第8話

「月牙天衝!!だよー!」


ケビンは巨大なオークを脳天から真っ二つにした。


「すげ〜な」


「やっぱり俺は一護があってたんだよー」


「そ、そうだな」


ケビンはお気に入りの技が見つかり上機嫌だ。余り俺の戦闘訓練には興味は無いようだった。始めのウチは失敗も多く、よく俺の命を吸い込みに来た。俺も逃げるのだが、どうにも捕まり、命を吸われる。死ぬ事は無いのは分かっているのだが、あの悪寒はなかなか慣れるモノではない。


「ゾンビマンって、凄い強いんだね」


「なんだよー、ゾンビマンって?」


「えっ、ゾンビマン知らない」


「初めて聞いたよー、ゾンビはゾンビだよー」


「そ、そうなの?だって、俺の命吸ってさー、怪我も体力も回復しちゃうし、必殺技もマスターしたじゃない」


「普通のゾンビは肉食だよー、俺もお前以外は肉を喰らうんだよー、お前は命が美味し過ぎるから、命を吸っちゃうんだよー」


「そうなのか?」


「それに食べたって、体力は回復しないと思うよー、内臓は腐っているからねー」


「なるほど、ゾンビマンが特別な訳ね」


「お前に会って、俺は何倍も賢くなった気がするよー、出来ないと諦めた事にも挑戦したくなったよー」


そういうケビンは俯き、少し寂しそうに感じた。


「俺はビルフォートに行ってみようと思う。ケビンもどうだ」


「俺はゾンビだからこの森から出られないよー、街にはモンスターへの結界がある筈だしよー」


「そうか、…そうだな、とりあえずこの盾の呪いをとってもらわないとな」


「マリア、…街の教会に行けばなんとかなると思うよー」


「ああ、お前の初恋の人だな」


「ブー!!そ、そんなんじゃないよー、お前、俺の事なんか知ってるのかよー」


「命の取り合いを何度もした中じゃないか、お前の事は良く知ってる」


焦りまくるケビンを見て和む、そうか、街に行けば呪いも解けて、レベルアップの謎のヒントくらいはわかるかもな、ケビンの事も誰かに相談したいし、ビルフォートを目指そう。


この森にはもう軽く一月はいると思う。金は無いが魔石は沢山ある。いろいろ話しは聞けて、情報も集まった。ケビンとの別れは淋しくはあるがそろそろ潮時かもしれない。


「助けて!!、誰か!助けてくれ!!」


微かに悲鳴が聞こえる。ケビンの姿はもう無かった。


「月牙天衝!!だよー!」


方がついたようだ。


ケビンは有り余るパワーで人助けをしている。ヒーローの使命なのだそうだ。いい奴だ。


怪我をして無いかが気掛かりだ。俺を当てにして追いかけ回すからだ。最近はめっきり無くなったが、抜けたところもあるので油断は出来ない。


無事帰って来たケビンは無事なようだった。二重に嬉しい。これって幸せな時間なんじゃないかとしみじみ思う。


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