第4話 あっちがダメならこっちではない話。
川越からの帰り。
少し空気が悪かった。
それは後日色々わかるが、二葉は私について行った五代と、ポートフォリオの為に写真を撮り続けた私に腹を立てた。
これには私も謝る事はしない。
元々ポートフォリオのための撮影であって、川越に行きたい事を聞いた二葉が、自分も行きたいと言い出し、遊びに行くわけではないと言っても着いてきたのに、話が決まると遊びに行く方に勝手に舵を切り、遊びだと言い出した二葉が悪い。
それに五代に関しては、彼女を置いて私の方に行ったことに腹を立てたが、それなら二葉といる事を選んだ三橋に言えばいい。
その三橋だが、帰りの電車で、途中から私と2人になってしまう所があって、私は嫌だったが、三橋は人恋しいのか、「なあ、六木の作るポートフォリオって、パンフレットがメイン?」と聞いてくる。
「そうだよ。三橋くんは?」
「俺は名刺をメインにして、沢山のデザインを用意してる」
三橋は三橋で、小さなデザインを沢山やりたいらしく、色んな店に行くとショップカードなんかを集めているらしく、その説明をしてきて「六木はカード類でポートフォリオはやらねぇの?」と聞いてきた。
「中には載せても、メインにはしないよ。私はそんなにデザインを沢山出せるような自信ないしね」
迂闊にもデザイン論ではないが、就活や思うところの話で、三橋相手にしては話が続いてしまった。
だが、三橋は就活の話がキリ良くなると、二葉と五代の愚痴を漏らしてくる。
「なあ、六木は高校から二葉のダチなんだろ?」
「そうだよ」
「昔から二葉ってあんな感じなのか?」
「あんな感じ?」
「彼氏がすぐできる」
アンタだってそれだろ?
前のヨシノがいなくなって、すぐに付き合っておいて何を言うんだか…。
「まあ、モテるよね」
無難な回答。
話題を変える為に「五代くんとは付き合い長いの?」と聞く。
「あ?コウ?俺達も高校からだぜ。なんでだ?」
「あんな三角関係みたいなのが不思議だった」
三橋はバツの悪そうな顔で、「まあ、コウも願ったし、二葉がいても俺たちの仲は変わんないんだろうな」と言う。
確かに、五代と三橋の仲はいいのだろう。
だが、二葉がいるんだから、それはいつまでも保証されない。
せっかく話題を逸らしたのに、また話題は二葉になる。
仕方なく、嫌々だが三橋の質問には答えた。
「モテてたよ。だって、三橋くんと付き合う前は、一年上のヨシノさんだったし、二葉もよく前の彼氏と比較するでしょ?五代くんも三橋くんと比べられてるんじゃない?」
後は唸り声をあげる三橋を無視するように写真の確認に逃げてやり過ごすつもりだった。
それなのに、それなのにだ。
何故か私が降りる駅に着いてきて、事もあろうか三橋は私に告白をしてきた。
正気を疑った。
何のそぶりもなかったし、あったら身構えていた。そもそも何が何でも近寄らなかった。
それなのに突然のキラーパス。ノールックショット。
「俺たち、付き合わないか?」
「無理。パス」
「何?」
何?じゃねーよ。
なんでOK貰える気になってんだよ?
秒で断った私の正気を疑うような顔で覗き込んでくる三橋。
「あのね?今まで接点ないし、三橋くんはずっと二葉でしょ?今日も二葉といたでしょ?それに私は就活に忙しいの。彼氏なんて考えた事もないよ」
謝らないし、お礼なんかも言わない。
「じゃ。今日はお疲れ」と言ってさっさと帰る。
昔も似たことがあった。
何故か、二葉に振られた男がこっちに来る。
いらん。
お古がどうのと言いたくないと言えば言いたくない。
特に二葉を知る男が、私と二葉を比較してくるのも。
二葉が、元飼い主みたいな顔で「キスが上手い」とかドヤるのを見たくない。
それもあって、友達同士の枠組みのつもりでいても、二葉がグループ内で恋人を作ると、私はそのグループの集まりにも参加しなくするようにしていた。
嫌な気分のままPCに写真を取り込み、ポートフォリオを作ろうとするが、悶々として上手くいかなかった。
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