第9話 赤字校正と修正。

私は赤字の通り直してお姉ちゃんに見せる。

あまりに考えずに書かれた通りにやって、わからないところの意見を求めたら、従姉妹同士の姉と妹ではなく、同じ仕事を生業にする仕事人として、思い切り怒られた。


「翠!お前はなんだ!?ただの機械か!?言われた通りにやって、変だったら赤字を入れたこのアタシ、雨空晴が悪いとでも思うのか!?考えて作業をしろ!お前の中でバランスが崩れたら他の箇所も修正を入れて、付箋なら使わせてやるから付箋を入れて、アタシに見せる時にこっちも直したとキチンと報告をしろ!お前からも提案をするんだ!」


あまりの迫力に泣きそうになりながら、必死に「はい!」と返事をしてマシンに向かう中でも、白井一馬は黙々とマシンに向かうがマウスは動かない。


唸った白井一馬は手を挙げて、姉に「すみません。依頼人として光さんにヒアリングする事は許してもらえますか?」と聞くと、「よし、気づいたな。いいぞ。だが長話の無駄話は時間が減るからな」と言って、テーブルでお茶菓子を食べて「食べすぎると体重くなるのよねー」なんて言っている光お姉ちゃんの所に向かう。


その後も姉は意地悪く「4時だぞー」なんて急かしてくる。


それでも私はなんとか17時には見られる形になった。

白井一馬の方は、名刺が二点とチラシが一面の半分までしか出来ずに唸る。


「すみません!晴さん!僕に連絡先を教えてください!出来たら送ります!お忙しければ何日でも待ちます!校正をお願いします!後はパネルのデザインもやらせてください!」

「ん?いいぞ。だが、翠よりアタシに惚れたとかなら断るからな。10以上離れた男の子とかゴメンだ」


姉は軽口で誤魔化すと、「白井くんはアディショナルタイム。翠が戻るまで続けていいぞ。翠、翠は光とコンビニに行って、また校正紙を2枚出力してこい。戻ったらケーキを食べて、それからもう一度校正してやる」と言ってくれた。


私はまた階段を降りる光お姉ちゃんが気になったが、いそいそと出かける用意をして、「頑張るよ!行こう!翠ちゃん!」と言う光お姉ちゃんを前にすると何も言えない。


コンビニプリントを済ませて戻ると、時が止まったままのように2人の位置は変わらずに、白井一馬のデザインだけは進んでいた。


私の校正はかなり良くなっていて、新たに言われた場所も、「文字の行末と行頭で分かれる箇所が読みにくくなるから、少し気遣いをしてやれ」や、「ここは好みだが、アタシは好かないな」なんかが多い。

最後に「ポートフォリオに落とし込むなら、どうしてこうしたか、いきなりこんなに出来たのではなく、現役に見てもらって意見を貰ったと素直に書け。貰った意見をキチンと反映させたスキルの方が就職先の覚えもいいからな」と言ってくれた。


「記念だ。翠、校正紙2枚持って写真を残そう。今度母さん達に見せる」


そう言って写真を撮ってくれた姉は、白井一馬にも「白井くんも、せっかくウチに来たんだ。赤字だらけの校正紙を持って撮ろう」と言って写真を撮ると、ケーキを食べて解散になる。


お腹空いてるの?と聞かれそうな勢いでケーキを食べる私達、帰る話に光お姉ちゃんが「いいの?4人でご飯とか…」と言ったが、「んにゃ。ユーイチと一緒だって。クリエイターはいいところで手なんて止めたくないんだよ。翠はある程度満足したが、白井くんは1秒でも早く家に帰って、続きがやりたいんだよ。夕飯に誘ったら睨み殺される」と言って笑うと、白井一馬は照れ臭そうに頷いていた。


姉は「校正紙は赤字だけ持って帰って、ポートフォリオに加えな。残りはアタシんだ」と言って笑う。


「いるの?」

「ああ、可愛い妹の成長記録だよ」


そう言われると照れてしまうが、待ってられない白井一馬の圧力に負けて帰った。

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