行き詰まる日本の人間旅
アブラムシ先生も居る事だ。ファミリーの繁栄を望むならやるべき事はいっぱいある。この巣を丸ごと転移術でもっと安全な場所へと移す事だ。
アイルーの子が産まれるとそれも中々できない。だからこれは今しかできない事だ。
「先生!1番上の大穴にてアイルーを待っていてくれませんか?我はファミリーのため、巣のためにもっと安全な場所を見つけてくる」
「それはだめだ!と言ってもリアクは行くのですよね」
「あぁ。先生の言う通り、けど我は弱くない。必ずいい場所を見つけ戻ってくる。アイルーがいつ戻ってくるかは分からないが、太陽が3回登る頃には一度戻ってくる。穴の前に先生の土があったでしょう?あれをもう一体作り、守らせます。あれより前には出ないように願います」
「何がなにやら分からないが従うよ。気を付けてな」
「えぇ」
我はさっそく巣から出てイリュージョンにて人間の姿になる。この世界の人間とは少し形は違うようだがこの前の子供が言ったように外の国・・・つまり外国の人間と言われたが、その外国の人間とは姿、形が似ているという事だろう。
言語魔法も問題ない。この世界が貨幣制度かは分からないが、いざという時は3枚しかないが、聖白大星貨が空間ポケットに入っている。貨幣が違えど、貨幣制度の世界ならこれがどれだけの価値かは下級貧民でも分かるだろう。まずは情報集めだ。この巣を作らせてもらった家主に話を聞こうか。
ドンドンドン
「相すまぬ。聞きたい事があるのだが、少し出てきてもらっても構わないか?我は決して怪しい者ではない。こう見えてかつては大魔術師と呼ばれた者だ!」
「えぇ?何かの勧誘?うちは勧誘なんてお断りなんだけど」
「おぉ。相すまぬ。御婦人のお家でしたか。御主人は御在宅か?家の権限がある者と少し話がしたい。いやなに。礼は弾む」
「はぃ!?が、外国人!?」
「うむ。我の外見は外の国のように見えるみたいだというのは分かっている。だがこうして言葉を交える事ができる人間だ。つまり、形が違うだけで御婦人と同じである」
「な、な、何を言っているの!?」
やはり驚いているか。まぁだが我もブライアン時に、家にいきなり黒髪の男が現れれば驚くやもしれん。かつての世界に黒髪の人間は居なかったからな。
ここは先に礼を渡した方が良さそうだな。いきなり聖白大星貨を出すのはダメだ。
これは我の最終兵器のような物だからな。まずは銀のインゴット100メタ程渡せば話くらいはしてくれるだろう。
我が居た世界の中級兵士の月給くらいの価値があるからな。
「いや、まぁ、少し聞きたい事があるのだが、構わないか?いやタダとは言わない。これを先に渡そう。我が国の銀100メタだ。我の国で中級兵士の月給程の価値がある」
「買わないわよ!そんなもの!帰って!帰らないと警察を呼ぶわよ!」
「ま、待て!話を聞きたいだ・・・(バタン)けなんだが・・・」
チッ。我をどこかの黒魔術師会の輩かなにかと思われたのだな。確かに転生する前のローブのままだが・・・いや、これが怪しいのだな。魔防に優れたローブだからこれを着ていたいが仕方がない。もう一度ここの住人に・・・と言いたい所だが、けいさつとやらが何かは分からないが、治安を維持する衛兵のような機関なのだろう。
女が男にも物怖じせずに言葉を言うということは戦は暫くない世界なのか。もしくは戦に出て男手が少なく、女が自活する内に強くなったかだな。まぁ良い。隣の家に行くか。
それにしても見れば見るほど凄まじい家だな。石でとなく木でもない。レンガでもない。いったい何の材質なのだろうか。我の居た世界でもこのような家は無かった。王城より良い素材にも見える。
トントントン スリスリスリ
軽く叩いて触ってみたが分からぬ。
「だ、誰だ!?泥棒か!」
「あ、いや、相すまぬ。素晴らしい家だと思い、なんの材質なのかと思い思わず触らせてもらっていた。謝る。聞きたい事があるのだが構わないか?あぁ、我は黒魔術師会のような輩とは違う。巷では大魔術師と呼ばれていた・・・」
「フミエ!警察に電話しなさい!最近は外国人の窃盗団が多いって聞いている!我が家には一歩も入らさないぞ!このゴルフクラブが見えないのか!(ブォンッ ブォンッ)」
