第13話

何故だか装備が整った俺はギルドへ向かう。金を稼がなくてはいけないからだ。


昼前辺りのギルドは閑散としていた。粗方、依頼は冒険者に行き渡り、冒険者はせっせと仕事に明け暮れているのだろう。


誰もいないので、受付に行ってみるとお姉さんが机に突っ伏して寝ていた。


「すいませ〜ん」


ビクッと体が震えた。なんか耳が赤くなって来た。ガバっと上半身を起こし、両手でさささと顔の状態やらを整えていく。


「いらっしゃいませ、ビルフォートのギルドへようこそ!何のご用でしょうか?」


「ぼ、冒険者登録をお願いします」


「はい、冒険者の新規登録ですね、こちらが申請書となります。注意書きを良く読んで頂き、お名前を書いてください。面接の準備が出来ましたらお名前をお呼び致します。登録料は10,000ベリーになります。」


「あ、ありがとう」


俺は申請書を見たが良くわからなかった。大きな空欄があったので、ゆうやと書いておく、10,000ベリーと一緒に受付嬢に手渡した。


「ありがとうございます、左奥の階段手前の扉が面接室になっております。準備が出来次第お呼び致しますので、椅子にお掛けになってお待ち下さい」


俺は左奥へ進み並んである椅子の一つに腰掛けた。女の子は苦手なので、ホッとしている。空気になろ。


すると受付の奥の事務所らしき扉が開き、職員が出入りする。「ネネちゃん大丈夫、変わるね」「ありがとう、もうそんな時間」「うん、なんかてんやわんやだよね」「あの新種のモンスターね」「そ、そ」「どうすんのかしらね」「まだ引っ張りそうよ」「なんでなの?」「上の方で揉めてんのよ」


いろいろ聞きたくない情報が俺に届く、俺は空気、関係ない、気にしない。


「ゆうやさん!お入りください」


やっと面接の準備が整ったようだ。案内の女性に呼ばれ、室内に入るとドアが閉められる。面接官の机が中央にあり、ポツンと事務的な椅子が置かれている。多分俺の座る椅子なんだろう。

面接官はすでに座っており、俺の様子を伺っている。魔法使いの婆さんのようだ。背はかなり低い。帽子はしておらず、引き摺るようなマントに身を包んでいた。モノは良さそうだ。


「俺がゆうやだね」


「ああ」


「歳は?」


「16」


「どこから来たんだね?」


「あの森の向こうから…」


「冒険者になりたいのかい?」


「ああ」


面接官の魔法使いの婆さんは、徐に水晶を取り出して、覗き込む、「まあ、汚れちゃいない、が、ちょっとズレてるね。使いモノになるかの?」婆さんは俺に水晶を差し出して、「その水晶を触ってごらん」俺は言われるがまま水晶に両手で触れた。


水晶は明るく光り、やがて元通りの水晶に戻った。


「…ゆうや、…ゼロだね、職業無し、当たり前か、スキル…無し、ランクはFだね。…呪い!盾か⁈ゆうや、お前は一人でこの街まで来たのかい?」


「森ではいろいろ助けてもらった」


「誰に」


「ケビンとか言ってた」


「ケビン…」


「森で別れたが、盾を貰った。呪われてたけど」


「盾を見せておくれ」


「いいけど、外れない」


「ああ、いい」


婆さんは、俺の呪われた盾を見ている。俺は自然と婆さんを見ていた。


{ビアンカ・ビルフォート}


あっ!やばいヤツだ。俺はいきなりの大物の登場に焦るが間に合う筈もない。


「どうした?」


「いや、いい香りがして…」


「なんじゃ、ませエロガッパ!」


「違うし!」


「男は皆んなそうじゃった。ワシも若い頃は…」


「ちゃうちゃう!」


「良い良い、お前は見習い冒険者じゃ、街の外には出るな、雑用して暫く経てばランクを上げてやる」


「金を稼ぎたいのだが」


「お前の裁量次第じゃ、ほれ、このギルドのダクを持っておれ、無くすでないぞ!これで終わりじゃ、出て行け」


なんか納得しないが、時間切れのようだ。俺は面接室から出た。雑用ってなんかあるのか?掲示板を見てみる。


一方、ビアンカの面接室に入れ違いで職員が入って行く、扉をきちんと閉めると「ゆうやから目を離さないようにするんじゃ、ヤツは何か隠している」ビアンカの指示が食い気味に飛ぶ。

「…スパイには見えませんが」

「確かにな、だがヤツは霊詠草を嗅ぎとった」

「只者ではないと」

「そうじゃヤツはきっと…、他の者には気づかれぬように」

「はっ!すぐに手配したします」


その頃俺は、

「庭の手入れ5,000ベリー、ドブ攫い7,000ベリー、手紙の配達2,000ベリー、いろいろあるんだな」


「手紙の配達がいいぞ、知り合いが増えるし、街にも慣れる。チップも弾んでくれるカモな」


「ああ、ありがとう。そうだな、先ずは配達でもするか!」


「盗難には気をつけろ!」


「お前もな」「「ははは」」


受付嬢が遠目に見ている。若干引き気味だ。配達の依頼を受ける。俺の様子を見ていた受付嬢が何だか呟いているが、気にしない。


「ギルドからジョナサン商会への納品だな、ジョナサン商会からも荷物が出る事もあり。了解した」


契約書を交わし、裏の物品倉庫から荷物を受け取る。後はジョナサン商会に荷物を渡しサインを貰えばいい。


俺の初仕事だ。

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ぼっちの霊能者の俺が異世界転生したけど結局誰も信じてくれないのでハーレムでも作って好き勝手に生きていこうと思う さんすけ @rirero7

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