第10話


予定を大幅に超えて帰って来たグレンとレオンは現在、絶賛部屋に引き篭もり中である。


嫁と娘に父さん母さんは、それこそ出発前から2人を大いに心配していた所為もあってか、せっせと世話焼き邁進中。


…特に、グレンの方の様子がおかしくて。


元々おっとりな性格で、楽観的。

けれど怠惰という訳ではなく、またうちの娘の前ではちょっと格好付けてて、優しい第二のお兄ちゃんキャラだった訳だが。

今回帰って来てからは全く、取り繕えて無いからな。

そんな余裕も無いって感じか。


ジェニーもいつに無くボロボロなグレンとレオンの様子に、母性本能くすぐられちゃったのか…せっせと率先してお世話焼き中である。

うん、可愛い。そして、良い子である。

絶対、嫁似。間違いない。


2人の大冒険はもう、ここで終了だな感が凄い件。

村人達は続けて欲しそうな顔してるけども。

この様子だと…仮に2人が復活したとしても、家の家族が許さないだろうなぁ。

えー…一体、何があったんだろ?


持っていってた物は全部売れてたし、村の欲しいものリストに載ってた奴は全て買い込んで来てたから、一見行商自体は見事に大成功を収めてるじゃんって思ったけど。


まあ、俺も兄で父親だから、ちゃんと2人のアフターケアにも参加するよ。

…話を聞くだけだけど。


2人曰く。

理想は理想のまま、ここに居る他の村の人達の様に、憧れや夢で終わらせられていた方が幸せだった…との事らしい。

うん、わからん。


まあ、ここの人たちって何故か必要以上にここ以外の場所に夢見てるもんね。

もっと生活水準が高くて、理想郷!感が凄い。


因みに俺が元日本人の記憶持ちだから、実は俺らの家こそ理想郷仕様だと思うんだけど。

次の転生に怯えた俺が、青春全て投げ打ってまで身につけた日本の色々な技術達はこの世界に転生した今、無駄では無かったのだ!泣。


上下水道完備。

便利家電系は全て、魔道具に落とし込んで再現。

…唯一不満があるとしたら、食事だけれど。

それはまあ、仕様が無いじゃん。

もどき調味料の研究だけじゃあやっぱり足りないんだよな。

だって、作物の遺伝子調整とかってもう俺の生きてる間では成し得ない大事業だもん。

作物の味自体がそもそも違うから、調味料でいくら整えたところで感はあるけれど!

前前世に比べたらよっぽど快適でおいしい生活は送れてると自負しているよ。


日本と比べちゃったら、妥協は必要だけど…。

こんなに自分の生活にこだわってんのって多分俺くらいのもんだよ。


今の都会の生活とか、調べても無意味だと思って調査とかはしてないけれど。

絶対俺の生活の方が生活水準高いに決まってるよ。


自分ではそうは思っていても…村を出たことが無い俺がいくら言っても説得力皆無なんだよなぁ。


だから誰かにこんな事言った事無かったけど。

外に夢みる若者達にはちょっと匂わせとけばよかったかなぁ…と、2人を見て後悔中。

うーん…。

こればっかりは難しい問題だよ。


まあ。自分さえ良ければそれで良し理論で、村にはそう言う技術面では貢献とかした事無いけど…家や実家に遊びに来た奥様達が夫の尻を蹴っ飛ばして良いところは取り入れてはいるみたい。

そこは、俺特に関知して無い。

勝手にしてくれである。

でも、そんな事を繰り返してるから、実は村全体の生活水準も上がってるんだよなぁ。


———帰って来ない皆は、元気にしているのかなぁ〜…。

まあ、誰一人帰って来無いからこそ、残ってる側から見ると都会ってそんなに良いところなんだなって思っちゃうからなぁ。

修正は難しいんだよね。

比べてくれる人、皆無だもん。

2人はほら、心が壊れちゃってるから。

家族はギリ良いけど、対人が嫌だからこそ籠ってる最中だからねぇ。


……ああ、そうそう。

2人の話を聞いてる最中だったんだったわ。

めっちゃ思考、脱線したー。


…で、現実との齟齬にギャップがあり過ぎて、かなり疲れてた所に。

街でも色々トラブルに見舞われ…心折れちゃったらしい。


旅が意外と大変で、今までの村での生活が如何に恵まれてたかって実感したらしいのと。

何か、都会を実際に見てみたら、都会への憧れを悉く破壊されちゃったらしい。


…へー。

聞いてたら逆にちょっと気になって来たわ。

今の都会って、どんな感じなんだろ?


「…父さんが頑なに村から出ない理由がわかったよ」


って遠い目でレオンに言われた時は、本当お前疲れてんだな、ってなったわ。


いや、別に。

村から出ない=都会嫌いとかでは無いんだけど。

単純に、都会にそんな憧れが無いだけだ。

何処に行っても絶対、前世の日本には敵わない訳だしな。


こんなに理想とのギャップがあったんなら、1回は現実見に都会に家族旅行とかしておけば良かったかもなぁー、と思わされた。


都会に憧れたままの子らをそのまんま、成人したからってその本人らだけで行かせるってのは、酷だったかもしれん。

現に2人、心折れてる訳だし。


そこら辺でのキャンプ位は考えて、便利テントとかは作ってたけど……ちょっと大幅に計画変更して、いっそ2家で1回、皆の理想(笑)の都会へ家族旅行しても良いかもしれんな、と思った。


ふんふん。

何か、すっごく良い案な気がして来たな。

そうしよう、そうしよう。

それで、妹を守る為と称して2人も連れ出そう!

家族旅行だったら、2人も気楽に旅に臨めるんじゃ無いか?

何の何がトラウマ化したかは知らんけど、克服出来れば引き籠もりも解消されるかもしれんしな。


……別にそのままでも、全然養ってやるんだけど。

やっぱ家族には全力で笑顔でいて欲しいからなぁ…。







……それはそうと!


「えーっ!?何、何??何で、ボスと1兄が居んのっ!?」


入村希望者だって言う都会からの同行者2人組が、まさかの知り合いって言うね!!

しかも、前前世時代の。


…何で未だ生きてんのかとか、姿が一切変わってない事には言及しないよー。

俺も転生とか言う不思議現象見舞ってるからさぁ。

そう言うこともあるよね、的なね。


…年齢の事言って、ボスに拳骨喰らいたくないとかでは決して無いのだ!

因みに拳骨、頗る痛い。


「…ふーん。今回はモブ顔じゃあ無いんだねぇ?」


ジロジロ見てくるボスに、訝しげな1兄。


前前世の俺、誰の印象にも残り難い顔だったからこそ、この組織にお買い上げされた訳だもんね!


…それ故に修行中、何度置いて行かれそうにはなった事か…。

まあ、それも今は良い思い出だけど。


「それにしても、2人がここに居るってことは、トラブル起きた?」


「「……はぁ……」」


あるえぇ〜〜?

何で、そんなに心底呆れました。的な反応なんだかなぁー?


「相変わらず、能天気な頭してんだねぇ」


「…末っ子だからって皆が甘やかした結果だろう」


俺氏、嘗ての仲間にディスられ中なう?


「えー…でももう、解決済みでしょ?」


「はっ!私らが動いたんだ。そこは保証するけどねぇ」


「お前、転生して頭パッパラパーになったんじゃ無いか?」


えー…さらにディスられたぁ〜〜……解せぬぅぅ……。








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