第2話 歪な三角関係。

新学期。

2年生になればオリエンテーションなんかもなく日常が続く。

授業内容が変わったくらいで、延々とこの日々が続く気がしてしまうが、今年は就活も始まる。


この空気感はヤバい。

油断していると就活が失敗しそうだ。



そんな中、1ヶ月遅れの週末、川越にやってきた。


メンバーは私、二葉、三橋、五代。


あの別れた宣言から2週間後、二葉はグループに戻ってきた。


五代の彼女として。


正気を疑った。

確かに高校時代も同じような事はあった。

初めてではないから衝撃はない。


だがウルトラ面倒くさい事には変わらない。


どうすんだと、二葉と五代はお互いにメッセージを送り合っていてラブラブ。

あとは若いお2人に…。なんて言って2人になる意味のないグループを抜けられるわけもなく、グループを残して3日後、三橋が帰ってきた。


どうかしてるぜ!


思わず部屋でシャウトした。


今までイチャイチャしていた相手が、三橋から五代に代わり、二葉は五代をコウと呼ぶ。

漢字なんて知らん。メッセージアプリには黄とあるから黄なんだろうが知らん。



そして戻ってきたら、学校で話題は三橋から五代に代わっただけで、会いに行く場所も変わらない。


周りからはドン引きの声。

仲間と思われる痛い視線。


慣れても嫌なもんは嫌。

だがまあ、あと一年。

ランチの相手がいなくなるのは面倒くさいし、提出物を2人で出した方がいい事もある。


そんな中、二葉は「コウと付き合った記念もあるし、行けなかった川越に行こうよ」と言い出した。


行けなかった?

行けなくしたの間違いだろ?

呆れてしまう。


「2人の邪魔はしたくないから行って来なよ」


川越には行きたいが、付き合いたてのラブラブイチャイチャは見たくない。

言い方は悪いが、二葉の恋愛はお下品だ。


下品オブ下品。


2人きりでお下品になって男を求めるなら、それは何も言わない。


家で誰も見てない中、大口開いて塊肉を手掴みで食べていても、外で皆で食べる日に、ナイフとフォークでキチンと切り分けて、ひと口サイズの肉を口に運んでくれれば、やっていける。


だが、二葉はこれまでの恋愛遍歴、恋多き女としての経験で汚れてしまっている。


最初の頃に付き合った男の影響で、人前で堂々と甘えて抱きつき女の顔をする。

別の男の影響で、人前で堂々とキスをする。

高寺武史の影響で、人前でも身体を弄り、弄らせる。


セックスまでは知らない。

あの後は、人の家や個室密室で集まる会には参加していない。

まず最初に断っておいて店を聞く。

そして個室でなければ、2日前くらいに参加するようにしている。


とにかく一日中、二葉と五代のイチャイチャは見ていたくなかった。


「大丈夫。アッくん…三橋くんも来るから行こうよ」


おいマジか?

頭狂ってるのか?

二葉も三橋もどうした?

いや五代もだ。


なんだ?

変わらない友情とか言うのか?

愛から生まれる友情か?

そんなものがあるのか?


私はクラクラしながら、「ね?3人だと気まずい時とかもあるから、翠も来てよ」と言われ、川越に行きたかった事もあり、最終的には「うん。行くよ」と答えていた。



・・・



やってきました川越。

小江戸な景色が素晴らしい。

ポートフォリオに使いたいイメージに沿った写真を撮り、随時確認していく。


そんな後ろでは二葉は何も気にせずに五代に甘え倒し、その癖、三橋にもキープしているかのような動きを見せる。


まるで、前に見たイケメン男子を左右に配置して、決めポーズで呟く女芸人のようだと思う。


だが、思うだけで写真を撮ったりはしない。

仮に撮れば撮影係になり、ポートフォリオ用の写真が撮れなくなる。


「熱心だよね六木さん」

「本当だよね。翠、まだ4月だよ?」


五代、二葉のコンボが鬱陶しい。

まだじゃない。もうだ。

私と二葉の決定的な違いは、私には歳の離れた従姉妹に姉のような人がいて、姉の言う通り、油断していると、あっという間に就活に乗り遅れる。


「まあ、アタシたちの時ですら倍率は悪くなかったから、4月からキチンとやれれば平気だよ。専門だと学校次第で大きく変わるって言われたし、アタシは未経験の大卒だけど、アンタは学べている専門卒。一長一短。頑張りな。でもアンタもこっちに来るなんてね」


高三の正月にお婆ちゃんの家で会った姉はそう言って笑っていた。

今も忘れない。


キチンと就活をやり遂げる。



今まで通りなら、そこの場所にいた三橋は、不服そうな顔を必死に隠して、愛想笑いや「俺たちも作らねえと間に合わなくならないか?」なんて言っている。


どうしてこの場にいるのだろう?

そして酷く歪で浮いている。


失恋の傷とか痛みとかよくわからない。

痛いなら、来なければいい。


もう笑ってしまいたくなる。



昼食にちょっと良さげな和ランチの店に入る。

4人なので4人席に通される訳だが、よくある、2人席は壁に付いたソファで、残りは椅子席のタイプ。


私はさっさと椅子席に座ると、私の横には誰も来ない。

向かいのソファ席、二葉の両サイドに五代と三橋は座り出し、二葉はご満悦で笑顔。


私は堪えきれずに笑ってしまった。


「何?アカネ、ソファが良かったの?」


五代は二葉の隣ではなく向かいに座り、不貞腐れる二葉の手を取って、「向かい合わせもいいものだよ」なんて余裕を見せている。


余裕ぶられて立場のない三橋は、不貞腐れ顔で私の前に座るが意味不明。

不貞腐れるなら来なければいい。

それなのに来て、癖で双葉の横に座って恥をかく。


だがまあ二葉はなにもかわらない。

食べたサラダが美味しいと言って、五代の口に入れてから「仕方ない。三橋くんにもあげよう」と言って三橋の口にサラダを放り込む。


歪な三角関係間接キス。

見ていて痛々しい。


五代は少し不満気だが、何も言わずに笑い飛ばしていた。

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