴、だったかな??
これで外からの魔物の侵入を防げる代物らしいわ。
それを聞いた時は、流石発展した街ね。
そんな凄い道具があるなんて、位の認識だったんだけれど。
この街がもう安全だってわかると、元々多かった人口がドンッ!と倍増した。
それまでもちょろちょろっとしか入れなかったバイトもその人達との取り合いよ。
仕事が無いとお金も稼げないでしょ?
需要が高まって供給が追いつかず、食料品とかの値上げも乱立したらどうなると思う?
…しかも、安全地帯だとわかると人って余裕が生まれるでしょ?
犯罪件数も軒並み伸びてたみたい。
…宿から追い出された私も、例外じゃなく巻き込まれたわ。
身ぐるみ剥がされて、奴隷落ちよ…。
地下の檻にはひしめく程の人、人、人。
…私は皆とは別枠で個人用の檻へと入れられたわ。
理由?
他の人よりも綺麗だったからですって。
素材はそこそこなんだけど、そうじゃなかった。
村って田舎だってばかりに思っていたけれど。
宿で暮らして数日もかからずに思ったのよ…何で村の暮らしの方が充実してるのよっ!って。
まず、お風呂が無かったのが大ショックよ。
近くに川も流れて無いから、水を含ませたタオルで身体を拭くだけなの…街なのにっ!しかも、桶一杯分の水にもお金が掛かるって何?あり得ないでしょ!!
村では洗髪剤に身体を洗う洗剤と使用用途が別れた物を使ってたでしょ?それも無いし、もう最悪よ。
数日で何だか体が痒い気がしていたし、もう村に帰っちゃおうかしらって悩んでいた所で誘拐されちゃうなんて…本当に私ってついて無いんだから!
一週間はお風呂に入らなかった私だけれど、未だその効果は残っていた様で、他の人達とはキレイさが違って出ていたみたいね。
薄汚れた人達とは分けてくれたのは良いけれど…そもそも誘拐しての強制奴隷は違法なの。
法が効かないから、行った先でどう言う扱いを受けるかも分からないわ…。
私、これからどうなっちゃうのかしら…と悲嘆に暮れるしかない惨めさに涙が溢れた。
…こんな事なら村から出ずに、大人しくレオンの奥さんやっていれば良かったのかしら、と後悔する日々と希望の見出せない未来に絶望するしか無い私は…「助けに来たぞ」って入り口から来てくれるレオンとイチさんの妄想を頭で繰り広げて、開かずの扉を見続ける事しか出来無かったのであった……。
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