〜グレン、レオンの冒険④〜



〜????サイド〜



「ふーん、面白いじゃないか」


まさか今頃になって、こんな依頼が入るとは思って無かったんだけどねぇ?

もう暗殺業は“あの時”以来、廃業しちまってるんだから。


「本物か?」


「ふふふ。この手紙は間違い無く、ゼロ本人からさ」


「…そうか。じゃあ、どうする?」


「勿論、昔の“借り”返済のチャンスだ。きっちり、熨斗付きで返してやらないとねぇ」


結局、あいつが生きてる間には終ぞ、使われる事は無かった“緊急依頼”だ。

もう残ってるのは私とイチだけになっちまったけど。

あいつの家族ってやつの手助け位だったら、鈍っちまったこんな腕でも、余裕でこなして見せなきゃ元ボスとしての名折れだろうよ。


「…それにしても。この家族って子らは迂闊だねぇ」


そりゃあ、今時こんな餌(魔道具)とかを目の前に出されちゃあ、貴族連中が黙っていられる訳が無いじゃないか。


“売りたい”なら兎も角、“見せただけ”なんて所業を、平民如きがするなんて…許される訳が無いんだよ。


「貴族共もコイツらの扱いには、困っているんじゃ無いのかい?」


あんなに大っぴらに、自分達に最も最適で今確実に必要な商品を見せつけておいて。

…今更“売らない”なんて言い出すなんて、御貴族様側からしたら頭おかしい連中の所業だろうからねぇ。


しかもそれが、まだ値段を釣り上げる為の交渉だったなら。

正直御貴族様相手にそれは、失礼極まりない悪手なだけだけど。

これならまだ、常識の無い庶民はこれだから!位の認識で終われただろうにねぇ。


それがだよ?実際蓋を開けてみたら、純度100%の拒絶だったんだから…正直、意味がわからなさ過ぎだろう。


……例えるなら、わざわざこっちの状況の下調べをした上で、アポイントまで取って訪問販売しにきた商人が、何故か目の前で商品を引っ込めたようなもんだよ。

御貴族様側から、見ればね。


でも実際は、そんな思惑も下心も、狙いさえ皆無なお子ちゃま達が、只自分達の持っている便利道具を普段使いしただけって言うね。


———……心底、理解出来てないだろうねぇ…お互いに。


だからこそ、私に緊急依頼が回って来たんだけどね。


ははは。

今回、あの子らが使ったあの魔道具達は。

本当に、辺境伯が今求めてやまない位の的を得た様な魔道具達だったんだよ。


スタンピードで傷付いた領地。

まだまだ予断は許されない状況での結界魔道具に魔物避け。

物資を多く運べるだろうアイテムバッグからは、熱々のスープが出て来て…時間停止付きか!?ってなる優れものだし。

ワンタッチで出し入れできるテントは、量産できれば、今いる難民にぴったりの品だしねぇ。


巡り合わせが悪いというか、運が無いと言うか。

タイミングが悪かったね。




「…こんな一手間で返せる様な“借り”じゃあ、無いんだけどねぇ」


だからまあ、ちょっとしたおまけも付けてやろうと思う。


ふふふ。


嘗て、世界最恐とまで言われて恐れられた我が組織……“終焉”。


もうその活動を終えて久しいけれど。


「さて、どこまで効果があるだろうねぇ?」


元ボスとしては、その結果にもちょっと興味津々だったりするよ。






〜レオンサイド〜



御貴族様との交渉決裂後。

2人して豪華絢爛な部屋に押し込められた後は、ひたすら放置で軟禁されていた筈だったのに。


突然、


「お帰り頂いて結構です」


と館から追い出された俺たちは。


この気まぐれがいつまた覆されるかわからなかった為、そのまま猛ダッシュで帰路へと着いた。


———森に逃げ込んだだけだけど。

取り敢えず、追いかけて来れないだろうところまでは行きたいじゃんね。

心理的に。


「グレンさぁ…」


「うん」


「さっき取り出してた手紙って何?」


「うーん…」


…あれも厳密に言えば、父さんからのお助けアイテムだった気がしたんだけれど。


「わかんない。手紙、途中で消えちゃったし」


そうなんだよな。


あの時グレンが突然


「もうこれを使うしか…」


って取り出したのは。


そう言えば村を出る際に父さんが言ってた、万が一の時に出したら良いって言ってた手紙で。


「これに魔力をのせるんだったっけ?」


もうどうして良いのか分かんなくて。


藁にも縋る思いでそれに魔力を通したら。


まさかのその紙が鳥になって、窓から勢い良く出ていっちゃったんだよな。


2人して、ポカーンである。


そしてそれから幾ばくかしての突然の解放である。


「取り敢えず諸々、父さんに問いただすしか無いよな…」


「そう?俺は聞くの怖いけど」


まあ、それはそう。


でもさぁ、やっぱり何をしたのか気になるじゃん。


結局行商人を続けるならさ、あの街にはリターンしなきゃいけない訳だし。

…今回の件で、心バッキバキに折れちゃったグレンがどう言う判断を下すのかは分かんないけどさ。


心がすり減っちゃった俺らの初行商は、最後はちょっと訳分からん感じで幕を閉じちゃったけど。


アストラ村に帰村する道中、以前うちの父さんに助けられたって言う夫婦に遭遇。


このお二人、ちょっと訳あり夫婦さんみたいで、出来れば辺境の田舎村への入村希望らしい。

人数が増えるんなら、村長さんは大歓迎しそう。

皆ご高齢だし。


旦那さんがイチさん。

ちょっと寡黙で神経質そうではあるものの、奥さんへ向ける眼差しはもう本当にアッツアツ。


主に俺らと話してくれる奥さんの名前は、ここら辺では聞かない響きのアズマさん。

この2人も自分らと同じ様な魔道具持ちだったから、思わず街であった事を愚痴っちゃったけど。


やっぱり、魔道具作れる人材は貴重らしく。

普通は他の人が居る場所では隠すのが常識だって聞いて、俺らの迂闊っぷりに落ち込む。


因みに。一部だけだけど、作ったのは旦那さんらしい。

アイテムバッグも持っているけれど、これはダンジョンで運良く拾えた物らしい。

貴重なものだから、普段は普通の大きなリュックをからって誤魔化してるんだとか。


その貴重って言う情報を俺らが知らなかったから問題だった訳で。


「これが御貴族様にでもバレようものなら…監禁された挙句、最悪奴隷にされそうですから」


拾っただけだったなら、殺されて終わりだろうけれど…の追加情報が本当に恐ろしい限りである。


俺らは、単に身内が作ったって情報があったから、閉じ込め方式だったんじゃないかって言われたら………ゾッとしかしないな。


俺ら、マジで危なかったんじゃ無いか?


でも、それなら何であんなにあっさり、解放されたんだろうか。


グレンの言う通り…聞くのは怖いけど。

やっぱり父さんには、きっちり全部説明して貰わないとだと改めて思う。

じゃないと、心配で眠れなくなりそうなんだもん。



アズマさんは話し上手で、道中は思いの外、楽しく過ごせたのは唯一良かった事だったかな。

…旦那さんの目は始終怖かったけど。



———そんなこんなで、今回の旅は終了!


次、があるかは…グレンの様子と、今回の結果次第かな?

どうなるかは、正直未知!




































  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る