第7話

盾の練習をひたすらしているのには訳がある。


そうゾンビマンから借りた盾が呪われていたからだ。盾は俺の腕と一体になったかのように何故だか離れてはくれなかった。


それならそうと前向きに盾を使いこなせるように練習しているのだ。


「1、…2、…3」


盾を上げ、相手を引き付け、弾く、ただそれだけをひたすら繰り返している。


体重の掛け方、重心のバランス感覚が大切だ。型を繰り返し、ゾンビマンから実戦さながらに推しあいっこする。


そのゾンビマンだが、ケビンと言うらしい。ビルフォートの街の出身で、教会の孤児院で暮らしていたそうだ。


ケビンは自分の盾をどこからか調達して、俺の練習に付き合ってくれている。身の回りの世話から、街の話、狩の仕方や、戦闘まで、幅広くなんでも教えてくれるありたい奴だ。


なので、俺が死にそうになり、動けない間、外敵から守って、看病までしてくれた。感謝しかない。


だから俺も泣き言はなるべく言わず、懸命に練習をしている。


しかしケビンはスパルタなところがあり、痛みに鈍感で馬鹿なところがあり、少し臭い。ゾンビマンだからだ。


朝の日課の型稽古が終わり、狩も兼ねた戦闘訓練の始まりだ。


ゴブリンが3匹いた。皆んな槍で武装している。もちろん俺達も鎧は無いが剣と盾を装備している。ゴブリンは食えないから戦闘の訓練になる。これはゾンビマンを除き俺の初戦闘だ。


緊張している俺を置き、ケビンは散歩するかのような気軽さでゴブリンに近づき、ゴブリンが身構え前に一匹を殴り付けた。剣使わないんだ⁈槍を突き出すゴブリンを素早くかわし、更に近づくと、剣の柄をゴブリンの頭に叩き込む。そして最後のゴブリンを捕まえ齧り付く!


まったく参考にならなかった。


「馬鹿!!俺の分!」


「あっ!ごめんよー」


何が戦闘訓練だ。虐殺である。頭を潰されたゴブリンから湯気のようなモノが立ち昇り収縮し、塊となった。これが魔石!!異世界感動!


「これ魔石だよね!」


「ああ、500ベリーくらいだよー」


「そんなモンなの?」


「間違いないよー、ほかのゴブリンもさっさとやっちゃってよー」


「ああ」


初めて殺生は緊張する。俺は緊張を悟られぬよう一思いに短剣をゴブリンたちに突き立てた。


「初めてだろ?たいしたモンだね、どうレベル上がったかよー?」


「よし確認するね」


俺は集中して、掌を見る。


➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

安達夕哉 16歳 日本人

L0 0/10 F

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「ん?、変化してないだと!パワーレベルリングは無効とか?」


「どうしたよー?レベル上がってないのかよー?変な奴」


「レベル0のまんまだよ」


「ちょっと待てよー!レベル0ってなんだよー。聞いた事ないよー」


「え!うそ」


「普通レベル1からだよー。そこから1〜2匹やれば大抵レベルが上がって、職業を選ぶんだよー、初めてって聞いておかしいとは思ったんだよー。何者だお前はよー!」


「何者って、…俺は」


「…」


「お前になんか吸われて、おかしくなったんじゃね」


「うっ、…ま、まあいいか、100匹くらいやれば上がるかもしれないしよー」


「ああ」


「…地道にやっていくしかないよー」


何故か俺は、ゴブリン如きではレベルが上がってくれないらしい。まったくこの世界はズレている。それにレベルが上がれば、職業選択が可能のようだ。これは楽しみな事が増えた。


「なあ、お前の来た国の話しを聞かせてくれよー」


「俺の国って、スーパーヒーローがいて、剣から斬撃が飛んで、悪者をやっつけるんだ。(もちろんアニメの話しだけどね)」


「ふーん、それはすごい事だよー、俺達下っ端の冒険者達からしたら神様みたいなもんだよー」


「俺も憧れてたさ」


少しの嘘を言ってしまった為、引き返せなくなった俺は、適当に思いつくアニメの話しをして誤魔化した。


「すげ〜よ〜、スーパーサイヤ人はよー、コレなら俺にも出来るかもしれないよー」


「ああ、諦めた時が試合終了さ」


「そうだよー、確かにそうだよー、俺やってみるよー」


そういうとケビンは静かに目を閉じて、自分の輝きを感じた。


「これだよー、俺にも見えるよー」


「そうだ、その輝きをもっともっと感じて、大きくするんだ。そして聖なる炎に変えて燃やすんだ」


「おお!眩しいよー、この輝きを力に変えるんだよー、燃えろよー、教会から見える朝日のように燃えるんだよー」


ケビンは何故だか⁈輝き出して、聖なる炎に包まれた。


「おお、すごい暖かい、俺もスーパーヒーロー仲間入りだよー、ん〜、熱い!!熱いんだよー」


ケビンは聖なる炎を纏い、悶え苦しんでいる。


「やべー」


「助けてよー、ゆうや、助けてよー」


ケビンは俺にすがり付き、助けを求めてくる。しかし俺も何か出来る訳も無く、ただ呆然としている事しか出来ない。だが不思議と聖なる炎は熱くは感じなかった。


「ゆうやー」


ケビンは物凄い力で俺の両肩を掴むといつかのように俺の命を吸い込みにかかる。


「や、やめろ!!」


俺は風邪の時の寒気の何倍もの悪寒を感じながら耐えるしか無かった。


ケビンことゾンビマンは聖なる炎で焼かれながら回復し続け、俺はまた死にそうな思いをしていたが、ある程度のラインに来ると別のエネルギーを吸われているようだった。


やがてケビンの炎は収まり、俺を解放してくれた。ケビンはまたちょっと臭く無くなった。

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