生い立ち
「なっ・・・ここはなんだ!?ここが宿泊施設というのか!?てっきり冒険者ギルドのような場所かと思いきや・・・いや、そもそもの店の者が見当たらないが!?」
「もう!少しくらい荷物持ってよ!ここは何もない古〜いラブホ!本来なら男は店の女を呼ぶ事にしか使わないホテルよ!けど、安いの!誰にも会う事ないし、話するにはもってこいなの!本当は良いホテルでも良かったけど、おじさんとの関係を聞かれそうだから辞めたの!」
「う、うむ。こんびになる店にも驚いた。いや、驚きすぎて我は入れなかった。が、ここは素晴らしい。これは王宮でも王族に連なる者しか使われていなかった布団ではないのか!?」
「おじさん本当にどこから来たわけ?スマホに驚くし、お金無いし、コンビニにはビビって入らないし・・・あーしはそっちの方が驚きなんだけど。
それとはい!これ!質屋に流したらちょうど100gだって!間違いなく金だって!今日は1g¥15000円だったらしいから150万よ!
半分はあーしが貰うけどいいよね!?これがおじさんの分!」
「おぉ〜!これはあのいちまんえんではないか!これは銭だったのだな!紙幣とは我が国でも聞いた事、話にすら出た事がない!これはこの国の兵で言えば月給で言えばいくらくらいなのだ?」
「え?じえーたいの給料?知らない!ちょっと待って!う〜ん。調べたら20万くらいだって!だからおじさんに75万渡したから3ヶ月半くらいの給料かな?」
「おぉ!そこそこになったのだな!やはり、金は世界は違えど希少鉱石という事なのだな!その袋のような物はなんなのだ?カシャカシャ言っているが?」
「だ!か!ら!コンビニで買ったあーしとおじさんの夜食とお酒!話すんでしょ!?友達との約束も断ったんだから!その代わりおじさんの話も教えてよ!」
「うむ!我のつまらない話ならいくらでも話そう。それより先にこの国のことを教えてくれ」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「なんと!?冒険者が居ないだと!?」
「貴族も居ないとな!?あぁ、居るのは居ると。ではここから南にある家々の者達がそうであろう?なに!?違うだと!?ここら辺には居ないだと!?ではあの者達は・・・」
「王も居ない!?てんのう?なんだそれは?それが王ではないのか?てんのうとやらは政治に口を出さない?だが国の頭とな?変わっているな」
「これが最高額のこの国の銭、いや、紙幣の1万円とな。その下に5千円、1千円と。その下に硬貨で500円、100円、50円、10円、1円と。うむ。よくできている。貨幣制度が長いのだろう。なに!?かつてこの国は戦争に負けたと!?戦争のせの字も感じないぞ!?たった70年80年程前の話なのだろう?荒廃どころか、我が国よりも発展していると思うのだが!?」
「食べる為に牛なる動物や鳥、豚を育てると。確かにそれができれば食う事に困らないが、そんな事せずとも人里離れた山に魔物がいるだろう?それだけじゃ足りぬのか?なに!?魔物が居ない!?いや、魔法がない!?こんなにマナを身近に感じるのにか!?レナ殿・・・ゴホンッ。レナにもマナを感じるぞ!?皇女様程ではないがそれ近くはあるぞ?」
「では、山を買うにはどうすれば良い?日本国の山は安全なのだろう?熊?それはどういった動物だ?ふむふむ。我が国に居るベアに似ているな。安心せよ。あのような者は他愛無い。襲ってくるなら駆逐しよう。無闇に間引きするのは自然界を壊す事となるからよくない。魔に落ちた獣なら致し方ないが、日本国に魔物は居ないのだろう?ならば無茶はせんよ」
〜レナ目線〜
ほっんとうになんなの!?このおじさん!?少しジャンキーのように思ったけど、話す事はぶっ飛んでるのに、当たり前のように魔法とか魔物とか単語がでているし、あーしもそういう映画は好きだから知ってるのは知ってるけど、このおじさんは可笑しいじゃないの!?
あーしは少し話せばどうせ、すぐに押し倒してくるかと思ってたのにまったくそんな事してこないし、寧ろ一定空間空けて座って、絶対に近付いてこないしぃ〜。それはそれで悲しいんですけどぉ〜?
