第12話

「ゴードンの武器防具屋」


俺は一言呟き、店の外観を眺めた。ケビンの言う通り洒落っけもなく、実務一辺倒の面構えだ。しかし一際目立つフルプレートの鎧と大地を刺し貫くかと握られたバスターソードの放つ、最大兵器のオーラが店に入る客を尻込ませる。


「仁王像かよ」


命までは取られまい。俺は覚悟を決めて店の中に入った。


ゴードンらしき男の視線が店の奥から刺さる。軽く会釈をしたような感じを出し、店内を物色する俺を、挨拶など無意味だと言わんばかり眼光で更に逃すものかと追ってくる。俺はあの鎧の陰に隠れるようにゴードンの視線を断つ、しかしゴードンも負けじと首を伸ばし、身を乗り出しながら追跡を諦めない。


「ならば」「ぬ!」「これで」「ふん!」「今だ!」「甘い!」「こなくそ!」「まだまだ」「後ろだ!」「何!!」「お前の負けだ!」「おおお」


すっかり騙されたゴードンは素直に負けを認めた。


「そこで待っておれ!」


ゴードンは何食わぬ顔で店の奥に消え、またすぐに俺の前に戻って来た。ゴードンのキズだらけで丸太の様な腕には丈夫そうな革鎧とブーツとマントが抱えられていた。


「着てみろ」


俺は見よう見まねで何とか来てみると、何故か?サイズはドンピシャだった。ゴードンは緩みのある箇所を締め上げる。するとまるで鎧を着ているのを忘れてしまうかのように更に動き易くなった。ブーツもマントも同様である。


「15万だ」

「マントだけでいい」

「餓鬼が俺を怒らすな」

「…、」

「月末に必ずここに来い!鎧を見てやる」

「…ありがとう」

「ケビンは繋いだんだな」

「ああ、ここを一番にと」

「…そうか」


ゴードンは振り返りもせず店の奥に消えた。金どうしよう⁈何も払ってないや。

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