第33話 魔導士ジョセーヌ
バンはその後もジョセーヌに距離を詰めて、攻撃を仕掛ける。
近距離だから自分すらまきこみかねない広範囲魔法を使わせることを防いでいる。
今度は地面から岩の杭を出す魔法をした。
バンが距離をとる。その判断は正しいがこのままだと広範囲の攻撃魔法をまた放たれかねない。
私はストーンバレットをジョセーヌに放った。
岩の壁を作り防がれたが、私に注意が向いている間に再び、バンに近距離戦を仕掛けさせるのに成功している。
「こざかしい魔族どもだ」
この方法を繰り返して何とか広範囲の魔法を使わせないでいる。
だが私たちの攻撃も一向にあたらない。
やはり私たちの動きがほぼ完全に読まれている。
相手の魔力量は桁違いに多い。
こっちの方が先にやられる。
「ソーラ。どこにいるのー」
ランの声だ。
私を探しているのか。
迷いなくランめがけてストーンバレットを放った。
岩の壁で防がれた。
出したのはジョセーヌだ。
ランがこの場にいる時点で広範囲の魔法は放たれない。
ならば、ランに標的を向けて相手の魔法のリソースを注ぐのが得策だ。
バンもランへの攻撃に移る。
ジョセーヌも自分を守るためではなくランを守るために魔法を使いだした。
だが防御のスピードも精度も良くない。
遠いランの防衛に使っているからだろう。
ランも攻撃のため大きな岩や風、火の玉をこちらに放ってきたが、こちらが全く動いていないのに当たっていない。あまり精度が良くないのといきなりの展開に動揺しているのだろう。
その後もひたすらランへの攻撃にシフトした。
ジョセーヌがこのままランの防御に徹するのは無理だと判断し、ランめがけて疾風のような速さで飛び込んできた。
ランをつかむ瞬間に私のストーンバレットがジョセーヌに当たった。
だが対して失速することはせずにそのまま遠ざかっていく、そのまま逃げるつもりだ。
「私たちも逃げるよ」
そのまま私たちは十分遠ざかった後に人間に変身して宿に戻った。
私は今サミエラしかいない101号室に来ていた。
「お疲れ様」
「ですが、標的を討伐しきれず任務は…」
「いや、任務はある意味想定以上の成功だよ」
「なぜですか?」
「その話はあとだ。
それより、シャミ―ニア。
その傷を治すことが先決だ。早くこっちへおいで」
この人は治癒魔法がかなりうまい。
「回復をイメージしやすいのは人の中でかなり構成割合の大きい物を扱える者だよ。
例えば水とか血だね。私は吸血鬼だから血についてのイメージはかなりあるからね」
すると今度はジョセーヌがランを抱えてやってきた。
「あれ何でここにソラがいるの?」
「いやー、ソラがですねー。怖いから一緒に寝てくれとせがむもんですから。
私のベットで一緒に寝ることになったんですよ」
「私はそんな…ん」
口をサミエラに押えられた。
今私の顔の火傷は完璧に治療されて他の体の傷は布団で隠している。
「よしよしいい子」
そう言って私の全身を触ってくる。
もちろん、傷を癒すために。
「こわくなーい。こわくなーい」
そう言って今度はハグしてきた。
少しオーバーな気がするが。
「ランどうしてあんな所にいたの!」
「だって、ソラが長い時間いなくなって危ないと思ったから」
私を探してわざわざ燃えている森に入ったのか、何のために。
「なんでそんなことを」
「あなたが心配だったからに決まっているでしょう!」
「ソラちゃんが悪いよ。ちゃんとこっちで言わなかったから」
そう言って軽く頭をたたいてきた。
勝手に設定を作って勝手に起こってくる。理不尽だ。
「ラン。心配でもあなたまで危険に飛び込んじゃダメ。
私を…不安にさせないで」
そう言っているジョセーヌは少し泣き出しながら、ランを抱きかかえている
「ごめんなさい」
そう言っているランも泣いている。
なんだか新鮮な感覚だ。
エルフにとっては家族がこんなにも大切に扱われているのか。
今の私もサミエラに抱きしめられ、全身でぬくもりを感じる。
「ソラちゃんどうしたの」
なんだか、むずかゆい気持ちになった。
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