第6話

「1、…2、…3」


俺は今、永遠と盾の使い方を教わっている。シールドバッシュと云うスキルに繋がっている大切な練習だ。そう俺を見事に吹き飛ばしてくれた技である。盾を上げ、引き込み、弾く。リズムを感じながら体に叩き込んでいる。


指導をしてくれているのは、ゾンビ改め{ゾンビマン}さんだ。結構気のいい奴で、いろいろ世話を焼いてくれる。


どうしてこんな事になったかと云うと、ゾンビマンさんは俺と会って人間だった時の事を思い出してしまったらしい。あの時の事を思い出すと、兎に角腹が減っていて、飢えで苦しかったので、何も考えられず、ただただ彷徨っていたそうだ。土を食っても草を食っても肉を食っても満足出来なかった。だって腹に穴が開いているのだもの!そんな時、偶然俺と遭遇して、襲いかかった。すべて喰らい尽くそうと云う衝動しか無かった。命を頂こうではなく、命も頂こうとした。戦闘はあっけなく終了して、喰らい付こうとしたら俺と目があった。命の輝きがあった。そのオーラのようなモノが美味かった。求めているモノだった。夢中で吸った。癒ていく、ただ癒ていく、泣けないのに涙が出る。「ひ、ひっ」話せないのに話せるようになる。浸っていたい。このままこうしていたい。その時、世話になっていた教会の孤児院が見えた。そこで働くみんなの姿。孤児院を任されているマリアさんの姿。大好きだった。言えなかったけど。俺が冒険者になって恩返ししたい。そしていつかはマリアさんを幸せにしたい。


そこで気がついた。思い出したのかもしれない。人間だった時の記憶を。


この吸われている奴が、なんだか愛おしくなった。有難いと思った。感謝した。


自然と抱きしめてしまう。


コイツは死んでしまいそうだが、ごめんなさい。許してくれ、愛しています。


何か他の場所と繋がってしまった。コイツはストローの様で、吸っても吸っても生きている。何を吸っているのだろう?そう気がついた時、変わった。


ゾンビマンになったそうだ。



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