外国人のアソコ見た事ないから少し見てみたかったのに。それにまだまだ金を持ってそうだから逃したくないよねぇ〜。
けど、このおじさんが言う通りいつまでもこんな生活が続くわけないよね・・・。あぁ〜あ。どっから狂ってしまったんだろう・・・。
お母さんは取っ替え引っ替え男捕まえて結婚してを繰り返して、家になんて殆ど居なかったから仕方なく生きる為にあーしも似たような事始めたけど・・・。 勉強も嫌いじゃ無かったんだけどなー。こーこーも行って見たかったし。
私が覚えているちゅーがくせーレベルの事も真剣に紙に書いておじさんはメモしてるし。そもそものこの人は本当にどこの人なの?見た目は普通の外国人ぽいけど、メガラニカ大陸だっけ?ネットにのっているけど、幻の大陸って・・・。
「ねぇ?おじさん?」
「うむ。なんだ?その猫撫で声のような口調でも我は女は抱かん。特にうら若いレナのような女は勿体無い。もっと良い男に抱いてもらえ」
「いやそこまで拒否んなくてもいいんじゃない?そこらへんの男なら喜んであーしの股に顔を持ってくるんだけど?」
「そうか。それはすまんな。我も暫く女は抱いていないが、かつて、夜の帝王とまで言われるくらいに女遊びをした。そして気付いた。女は魔性だ。
またある時は一人の女と婚姻し、順風満帆だと思っていた。が、気付けば財布を握られ、日に城が立つような銭を王から貰い受け、妻に渡しても、我には小遣いと称して100ギルしかくれなかった。あれには流石の我も泣いた。何のために頑張ったのかと。
これまたある時は、冒険者として討伐対象Sランクのとある魔物と死闘を繰り返すこと80日。隻腕になりながらもようやっと辛勝し、名誉とその魔物の素材を持って帰った。が、妻は駆け出しの若い冒険者の男と寝ていた。
またある時は我では『満足できない。短小、包茎、早漏。これは貴方の責任。心は貴方だけだから常時だけ若い男娼とさせて』言われ、我は壊れた。そう。女は魔性だと・・・。だから我は二度と女は抱かない」
「ちょっ!なにそれ!?サイテー!そんなに愛してくれてんのにそんなに言われるの?おじさんの国の女ってサイテーな人ばかりじゃん!おじさんバツ4くらいってわけ?」
「いや、我は大賢者だと言ったろう?錬金術も色々と嗜んでいる。だから転生を繰り返しているのだ。愛する女はその代、その代で一人のみ。そりゃ若い頃は遊んだぞ?娼館のとある女に振り向いてもらうためにタワーと呼ばれるエールを注文したり、その女の為に日々の糧を削り、話をする為に通い詰めたりな!若い頃はよく遊んだものよ」
「いや・・・それはただの上客じゃぁ〜・・・」
「いや違う!我もタワーで遊んだからな!我が遊んでやったのだ・・・。遊んで・・・クッ・・・」
「おじさんは一途なんだね!そういう人の方があーしは好きだなー!でね?その魔法?なんだけど本当にできるの?」
「何を言う!本当だ!寧ろレナの方が魔法が使えないのが不思議で仕方がない!」
「ふ〜ん。なら何か見せてよ?見せてくれたら信用してあげる!まぁ、今でも嘘とは思わないけどね!それにおじさんは優しそうに見えるからね!そこら辺の男はヤル事しか頭にないからあーしもそういう風にしか男は見ないようにしてるからね」
「勿体無い考えだ。どんな大魔術師、大魔導師、大賢者だろうとも若返る事はできん。我でもそうだ。だから転生術を開発した。まぁそれはおいておいて・・・。レナよ。見よ。【炎よ。我が右手に集え ファイヤ】」
ボッ
「はっ!?え!?手から炎!?嘘!?キャァーーー!!」
「落ち着きなさい。言ったであろう?我は大魔術師だと。こんな魔法は我の世界では5歳くらいの童でもできるぞ」
「ちょ、ちょ、ちょっと待って!?何で手から炎が出るのよ!?ライターとかマッチ使ったんでしょ!?」
「また知らぬ単語が出た。らいたあ?まつち?が何かは分からないが別物だと思う。他にもあるぞ?【清らかな水よ。我が右手に集え ウォーター】」
ピチャピチャピチャ
「つ、冷たい!」
「わっはっはっ!面白いだろう?魔力が含まれているから常飲すれば魔力酔いになるが、1日2日くらいの行軍なら水を用意しなくても良い便利な魔法だぞ?」
「今度は水・・・」
