第32話 原初の獣人
(合流前)
シャミ―ニアさんが陽動を成功させたみたいだ。
あらかたの帝国兵は出払っている。
「貴様何者だ?」
今の俺は下面とマントで顔を覆い、長袖長ズボン、手袋で全身の体毛は隠している。
奴らからしたら俺の尻尾が見えるくらいだ。
持っている剣で切りかかってくる。
それをほとんどスピードを落とさずに避ける。
こんなものに一々構っていたら、任務を遂行するのに日が暮れてしまう。
館の玄関の扉を吹っ飛ばし、侵入した。
このまま標的のいる部屋に。
そう思ったが、二階に向かう階段の方から俺のいる一階の地面めがけて一直線上に氷漬けにされた。
俺はそれを横に飛びかわした。
「反射神経はええなー。おぬし獣人か?」
そこには標的の狐の耳と尻尾をした獣人がいた。
「あなたこそ本当に獣人ですか?
獣人が魔法を使うなんて聞いたことがありませんが」
「わしは原初の獣人じゃからじゃ。
本来獣人は雪山に生息していたが、人がその山を侵略した影響でこんな辺鄙な地まで飛ばされたからのう。
それまでは氷の魔法が使えるものが大半だったが、ここに来てからは徐々に魔法が使えんくなってしまったわけよ」
接近し剣を切りつけるが氷の壁によって防がれる。
まどろっこしい。右腕で殴り氷を砕いた。
相手は驚いていたが、そのまま遠ざかった。
「ほう。やるではないかい。
他の獣人たちと比べても少しパワーが強いわ」
飛び散った氷で相手の衣服が切り裂かれるが、彼女の肌ではなく毛で覆われた腕や足などが見えた。
「元来獣人といえば、毛で体が覆われているものよ。
耳だけとか、尻尾だけとか獣人の片隅にも置けへんわー」
そういう彼女は顔以外の部分のかなり体毛に覆われていることが分かった。
再び剣で切りつけるが腕の部分で防がれた。
防がれた?なぜ切り込めない?体毛が堅いのか。
逆に相手の足でけり飛ばされた。
自分の衣服も一部敗れた。
自分の毛並みがあらわになる。
これだと獣人ではなく魔物や魔族だと思われても…
「あれ―もしかしてあんたも原初の獣人?どおりで強いわけやわ、おぬし」
相手は想像以上に強い。このまま戦っても勝てる見込みはなかった。
離脱するしかない。
「えーもう帰っちゃうのー。
またおいでー」
あんなにのんきな奴サミエラぐらいしかいないんじゃないか。
このまま宿に帰ろうとしたときにニョロが急に俺の方に現れた。
「バン、シャミ―ニアがピンチだ。
森にいるから応援頼む」
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