第14話 vsデカコスモロイド

超能力でしずかと一緒に空を飛びながら、他の奴らを探す。

「みんなどこ行ったんだろうな?」

「みなさんもご主人様と同じように、小さいコスモロイドを相手してましたから、もうじき合流できるはずです」

「そうか。楽しみだな」

 巨大コスモロイドに近づくごとに小さな点のようなものが見え始める。

 なんだと思って近寄ってみると志保たちだった。

「全員、集まったみたいだな」

 大吾が俺たちを見回して呟く。

「なあ、大吾。俺たちはどうやってアレを倒せばいいんだ? 俺には倒し方なんて皆目見当もつかねえよ」

「この教官を頼りにしとけっての。オレがパーフェクトな倒し方をお前らに伝授してやるからさ。大船に乗った気でいろ」

胸を右手でドンと叩いて、片目でウインクする。

どうやら、相当自信があるようだ。

「まず一人が囮になる。それ以外の四人がサイコキネシスの多重掛けでどでかい穴を開ける。それでコスモロイドを倒すって寸法よ」

「なあ、それ誰が囮になるんだ?」

 俺が質問すると大吾が俺を真っ直ぐと見る。

「お前に任せたぜ、相棒」

「みんな、大吾が囮になってくれるそうだ。俺たち四人でサイコキネシスを一点に奴に浴びせよう」

「ちょ、ちょっと待ってって、なんでオレなんだよ」

「言い出しっぺの法則。それにこの中じゃ、エアスイミングが一番得意なのはお前だろう? サイコバリアだって、お前の方が得意なんじゃねえか?」

 エアスイミングの訓練で大吾は俺たちの中でぶっちぎりで上手かった。

 みんな大吾について行くのに必死だったし、こいつ以外に適任なんていない。

「まあな。オレってばできないことないし」

「じゃあ、お前しかないよな。頼んだぜ、囮役」

「だからって、囮役ってのはなーんか複雑なんだよなぁ……。まっ、俺にしかできなさそうだからいいけどよ」

 不服そうに唇を尖らせるも大吾はなんだかんだやってくれるみたいだ。

 まっ、こいつ以外に適任なんていないだろう。

「そういや、あのロボットにも宇宙人は乗っているのか? 小さいのには宇宙人が乗っていたけども……」

「いや、あのデカいのには乗ってない。あれは他のロボット共と違って、破壊に特化しているからな。探索用のロボットと違って宇宙人すら乗ってない」

「あんな光熱液浴びたら探し物も壊れそうなもんだけどな」

「そうならないためにあのデカいカメラがついているんだろ。アイツは無作為なようでいて、ちゃんと壊すものを選んでいるんだ。あの光熱液で溶かすものを」

 なるほどな。

 たぶん、あのデカいコスモロイドはパラレルスフィアを探すために邪魔な敵を排除するためだけのロボット。探すんじゃなくて、敵を倒すためだけのロボット。だから、人を乗せる必要すらないんだ。そういうのは小さいやつに任せればいいからな。

