第18話


〜ステラサイド〜



うちの長男は、小さい頃からちょっと変わった子だった。


赤ちゃんの時は、周りから聞いていたよりも、泣き喚く回数が少なかったし。


…でも、偶に無音ではらはらと涙を流していたのは、一体何だったのか…。

(↑明らかに日本じゃない感じだったんで、絶望して泣いてた)


他の家の子供が元気に外で遊ぶ中、嬉々として家の手伝いをやってくれてたのには助かったけど…“遊んできて良いのよ”って言ってあげられない位に家計は苦しくて。


ルベルドがせめてもと作った、薄い板を二つ縛っただけの木の剣のおもちゃに顔を輝かせてブンブン振っていたかと思ったら。


今まで頻繁に畑を荒らしていた小動物やら、村周辺に出没する動物を狩ってくる様になたのには正直、かなり驚いたのよね…。


いやそうはならんやろ!って旦那と2人、つっこんじゃったわ…思わず。


きょとんっ?


じゃ無いのよ。


…これで食糧難だった家計が大幅に助かったから、見て見ぬふりしてたけど。


本当、不思議な子だった。


…私もルベルドも、生まれた時から農家の出よ。


夫の身体は筋肉もりもりだったけど、何かを狩る技術は皆無よ。


あんた一体、どこでそんな技術身に付けたの!?


って事を、特に隠す事も無く、普通にやってのける子だったわ。



私とルベルドが村を出て行かなかったのは単に、外で生きていける自信が無かったからよ。


でもアレンなら、どこへ行っても飄々と生きて行けそうだなって思ってたけど。


それこそ、物心付いてからずっと、頑なに村から出ないと主張する変わった子だった…親としては、嬉しいやら、残念の様な…複雑な気持ちで聞いていたけれど。


…ふふ、この畑を継ぎたいんですって。


お父さんは大喜びだったわ。


丹精込めて作ってきた畑だものね。


私も勿論、そう言って貰えて嬉しかったけれど…外に出れば、何かしらもっと大きな事を成し得るんじゃ無いかって気になる様なそんな子だったから、良いのかしら?って思っていたの。


大きくなれば、意見も変わるかもとも思っていたけれど…一貫して貫いていたのにはビックリよ。


そんな頑固なところは、誰に似たのかしら?




…アレンに彼女が出来たのはこんな小さな村だもの。


すぐに話が回って来たから、私も旦那も知っていたのだけれど。


終ぞ、紹介されずに終わっちゃって、2人でがっかりしたものよ。


…って言うか、そんなに好きそうじゃ無かったから、こっちから話も振れないし。


後になって、“告白されたから付き合った”って聞いて…。


え、ポンコツ?って思った私達は、悪く無いわよね?


旦那と2人で説教したわよ。


しょんぼり涙目は可愛かったけど…やったことは全然可愛く無いからね。


今度は誠実に、好きになってからお付き合いしなさいって言ったけれど。


村に残ったのが、アレンとリースちゃんのみだったから、選択肢が無くって…。


大丈夫か!?


って心配してたけど。


1回目のアレが嘘みたいな溺愛が始まって。


ああ、リースちゃんは、アレンの好みなんだなって安堵した。


幸い、1回目の子にはバレてなかったけれど…アレンって、わかりやすいのよねぇー。


好き嫌いが。


リースちゃんには、凄いべったりで。


いや、結婚するまではちゃんと待ちなさいよっ!?


って別の意味で心配になる位には、溺愛だったわよね…。


———…本当、誰に似たのかしら。



その頃には、村も家もいつの間にか生活が安定していて。


私達にもまた、子供を授かる機会を得たわ。


…グレンは、おっとりした良い子に育ったけれど。


赤ちゃんの時はアレンと違って、かなり大変だったのよね。


世間一般の子育てって、これか!!ってなったわ…。


アレンの手の掛から無さは異常だったと、再認識した瞬間だったわね…。


ふふ。


…今は、孫にも囲まれて。


またまた何処で覚えて来たの、その技術!な、魔道具にも助けられて…。


昔じゃ想像も付かない位に、豊かな生活を送れているのよねぇ。


それで?


まさかの今度は、街へのちょっとした旅行ですって!


嬉しいけど!凄い複雑よ!!


家族全員で、“ちょっと見に行ってみる”、だなんて…贅沢過ぎないかしら!?


そんな発想、無かったわぁ〜。


村を出るか、出ないか。


その2択しか無いって思ってたから。


それを聞いた他の村民も、その手があったか!

みたいな顔していたし。


だから、私達が行った後にそれぞれの家庭も、ちょっと行っちゃう?

な雰囲気になってたけど。


…ちょっと、私達で様子見しないでくれない?

と言いたい…。



…憧れてたけど、怖い気もする。


あの、のんびり屋のグレンを怖がらせる都会って一体、、、って。


でも、孫のジェニーちゃんがアンナちゃんの影響で、都会に興味を持っちゃったからねぇ…。


まあ、アレンさえ居れば、なんとかなりそうよね?とは思っているんだけれどね。


そんな私に、


「純粋に、楽しもうよ」


と夫は笑う。


…相変わらず、おっとりなんだから。


でもそれで、肩の力はちょっと抜けたかもねぇ…。


まあ、なるようにしかならないし。


旅行なんて、正直人生初よ。


行かないなんて選択肢は無いんだから、息子の好意に甘えさせて貰って、是非楽しみましょうかね。






※ ※ ※


当日、アレンの本気の準備に、ドン引くことになる事をまだ誰も知らない。








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る