「まぁ他にも風、雷、複合魔法の風雷、水雷、炎雷、などまだまだありはするが、ここで見せるのは危ない。どこか広い場所があるなら見せられるが?」
「分かった!分かった!それが本当に魔法だとして、何でおじさんは使えるのよ!?」
「いや、なぜと言われてもだな。これが普通だからだ。寧ろ先も言ったように何故レナが魔法を使わないのかが分からない」
(ブォーーーーン)
「そんな魔法なんて映画とかの世界じゃん!」
「ま、待て!その手に持っているものはなんだ!?魔道具か!?」
「え?これ?ドライヤーだけど?おじさんが濡らしたから乾かしているんだけど?」
「見せてくれ!ど、どうなっている!?風と炎の術式を組み込んでいるのか!?なんと精巧な作りだ!?魔法陣は内側に描いているのか!?何!?これを動かすと魔法陣が起動し、下に動かすと止まるのか!?どういう仕組みだ!?」
「ちょっと!備品壊したら怒られるよ!?」
「待て!待て!我は興味が湧いている!」
「おじさんの世界って魔法は凄そうだけど、快適ではなさそうよねぇ〜。だってドライヤーが無いって事はこういうアイロンもないんでしょう?真っ直ぐに髪の毛できないじゃん」
「おぉ!それはなんなのだ!?」
「(クスッ)なんか面白いね!お風呂も驚くんじゃないの?」
ジャァーーー
「なっ・・・水がそれを捻ると出るのか!?何!?温かい湯だと!?これにも内側に魔法陣があるのか!?どこど!?術士は誰だ!?」
「いいから!いいから!さぁ!入って!おじさんなんか土臭いのよ!」
「う、うむ。それはすまなかった。昨日まで土の中に居たからな。本当だぞ?」
「土の中?何で?」
「いや話せば長いのだ」
「いいよ!どうせ、夜も長いし。明日もおじさんに予定合わせるからずっと話そう!もう一度聞くけど、エッチしないの?あーしは嫌いじゃ無いからしてもいいよ?おじさんならお金要らないよ!」
「いや。それはできぬ。女はもう抱かないと決めている。後から辛い思いをするだけだからな。別にレナがどうという意味ではないぞ?」
「ふーん。じゃあさ、何もしないからおじさんのアソコだけ見せてよ?あーし外国人のアソコは見た事ないんだぁ。気になるぅ〜!」
「何を言っているのだ!見せ物ではない!」
「いいじゃん!太ってる人とかなら小さいって分かるけど、おじさんは大きいように思うんだけどなー。皮被ってるかは分からないけどもういいじゃん!脱ぎなよ!あーしが脱がしてあげてもいいけどそれの脱がし方分からないし〜、破ってしまいそうだし〜」
「そんな事を言うでない!ほら!出ていなさい!」
「面白くなーい。まっ、いいや。覗いちゃおっかなー?」
「【霧よ。我に集え バニッシュ】」
「え!?おじさん!?どこ!?」
「我はここに居る。認識できないだろう?だが風呂なるものに入り、身体を洗えば見えるようにする。暫し待て。レナはもう少し貞操観念を持ちなさい。
もう少し人生を謳歌し、我の今代の姿を見ても受け入れてくれるというのなら次代にレナの元へ現れよう。その時は我はレナしか見ず、今一度女性と向き合おう」
「なに!?その臭い言葉!?」
「そのままの意味だ。我の今は仮の姿だ。本来は今代は人間ではないのだ。また後で話そう。ぬぉ!?これは・・・良い匂いがする泡だ!美味そうだ!」
「ちょ!それは食べ物飲み物じゃないから!」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「うぁ〜!いい湯だった!」
「れ、レナッ!何故その布一枚なのだ!早く服を着ろ!」
「え?バスタオルだけだけど、ちゃんと隠してるじゃん!」
「いいから早く着なさい!」
「はい!はい!分かった!分かったって!これでいいでしょう!」
「う、うむ。少々刺激が強い」
「そんなに言うなら抱いてくれてもいいじゃん?ホテルに来てヤらなかった事なんてないんだけど?」
「では我が初めてだな。良かったな」
「(カシャカシャ)おじさんも食べる?甘いお菓子」
「うむ。美味そうな匂いがしている。いただこう。こ、これは・・・いつかのちよこれいとなる物ではないのか!?」
「あれ?知ったんだ?変なの〜」
「間違いない!幼生の時に遠征隊の者が持って来てくれた物だ!これをアイルーにも食わせてやりたい!レナ!土産に一欠片貰っても良いか!?」
「アイルー?女が居るの?それなら早く言ってよ!」