 囮にして攻撃役。それがあのロボットの役割なんだろう。

「なあ、あのデカブツに弱点はないのか」

「一応、あのデカいカメラがそうなんだけど、なかなか近寄らせてもらえないんだよな」

 あいつについている緑色のレンズに覆われたカメラか。

 あそこを破壊すればたしかに機能停止しそうだけど。

「あの砲台が近寄らせてはくれない、か」

「わかってきたじゃねえか。だから、オレが囮になる。そんなに長持ちできるかわかんねえから、四人で早めに頼むぜ」

「わかった。俺たちに任せろ」

 大吾はコスモロイドの前まで行って、手をたたき出す。

「へい、鬼さんこちら。手の鳴る方へ」

 コスモロイドが大吾の方を向き、その長い前脚で掴みかかろうとしてくる。

「おわっと」

 大吾が空を飛びながら、鋼鉄の前脚をすり抜けていく。

 脚で掴めないと見るや、砲台を向ける。

 他のコスモロイド達にはないソレは下部からまるでインクを宙にぶちまけたかのように光熱液を放出する。大吾はすかさず両手を使って、サイコバリアを全身に張る。

 青い光のバリアで全身を球のように包まれた大吾は光熱液を浴びることはなかった。

 ああすれば俺もあのロボットの光熱液を喰らわずにすむのか。

 っと、感心している場合じゃないな。

 大吾が囮になっている間に俺たちは俺たちでコスモロイドにサイコキネシスで攻撃しないと。

 他三人に目配せして、コスモロイドへと近寄る。

 四人で両手を突き出して、サイコキネシスをかける。

 四重のサイコキネシスが緑のレンズを割る。

 よし、この調子だ。

 そう思っていたのも束の間、こちらをコスモロイドが振り返った。

「全員、散れ!」

 指示を出して、みんなに逃げるよう促す。

 砲台が俺の方を向いてくる。

 マズイ。このままじゃ、骨まで溶かされる。

 咄嗟にサイコバリアを張り、全身を覆おうとする。

 無情にも間髪入れず光熱液が放射される。

 駄目だ、間に合わない。

 そう思っていると腕をグイッと引かれる。

 それまで見ていた光景が一瞬にして変わる。

 なんだ? 何が起こったんだ?

 気付けば俺はコスモロイドの反対側にいた。

「大丈夫ですか、ご主人様」

「しずか! 今のどうやったんだ?」

「言ったじゃないですか。瞬間移動が使えますと」

 それを聞いた瞬間、俺はある作戦を閃いた。

「なあ、しずか。その瞬間移動ってあとどれくらい使えるんだ?」

「自分でも限界はわかりかねます。ただ、それなりに使えるとしか……」

「じゃあ、それに賭けてみるとするか。しずか二人でアイツをやっつけるぞ!」

「いえすです。ご主人様」

「瞬間移動でアイツの目の前に近寄ってくれ。そこで二人で一緒にサイコキネシスをぶつけるんだ」

「――ハッ、そういうことですね、ご主人様」

 しずかはどうやら俺の意図を理解してくれたようだ。

 すぐさまコスモロイドの近くへと飛ぶ。

 視界が一瞬で切り替わり、目の前にレンズの割れた巨大なカメラが現れる。

 俺はありったけのサイコキネシスをコスモロイドへとぶつける。

 しずかも俺と同じように手を出し、コスモロイドにサイコキネシスをぶつけた。

 二つの超能力が合わさることによって、いつも以上のパワーが出る。

 カメラのレンズが割れてが徐々に凹み始める。

 すかさず反撃とばかりにピンクの光熱液が放射される。

「しずか、光熱液の下に瞬間移動しろ!」

「いえすです、ご主人様」

 瞬間、またしても視界は切り替わる。

 光熱液が俺たちの頭上の上に――。

「よし、しずか。俺と同じようにしろ。サイコキネシスでアイツの光熱液をアイツ本体にぶつけるんだ。サイコキネシスで押し返しちまえ!」

「はいッ!」

 再び、二人の超能力による組み合わさった二重の力が光熱液をコスモロイドへと押し返される。ピンクの光熱液がカメラに降りかかり、あっという間にどんどん溶かしていく。

 球体の三分の一ほど溶かしつくし、それが中のメインコンピューターにまで達したらしく、コスモロイドは機能を停止した。

「やったぜ!」と俺がガッツポーズを決める。

 喜んでいるときに急に何者かが抱きついてくる。

 って、しずかじゃねえか。どうしたんだよ、急に。

「やりました、やりましたよ、ご主人様」

 初めて会った時はロボットみたいな無感情な奴だと思っていたけど。なんだよ、しずかもこんな風に喜ぶこともあるんだな。

 にしても、大分満足したな。

 超能力をフルに使ったせいか頭も少し痛い。

 古代人から話を聞いてから帰るとするか。

「しずか、悪い。俺はさっきの古代人に会いに行く。だから、みんなにはちょっと用事を思い出したから後で行くって伝えといてもらえるか」

「いえすです。祝勝会開きましょうね、ご主人様」

 笑顔を作ることに慣れなていないせいか、微かな微笑みしか浮かべられないしずかは実に愛らしかった。

 これが妹じゃなかったら、抱きしめてプロポーズしているかもしれない。

 というか、こいつこんなに可愛かったっけ?

 しずかへと伸ばしそうになる手を抑えて、さっきの古代人のところへと向かう。

 もう意識を覚ましていることだろう。

 あいつには聞かないといけないことが色々とあるんだ。

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