第38話 食料供給

 駐屯地を出た後に魔物を飼っている牧場に向かった。

この場所もノースランドを囲っている壁の外にある。

「ここは食用として食える魔物たちを飼育している場所だ」


 そこにはほぼ鶏で尻尾の部分が蛇の頭となっているコカトリス。

体毛や凶暴性がないレッサー・ツインコーン。

そして今まで見た比較的この大陸で多く生息するロックトータスがいた。


「ジョセーヌ様、ここでは食料の産地として、見ての通りコカトリス、レッサー・ツインコーン、ロックトータスが居ます。

それぞれ50万,5万,1万体です」

牧師が話してくれてる。


「そうか、ならすべて殺処分しろ」

「すべてですか!?いったいどうして」

「先日獣人自治領でツインコーンを操り、人を襲わせる魔族が観測された。

魔物を統率する危険な上位種や魔族に進化しないように厳重に管理したとしても外部から魔族が来て操られたら甚大な被害を被る。

ここでもそうやって操られる可能性があるから殺処分だ」



「ですがこれは重要な帝国の食料源です。

獣人自治領との米や野菜を帝国法で決められたレートで取引するためにも必要です。

ただでさえ、獣人自治領の一件で食料供給が不安定化している状況ですので。

それにこれから大規模な戦争になると聞きます。そうなると前線の兵士への安定した食料供給にも用いれると考えられます」


「今は非常時だ。少量の肉でも今までと同じようにやり取りできるようにする。

肉は通常長持ちせんが、氷魔法を使い冷凍すれば長持ちできる。

これを当分の民の食料や戦争時の食料供給として扱える」


「ですがそれではせいぜい一ヶ月しか持ちません」


 ここで、思い切って話に割って入った。

「あのすいません。ロックトータスに関しましては攻撃性がなく、外敵を見かけても防御に徹すると聞きます。そうすれば少しは食料の足しになると思います」

「分かった。じゃあ比較的危険ではないロックトータスの飼育は許そう。

それで少しは安定的な供給ができるだろう」

 ロックトータスは他の魔物とは違って平和的な魔物だ。攻撃を仕掛けても岩の甲羅にこもって防御に徹するだけ。

操る魔族がいたとしても、そこまで脅威ではないと判断してくれたのだろう。



「ですが、他の二種族と比べてあまり栄養価は高くありません。

ほとんど岩で肉として食える部分はあまり、とても今までの需要を補えるほどでは」

「ならば今までより個体数を増やしても構わん。

他二種類にさいていたリソースを使えば何とかならんか」


「分かりました。しかし、それでも3ヶ月が限度だと思います」

「分かった。それだけの期間、国を平常に運転できるのなら大丈夫だ。

魔族から大量の土地を得られれば、周辺諸国から補助金やら報奨金という名目でお金が支給される。

それを使えば、食糧事情は改善する」


「承知しました。ジョセーヌ様あなたを信じております」



 やり取りが終わった後にバンがジョセーヌに話しかけた。

「先ほど、氷魔法を使って肉を冷凍するという話を聞いていましたが、そんな魔法を使える者がいるのですか」

「ああ、実は獣人自治領にいたんだよ。

噂をすれば来たぞ」


 そこには原初の獣人が居た。

前回バンと交戦したものだ。

「はじめまして、レーリエと申します。今後ともよろしくお願いします」


どうやら今回の攻撃は長い間深く考えられた戦略のようだ。準備がいい。

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