「御老人!そんな物振り回しては危ない!腰がやられてしまいますぞ!本当に我は怪しい者ではないのだ!話を聞きたいだけで・・・」
「黙れ!黙れ!帰れ!」
「わ、分かった。すまぬ。邪魔をした」
クッ。我とした事が二件目も失敗か。やはりこのローブがダメなのだな。ならば貴族が着る服装にしよう。
頭はビーバーハットに、上衣は長めのチュニックに首回りは上級クラバットを巻き、王宮勤めの幹部にも卸していた仕立て屋で仕立てたウエストコート、下は我がかつて仕留めた魔に堕ちた牡鹿のブリーチを着る。後は白の手袋に香木で有名なエンキノスの木で作った杖を・・・。よし。これで怪しくないだろう。
トントントン
「決して怪しい者ではない。実は聞きたいことが・・・」
「誰よ!あんた!勧誘なんていらないわよ!帰って!帰って!」
トントントン
「少し話を聞きた・・・」
「何!?この外国人!怪しさ満点じゃないのよ!うちは何も要らないわよ!帰って!」
トントントン
「銀を渡すから話を聞かせ・・・」
「新手の詐欺!?(ガチャン)」
トントントン
「金を渡すから話を・・・」
「・・・・・(ガチャン)」
トントントン
「この聖白大星貨を渡すから話だけ聞かせてほしい」
「誰?おっさん。外国の人っしょ?このコインが何かあるわけ?明らかに子供のオモチャじゃん」
「おぉ〜!話を聞いてくれるか!それはオモチャではない!かなり貴重で我の世界なら城が10は建つ・・・」
「そんなの知らねーよ!そもそもその格好なんなの?NH◯の集金かと思ったわ。見ての通り平日昼間っから家に居る無職なの。金なんてないの見たら分かるっしょ?」
「金という事はこの世界は貨幣制度を取っているという事か!?」
「は?おっさん、何言ってんの?まぁ外国人だけど日本語が上手いのは褒めるけど、怪しさ通り越して不審者じゃん。1万円くれるなら話ならしてやるよ」
「い、いちまんえんとは何だ!?我の空間ポケットにもそんな物なんてないんだが!?」
「は?一万円も持ってないの?ないわー。じゃあな。おっさん。(ガチャン)」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
カァー カァー カァー カァー
「ハァー。この世界の人間は冷たい。それにこの世界にも夕鳴き鳥が居るのだな。黒い姿がまんま同じだ。それがやけに寂しく思う・・・。人間と言葉は通じるのに話すらできないとはどういう国なのだ・・・」
「キャハッハッ!だからレナはその男捨てたんだ?」
「そーよ!あーしが、お小遣い欲しいって言ったら其奴は、『こ、これが、ぼ、ぼ、僕の全財産です!』とか言って、たったの10万ポッチよ。せっかく手だけだけど、ドーテイ卒業させてあげたのにたったのこれだけだったから捨ての!」
「えぇー!もったいないじゃん、額は少なくても貢ぐ君にちょうど良いじゃん!」
「えー?いやだよ!包茎で臭いし。不潔だし。まぁ20秒で終わってくらたから時給はかなり良かったけどねー!あれ?なにあの外国人?」
「うん?うわ〜!気合い入ってんねー!コスプレじゃん!?写真撮ろう!」
うむ。女二人か。それにしても破廉恥だ。スカートが短すぎる。羞恥心というのがないのか。それに話を聞くつもりはなかったが聞こえてきた言葉からすると娼館もしくは娼婦の女か。うら若いというのに、もったいない事をするのだな。
カシャ
「な、何奴だ!我に何か魔法を放ったな!?」
「あ、え!?な、何!?怖いんだけど!ちょっと写真撮らせてもらっただけじゃん!」
「嘘を吐け!しゃしんが何かは分からないがなんぞ音がして少しマナを感じた!大魔術師、大賢者の我が女子如きに遅れなぞ取らぬ!言え!何をした!」
「はぁ?何このおっさん外国人。コスプレの人かと思って写真撮っただけじゃん!気に入らないなら消すから許してよ!ごめーんね!」
「ま、待て!いや、待ってください!今、我と話してくれているよな!?なぁ!?」
「え?何?当たり前じゃん!ってかさ、外国人なのに日本語上手いねー。どこの人なの?アメリカ?」
「おぉ〜!会話をしてくれるか!これ程感動を覚えた事はかつてない!其方等はまだ若いのだ!身体を売るような事は辞めなさい!食べるに困るのならこれを質屋に売り、貨幣を作り幸せに暮らしなさい!我も3枚しかない聖白大星貨だ!一枚ずつ其方等に渡そう! 我の国ではそれで城が10は建つくらい価値のある物なのだ!」