「女?いや、女は女だが雌だ!そういう関係ではなくて、主従関係のような親子のような兄妹のような者だ!」
「なにそれ?そのアイルーって女の尻に敷かれているの?あーしが言ってあげよっか?」
「いや、アイルーはそんなんじゃない!新女王なんだ!」
「女王ねぇ〜。仕込まれてるわね〜」
「違う!あぁ!もう!今から今代の我の姿になる!間違っても殺さないでくれ!そして驚かないでくれ!ここら辺をよく見ていてほしい!」
「ふーん。また魔法?『【イリュージョン】』はぁ〜!?おじさん!?またバニッシュって魔・・・法・・・蟻・・・おじさん!?」
「【イリュージョン】分かってくれたか!?」
「え!?おじさんは蟻なの!?蟻にも変身できるの!?」
「いや、違う!一から言うから聞いてくれ!長くなるぞ!」
「って事はそのホムンクルスってのに転生してたけど、何かの間違いで日本のここに来て、蟻に乗っ取ってしまったって事?」
「お、おぅ。話が早いし、此度は驚かないのだな?」
「まぁ、手から炎や水出すし、変な格好してるし、見えない空間から色々取り出してるの見てるからね」
「そう・・・なのか?我は当初は卒倒したもんだが・・・」
「だってあーしは蟻じゃないし。ゴキブリとかなら叩き潰して殺してティッシュに包んでグチャグチャに潰してトイレに流してたかもしれないけど、蟻でしょ?」
「そ、そのゴキブリとやらが何かは分からないがゴキブリじゃなくて良かったとは思った。2回も潰されてしまうような生き物なのだな」
「うん!うん!ゴキブリは人類の敵と言っても過言じゃないよ!あーしはこの世界で1番嫌いな虫!」
「そうか。そこまで言うなら我も見つけ次第殺す事にしよう。人類の敵なんだな。覚えておく」
「あ、いや・・・おじさんなら本当に駆逐してしまいそうだからそれはそれでヤバそうだから見たら殺す程度で・・・」
「うん?そうか。今も既に術式構築を考えていたのだが、辞めておこう。
で、だ。ここからが我の頼みなのだが、山を買いたいと思うのだ。人里からかなり離れている山が好ましい。そこに蟻の楽園を作りたい。我はそう思っている」
「それは・・・凄い考えだね。本当に蟻なんだ?けど、前の人生は人間だったんだよね?蟻なんてそこら辺に巣があるからそれじゃダメなの?」
「ダメだ。蟻は敵が多い。捕食される側が多いのだ。そりゃあ弱肉強食はどの世界でも真理だ。そこは文句は言わない。だが、我は蟻が繁栄する楽園を作ってみたいのだ。
レナは分からないと思うが、蟻は頭が賢いのだ。寧ろ姿が違うだけで人間と変わらない。同胞は役割を決め、子育て、餌取り、兵隊、と色々とあるのだ。餌の仕分け、糞の処理する者と。良ければレナも手を貸し、知恵を貸してほしい」
「は!?あーしに蟻になれって言うの!?」
「まぁ端的に言えばそうなる。だが、蟻になれば蟻の感情も分かるようになる。これは我で立証済みだ。新しく地底・・・地下に蟻の集落を作り、町を作り、街に拡張し、楽園を築く。楽しそうだとは思わないか!?」
「ぜっんぜん!思わない!」
「そうか。仕方がない。世話になった」
「は!?おじさん諦めるの早過ぎな!?」
「いや、無理な者に無理矢理は良くない。それにレナは恩人だから余計にな。何もかも知ってるかと思っていた我に知らない事を教えてくれた。
日本国の事もファミレスの事もお金の事も。娼婦だから演技かもしれないが、我に嘘でも好意を抱いてくれた事は分かった。
何度も言うが演技でもそれはやはり嬉しい事だ。その者に無理強いなんてできようか」
「だ!か!ら!おじさんは一々言う事が渋すぎる!おじさんはあーしが蟻になってほしい!町作りに協力してって事?人間には戻れるの?」
「うむ。我は昔からこんな話し方だ。レナとは些か違うようだが癖のようなものだから許せ。で、町作りに協力してほしい。人間には好きな時に戻れるように致す。自分の好きな時にいつまでも何回でもだ。
でないと、友達や家族とも会えぬだろう?そんな事はさせない。仕事にも・・・いや。何でもない。仕事は辞めなさい。我が食べさせていく。ひもじい思いだけはさせないと約束致す」
「ちょっと〜!惚れてしまうような事言わないでよー!そういう言葉は結婚する人に言うものだよ!それとあーしは家族はもう居ないよ!いや、お母さんは、どこかに居ると思うけどもう分からないの。お父さんは誰がお父さんか分からないし」
