第19話
〜ルベルドサイド〜
「僕が、この畑を貰って良いの?」
目をキラキラさせて聞いてきた息子に、もっと仕事頑張ろうと思わされたのは、いつの頃だったか。
こんな小さくて貧しい物しか残してやれないと思って落ち込んでいたのに。
アレンはまるで、もの凄い宝物を貰ったかの様に大喜びで。
大興奮でぴょんぴょんと飛び跳ねて喜ぶ姿に、母さんとは良く、顔を見合わせては笑ったものだった…苦笑混じりではあったけどな。
身体を独自に鍛えていたのは知っていた。
俺の筋肉は、畑仕事をしていたら自然に付いたものだったが、アレンはさらに色々やっていたみたいだ。
歳かな…初めは少し、真似してやって見ていたんだが…追いつけなくなった時点で、辞めてしまったよ。ははは。
自分で考えて…にしては上手いこと、罠を設置して畑に来る害獣を狩りだした時には、特に驚いたものだった。
本当に面白い位簡単に、罠にかかっていくからな。
毎日の食卓に肉が加わって、感動したものだった。
罠もそんなに難しいものでは無かったので、最初に俺が習い。
次に、村長が聞きに来て。
今では、村の女子供の手仕事として定着しているから、不思議なものだ。
アレンが幼少期の頃は、魔物も数匹現れていたが。
いつの間にか、野生動物位しか来なくなったなぁ…。
魔物は頭が良いって言うし、村には各家に罠が設置してあるからそれで来なくなったのかもしれないな。
アレンは他の子達とは滅多に遊ばない。
誘われはするのだが、
「畑仕事終わったらねー」
と断っている姿を良く見かけた。
「毎回遊びに行かれると困るけれど、偶になら良いぞ」
と言った事があるが、
「畑仕事の方が楽しいから」
と断られたっけな。苦笑。
楽しい、か。
俺は、食べる為に仕事してるだけで、畑仕事を“楽しい”なんて思った事無かったなとちょっと反省した。
付き合いの悪いアレンは、その内誰にも誘われなくなったけれど、本人は全く気にしている様子は無かった。
メンタルが、強い!
俺が幼い頃は…主にステラとしか連んで無かったが、それでも周りの目は気にしていたと思うのだが。
そんなアレンをステラが気にしていたので、簡易な剣のおもちゃを作って渡してやったら。
「わあっ!凄い、プレゼントだ!!」
と、思いの外以上に喜んでくれて。
時たまブンブン振り回して一人ではしゃいでいる様子には、ステラと一緒にほっこりしながら見守った。
それからだな。
アレンは時たま暇になる時間を、一人遊びに使っていた。
…魔女ごっこもその一部なんだろうか?
ヒッヒッヒ、と鍋を掻き回す様は、本気で物語に出てくる様な意地悪魔女様の様で、ちょっと面白可愛いんだよな。
…作るものは、えげつないけどな。
特に妻が、大喜びする物を作っていたけれど。
偶に、父さんにもって、上手い酒を持って来る事がある。
…アレで良く、そんな物が出来るよと密かに感心したものだ。
アレンが鍋を持ち出すと、2人してソワソワ期待するんだよな。
いつの間にか、俺らの娯楽にもなっていたのは…果たして良かったのかどうか。
…只、俺らが喜んで受け取ると、アレンも心底嬉しそうにハニカムのがなぁ…可愛いんだよな、ホント。
ほっぺを真っ赤にして、満面の笑みで頭を突き出して、“撫でろ”の催促に、時たまステラは可愛いが過ぎて我慢出来ずに、ぎゅって抱きしめてたからなぁ。
一瞬、あれ?って顔をするが、きゃっきゃと笑ってアレンもぎゅってし返す所がまた、可愛いが過ぎて。
しばし、3人で団子になる事も多かったな。
流石に大人になった今じゃあ、もうやる事も無いが。
最近の衝撃は、街への小旅行の提案だな。
…この歳で、街へ繰り出すのか…とちょっと震えたのは内緒だ。
感動もあったが…未知はやっぱり恐ろしいものがあるからな。
ステラが不安がっていたから、そんなのはおくびにも出して無いが…俺も勿論、不安だ。
だが、皆一緒にだと言うから、そこにはホッとした。
情けないが、アレンが一緒だと思うと安心感が桁違いだからな。
だから皆、村を出る時はダメもとでアレンに突撃かますんだろうけど。
…せめて、常日頃からもうちょっと関わりを持ってから来い、とは言いたいが。
アレン、ほぼ“こいつら誰だ?”状態だからなぁ…。
リースちゃんも併せてステラと3人で苦笑いするしか無いよな。はは。
“出る準備”と称して、アレンがまた何かやっているな。
また何か、規格外の物でも作るのだろう。
…帰って来る前提とは言え、家族で初めて村を出たグレンとレオンが意気消沈して帰ってきた時には大いに驚いたし、そんな所に孫のジェニーが興味を持ち始めてしまったのでアレンも慌てたのだろうなぁ…。
まあ、考えても仕方が無いよな。
なる様にしか、ならん。
計画は着実に進んでいるんだ。
楽しむ方向でシフトチェンジするしか無いよな、と俺は密かに覚悟を決めた。
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