「なーに?これくれんの?オモチャみたいだけどタダでくれるなら貰うけど、後でお金払ってとか言われても払わないわよ?」
「うむ。そんな事、我が言う訳がない。娼館で雇われているのだろう。辞めておけ。いつか病気に罹り死んでしまう事もある」
「ギャッハッハッ!チョーウケるんですけど!」
「本当!私も超ウケるんだけど!」
「な、何が可笑しいのだ!?話を聞くつもりではなかったが聞こえたから忠告したまでだ。うら若き女子が身体を売らなければ生活できぬとは我は嘆かわしい。そりゃ需要があるのは分かる。が、わざわざ其方等のような美貌の持ち主はそのような事せずとも貴族の男と婚姻すれば贅沢なぞいくらでもできよう」
「ギャッハッハッ!本当に超超ウケる〜!ねぇ〜!外国人さん!名前なんていうの?出身は?面白いから話そう!この高価なコイン持ってるならお金も持ってんでしょ?奢ってよ!焼き肉なんて言わないからさ!普通のファミレスでいいからさ!」
「えぇ〜!レナのその10万で明日ディズニ◯に行くって言ったじゃん!早く準備しようよ!」
「そんなのまた今度でいいじゃん!二週間前に行ったばかりじゃん!あーしはこの外国人が面白くて!ミユキは帰っててもいいよ!またライ◯送るから!」
「そういう事ね!意味が分かったわ!じゃあ明日は豪遊しよう!」
「そっ!そういう事!じゃあね!」
我の言語魔法が狂っているのか。分からない言葉が多い。だが間違いない!会話ができている!この女子からこの辺の情報を聞き出せるそうだ!
「な、な、なんだここは!?ま、摩天楼か!?あの走っている物はなんだ!?あの光っている物はランタン・・・ではないな!?誰か光の魔術師が魔法を行使しているのか!?永久エンチャントでもしているのか!?」
「はぁ?車だよ!知ってるでしょ?ねぇ〜!名前なんていうの〜?」
「あ、あぁ。すまぬ。少々驚いていた。私はブラ・・・いや、リアクという。そう。リアクだ。出身は、メガラニカ大陸 テラ・メガラニカ帝国の出身だ」
「(ポチポチ)めがら・・・なんだっけ?」
「メガラニカ大陸 テラ・メガラニカ帝国だ」
「えぇ〜?そんな大陸なんて・・・え!?伝説の大陸!?何これ!?何かの冗談!?」
「我は冗談も言うが今は言っていない。というか、その小さな箱のような物はなんなのだ?」
「まっ、いっか。食べながらおじさんの話聞かせてよ!」
「待て!我の質問にも答えて・・・」
ジュゥ〜〜〜〜〜〜〜
「鉄板が熱くなっておりますのでお気をつけください(クスッ)ではごゆっくりどうぞ〜」
「こ、こ、これはなんなのだ!?それに今の給仕の女は何故我を見て笑ったのだ!?」
「さぁ〜?いいじゃん!人は人!自分は自分!あーしはあーし!おじさんは気合いの入ったコスプレが好きなんでしょ!さぁ食べよう!」
「う、うむ。まずは食べ・・・(ハムッ)なっんじゃこりゃ〜!ボアの香草焼きこそ至高かと思いきや、この肉は脂は少ないが上品で美味いッ!宮廷で食べた物より美味い!!」
「は?ただのファミレスのステーキじゃん!」
「いや〜、ただのふぁみれすなる飯処は最高である!是非、シェフに挨拶したい!すまぬ!おーい!シェフはどこだ!是非、礼を言いたい!」
「ちょ!おじさん!さすがのあーしでも恥ずかしいから辞めてよ!ここはそういうところじゃないから!」
「(クスッ)店長に伝えておきますね。それにしても凄い服装ですね。お隣の方は娘様ですか?」
「うむ。王宮にも出入りしている仕立て屋の者に誂えてもらった物だ。我の一張羅だ。いや、まだあるにはあるのだがな。言葉のあやだ。それと横の女子は訳ありで、食うに困り、粗末な仕事をしているようでな。深い関係ではないが、我にこの世界の事を教えてもらっているのだ」
「え!?あっ、そ、そうですか!ま、まぁごゆっくりどうぞ」
「もう!おじさん!なんなの!?あーし、食う事に困ってなんてないんだけど?店員も引いてたじゃん!」
「そうだ!そのような事を其方はしているのだ!だから身体を売る事は辞めなさい!」
「なーに?説教?そんな私は風俗嬢じゃなくパパ活なの!こーこー辞めて、16から一人で生きてんの!で、お金貯めて贅沢するの!」
