第5話
あぁ、大声なんで出すんじゃ無かった。
なんか森が騒いでいる。
とりあえず持ち物を確認するが、服以外、使えそうなモノは何も無かった。
その辺のボッキレを手に取り、木々の間を隠れながら、適当に進む。
今は昼頃だろうか?森は暗くなる様子はない。その分明暗ははっきりして、木々の影は暗い。
影に潜みながら、影と同化するように、音もなく、進み続ける。
誰かいた。
…スズ、…スズ。
一定のリズムで歩いてる。
俺は暗闇から目を凝らし、そいつを見る。
{ゾンビ}
初めての出会いが死者とは俺らしい。
ゾンビは短剣と盾、外れそうなボロボロの鎧を着ていた。
死者に容赦は不必要だが、勝てるのか?もう少し様子を見てみる。
ゾンビはゆっくりと近づいてきているが、何か目的がある訳ではなさそうだ。
俺は木々の間の暗い茂みの中で息を殺す。
あと数歩という距離で、ゾンビは確実に俺を認識した。短剣を振り上げ、威嚇しながら近づいて来る。
そして俺の首筋辺りにおもっきり短剣を打ち込んだ。
俺の首と胴体が別々になったかのような幻影が浮かぶ。
バァーン!
木に深々と減り込んだ短剣は、もうこの戦いで役には立たないだろう。
「やはり馬鹿だな、周りが少しも見えていない。生き物のオーラだけを見ているような感じか?」
武器を使えなくした状況で、こちらが優先だ。ボッキレを目玉か口の穴に捩じ込んで、首をもいでやる!
俺はゾンビの顔を目掛けて、下からジャンプした。
ダァーン!!
ゾンビは冷静そうに、少し踏ん張り、俺を引き込んでから左手の盾でかちあげた。
伸びたカエルのように俺は空中を漂い、そういえば盾もあったなぁ〜、とか思う。
数メートル飛ばされて、茂みに刺さった俺は全身が痺れていた。動けない!
ゾンビは口を開けながら、一目散に俺を食らおうとやって来る。完全に餌になる未来しか見えない。
お互いが目を見開いたような状況、ゾンビの両手で俺の肩は捉えられた。そして当然ゾンビはたまらなく臭い。
「ウッ、クサ、な、なんだ、吸われる!!」
俺の中の命だと思うモノが失われていくのがわかった。ゾンビは俺を抑え、口から俺の命を吸い込み続ける。クソ!ここまで来て何も出来ず死んでしまうのか?
そして暫くたち、
ゾンビが笑った気がした。
「ひ、ひっ」
ゾンビが喋った。ゾンビの悪臭が少し薄らぐ、腐敗した皮膚が再生している。俺の生命エネルギーを吸い取り、ゾンビは回復している。
俺は薄れゆく意識の中で、ゾンビの様子が変化している事がわかった。しかし以前として、状況は変わらない、永遠と吸われいる。もう死ぬかなってほど吸われもまだ俺は生きている。
ゾンビに抱きしめられる。こんなにも肉付きが良かったかな?
どのくらい時間が経ったのだろう。永遠とも思われた抱擁の末に、ゆっくりとゾンビは俺の両肩を手を置き、離してくれた。
ゾンビの顔が見えた。
{ゾンビマン}
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