「そうか。つまらない事を言ってしまった。許せ」
「まぁそこはいいけど、食べる物ってなんなの?砂糖とか?あーしは今のように人間が食べる物がいいんだけど?」
「そこは何でも食べられるようにしよう。好きな物好きなだけ食べなさい。そしてアブラムシ先生の蜜を飲んでみな?飛ぶぞ?」
「アブラムシ!?嫌よ!気持ち悪い!」
「なっ・・・我の先生に向かって気持ち悪いとはなんだ!それは二度と言うな!レナも先生に会えば分かる!とてもいいお方ぞ!」
「嫌ったら嫌!」
「うむ。仕方あるまい。先生には違う言い方で伝えておこう」
「いや、だからおじさんは諦めるの早過ぎなんだって!」
「女性に嫌という事を無理強いはさせない。我のポリシーだ」
「あぁ・・・前の人生とか前の前の人生でかなり仕込まれたわけね・・・」
「何か言ったか?」
「いや別にぃ〜。今から蟻になるの?」
「うむ。先ずはホムンクルスを造らねばならない。要は入れ物だ。外骨格から肉まで我が持っている素材なら何でも使って良い。なんせ小さな物だ。そんなに素材を使わなくて済む。思い浮かぶ事を言ってくれ」
「そんなの分からないんだけど。あっ!ちょっと待って!」
「またスマホなる物か。全てが分かる物とは凄い物だ」
「あぁ〜、今から言う物ってあるのかな?ダイアモンド、コランダムとか〜、トパーズってのも硬度が硬いって書いている!」
「ダイアモンドは磨けば女性が喜ぶ宝飾を作る職人が我の元居た世界に居た。が、それはそんなに硬くない。ボアの牙で簡単に割れるぞ」
「は!?どんな世界よ!?ボアってなんなのよ!?」
「いや、それが我の常識だから仕方がない。それが日本国の1番硬い鉱石なのか?」
「世界の!この地球で1番硬い鉱石はダイアモンドなんだってネットには書いてるけど・・・ちょっと待って!架空の石なんかもあったり・・・ミスリル?とか?」
「うむ。あるぞ。架空なんかではなく、我の居た世界では冒険者はミスリルの鎧や剣を目標にしている者も多い」
「嘘!?本当にあるんだ!?待って!それなら・・・ヒヒイロカネとかアダマンタイン、オリハルコンとかは!?」
「あるぞ。ちなみにその中で1番硬いのはヒヒイロカネだ。いや、どの鉱石も一長一短はあるがな。ミスリルは万能。オリハルコンは魔道伝導が良い。ヒヒイロカネは硬い。アダマンタインは魔道伝導と硬さに優れているが少し重い。
他にもレッドクリスタルや、ブルークリスタルなんかもある。クリスタルは魔防に適している。色の通りレッドは炎、ブルーは水系統の魔法を無効化す・・・」
「いや、地球に魔法なんてないからそんなもの要らないんだけど?」
「そうか。ではどういうのが好みだ?」
「え?う〜ん。食べられたくないし、死にたくないから1番硬くて食べられないようにしたいかな?後、あーしも魔法使ってみたいかも」
「相分かった。魔法は恐らく我等と何かが違うから行使できないのだと我は思う。修練を積めば使えるやもしれぬが、まずは術式魔法ならばできるで・・・」
「何も分からないからおじさんに任せるから!」
「う、うむ。講釈が長いのは許せ。錬金術師は独り言が多い職業なのだ。では外骨格をヒヒイロカネにし、身体の肉はダークマターとミスリルを混ぜ、炎と水の術式を刻印しておこう」
「ねぇ?本当に蟻の模型?みたいなのが出来上がっているんだけど!?」
「よし!これで完成だ!レナ!準備は良いか!?」
「え!?え!?本当に本当なの!?」
「あぁ。任せてくれ。アブラムシ先生でも成功した!まず間違いない!仮に失敗しても元の肉体に戻れるように再生の術式も施してある!【イリュージョン】」
「おじ・・・」
パタン
うむ。この娘子には・・・レナには本当に世話になってしまったな。どうやらこのレナは金が好きなようだ。いや、我の元居た世界でも皆、金は好きだった。山がいくらで買えるのか。ふくざわゆきち殿が何人居れば買えるのか聞かないといけないな。
「(プッハー)へぇ!?え!?ここは!?」
成功のようだ。我も蟻に戻るか。
「【イリュージョン】」
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