「そうか。目標があるのだな。それは要らぬ事を言った。許せ。で、だ・・・我はお代わりがしたいのだが、しても良いか?」
「何であーしに聞くの?すればいいじゃん!」
「おぉ!そうか!すまぬ!このはんばあぐどりあなる物を頼む!」
「はい!畏まりました!」
「うむ!美味かった。では出ようか」
「お会計は6875円となります。現金でよろしかったでしょうか?」
「だ、そうだ」
「は?だ、そうだってなによ?おじさんが払ってくれんでしょ?」
「我はこの世界の銭を持ち合わせていない。仕方ない。給仕の女。これを店主に渡してくれないか?我の錬金術で計ったからまず間違いないだろう。不純物が殆ど含まれていない100メタの金のインゴットだ。銀の方が喜ぶのならそちらに致すが?」
「え!?き、金!?これ金ですか!?」
「あぁ〜!!!もう私が払うわよ!はい!一万円!」
「おぉ!それがいちまんえんなる物か!まさかただの紙切れだとは思わなかったぞ!それはさぞかし価値のある紙なのだろう!うん?これは人の姿絵か?精巧な絵だな?さぞかし高名な絵師が描いたのだろう!それにこれに描かれている・・・ふくざわゆきち?うむ。ふくざわゆきち殿がこの国の根幹に関わった功績の持ち主なのだろう!存命しているのか?是非会ってみたいのだが」
「すいませんね!このおざさんチョー気合いの入った外国人だから、あーしもびっくりしてるんです!お釣りはもういいので、ご馳走様でした!」
「お、おい!我を押すな!給仕の女!其方の配膳も中々だった!シェフにもくれぐれもよろしく伝えてくれ!また来ると!」
「あ、ありがとうございました!」
「もう!本当におじさんはなんなの!?」
「うん?我か?我は大魔術師で大錬金術師、大賢者、武闘家、策略家・・・他にも色々と言われたが忘れた。まぁ今はただの人だ!悪いが先のいちまんえんなる物を見せてくれないか!?」
「はぁ!?何でよ!?これは私のお金!あぁ〜もう!一万円無くなったじゃない!あっ!そういえばおじさん金持ってたよね!?それあーしに貸してくれない?」
「うん?何故だ?これは子供の遊び事には使えない」
「ちょっと!何が子供よ!こう見えてあーしは18歳で大人なんだから!その子供にご飯奢らせたのは誰よ!」
「うむ。一理ある。まだ持ってはいるが無くすでないぞ?それは其方に贈り物だ。本当に銭が無くなった時に誰かに売り生き永らえよ。世話になった。其方の人生に幸あれ」
「はぁ!?なに言ってんの!?もうバイバイなの?話聞きたいじゃなかったの?」
「うん?聞きたい事はあるが其方は友達と予定があるのではないのか?」
「あぁもう!そんなのいいから!とりあえず聞きたい事があーしもあるから邪魔が入らない所に行こう!おじさんとは普通に話したい!変な事じゃなくよ!」
「我は客ではない」
「だ!か!ら!誰もおじさんとヤリたいなんて言ってないじゃん!いや、少し見てみたい気もするけど、普通におじさんがどこから来て、どこの人で何をしてる人か気になるの!だってこれ、間違いなく金じゃん!ホテル代も出すから付き合ってよ!その前にこれは質屋に流すけどいい!?おじさんはお金ないんでしょ?半分渡してあげるから!」
「おぉ!両替所も紹介してくれるのか!それは非常に助かる!だが、それは其方が持っていなさい!我はまだ持っている!」
「さっきから其方、其方って辞めてくれない?あーしはレナ!名前で呼んで!」
「妻でもない女を名前で呼ぶなぞ失礼にあたる。こう見えて我は以前は貴族だったのだ」
「貴族!?何それ!?いいから日本では名字で呼ばれる事が多いけど、あーしは何回も名字が変わったから名前で呼ばれたいの!いい!?レナ!はいっ!」
「う、うむ。事情があるのか。レナ殿だな。相分かった」
「レナ殿じゃなく、レナ!いい!分かったね!じゃあ着いて来て!」
可哀想な女子かと思いきや、逞しい女だ。国の女達とは違う。気が強い。なにやら事情もあるように見える。放っておくのは可哀想に思えてきたな。我と別れればまた男を相手にするのだろう。
この者に色々と人間の事を教わるとするか。そして、この者にも蟻の町作りを補佐してもらおうか。流石の我も一から町は作った事がないからな。
楽しみで仕方がない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます