始まる生活

 この蟻の姿となり分かった事がある。いや、他にも想像ができなかった事も起こっている。

 ここは我の居た大陸・・・どころか、世界が違う。まずはアイルーを守るために我は家を見つけた。いや・・・家ではなく巣というのが正しいか。

 初めて人間以外への転生だ。しかも我の居た世界では見向きもしないし、気にもしない、ネームドモンスターにすらなれる個体が皆無な蟻にだ。だが、この身体となり、蟻の習性も自然と身に付いた、臭いというものと、巣を大きくアイルーを中心としてファミリーを作る事。

 これは使命のように感じる。そして、この世界では魔法を使っているような形跡がない。アイルーにもマナは感じるが魔法は使えないようだ。それは人間も然り。

 それと、この世界の蟻は我の居た世界の蟻とは少々違うようだ。いや、蟻の生態系を調べた事が無かったから本当はどうかは分からないが少なくとも我が元居た世界の厄災級蟻型モンスター、ドグマは何でも食べていた。

 だから固形物も食べれるかと思いきや固形物は食べたら消化できず糞詰まりで死んでしまうというのも分かった。

 だから我はお尻・・・いや、蟻からすれば腹だが、このウエストが細すぎるのが原因とつきとめ、このウエストの部分にとある魔法をかけた。

 ちょうど腹は魔法陣が描けるくらいの大きさがあるからな。

 その魔法はホムンクルスを作る時と同じ要領でウエスト部分を柔らかく改造しただけだ。いや、外皮を固くしたり、ウエストそのものを大きくしたり試したがこの身体はこの身体で完全なのだ。まずウエストを大きくすれば歩く事すら困難となった。バランスが悪いのだ。

 そして外皮を固くすれば敵からの攻撃は防げるだろうが、こちらから攻撃しようにもできないくらいに身体の柔軟性が失われた。だがそこは元大賢者とまで巷で言われた我。

 人間の姿に戻り、空間魔法のポケットに入れてある、かつての世界の希少鉱物を贅沢に使った新アストラルボディを造ったのだ。

 外皮には柔らかいのに粘り強く、衝撃にも強いミスリルを使い、手足には垂直な壁も難なく登れるよう・・・そしてこの前のようなトンボに襲われても敵の肉も突き破れるようヒヒイロカネにし、この蟻の唯一の固有技であるギ酸と呼ばれる毒を出す尻の部分はアロンダイトにした。

 後は魔物やモンスター、人間でも追い詰められた最後の武器となる己の牙・・・もちろんオリハルコンだ。この身体だけでかつて、我の居た世界なら流通している聖白金貨全部を集めても足りないような値段となっただろう。


 アイルーはどうしたかって?もちろんアイルーも改造させてもらった。だが他人のアストラル体への転生は施した事が無かったから辞めておいた。失敗する訳にもいけない。

 だから身体全体を薄く伸ばしたミスリルでコーティングしただけだ。

 だが、それだけでもオーバースペックだろう。A級の魔物の爪や牙、打撃、斬撃なんかも防ぐのだからな。そして重さも希少鉱物の中で一番軽いからな。

 話を今に戻そう。巣だが、とりあえずこの世界の人が住む家の横の木の根本を借りる事とした。この世界にドラゴンやワイバーンが居るかは分からないが我の居た世界とは違い、皆が皆、人間は上等な服を着ている。ここら辺一帯が貴族街だと我は思っている。

 基本、我の居た世界では家族は土遊びなんてしない。そして、この家の住人は庭の草が生え過ぎている。つまりは庭師も雇えない貧乏貴族というわけだ。

 最悪は人間の姿になり、我が土地を買い、そこに巣を作る事も考えている。だが、家を購入するには平民以上にならなければならないからな。元居た世界ならば顔を見せるだけで皆が皆、跪いたりしてくれてたがここは違うようだしな。この街の領主に何か功績になるような事をすれば家くらいなら用意してもらえるだろうとオレは思っている。

 だが、案外、木の根本に穴を掘っただけの家でもこの姿なら快適に思う。これは我が半分は蟻の気持ちが分かるという証拠だろう。


 「あっ!リアク〜!こっち!こっち!リアクがまほう?で穴掘ってくれたから大きい寝床が作れたよ!」


 「ふっ。他愛ない。元の我ならこんな土魔法より凄いのができたのだが、術式魔法は出力の上限があるからな。この姿ではこの小さな魔法陣しか描けないからこれが限界だ」


 「ぜっんぜんだよ!他のファミリーの巣よりすっごい大きくて快適だよ!故郷より大きいと思うよ!」


 「そう言ってもらえて我は嬉しい。で、だ。そろそろ固形物を食べてみないか?実は我が元居た世界のモンスターの肉なんだが、我はこれの香草焼きが好きだったのだ。安心しろ。まずは我が食べる。我が大丈夫ならアイルーも固形物は食べられる」


 「いいよ〜!リアクの事信じてるから一緒に食べよう♪」


 なんともまぁ、天真爛漫というか明るい妹だ。だが我はこの妹は命のある限り守ってやらねば。


 「出でよ!ファイア!」


 (ボッ ボッ ボッ) (ジュワァ〜)


 「うわぁ〜!凄い!火が出てるよ!巣を燃やさないでね!」


 「ふん。そんな初歩的なミスを我が・・・(パチパチパチ)ぬぁっ!?アイルー!何故ここに乾燥した枯葉を置いてあるのだ!出でよ!ウォーター!」


 (ザバーーー)


 「キャハッ♪お家燃えちゃう所だったねぇ!冷た〜い!」


 我が妹ながらどういう考えをしているのだ。危うく我が初心者冒険者のような火事を起こす所だったではないか。


 「アイルー?今後は気をつけてくれ。火を見れば心が落ち着くだろう?そう。それは人類の始まりは火起こしから発展したからだ。だから身体の作りに火を見れば気持ちが落ち着いたり和らいだりする力があるからだ」


 「えぇ〜?私知らないよ!私人間じゃないし!火なんて恐怖しか感じなかったけど、リアクがお家作ってくれた時に一度全体の土を燃やしたじゃん?だからあれから火の恐怖が無くなっただけだよ〜?っていうか〜、これがぼあ?ってお肉だよね!?美味しそうな匂いがしてる〜!いっただっきま〜す!(ガジ)」


 「あぁ〜!アイルー!待て!我が最初に・・・」


 「美味しいぃぃぃ〜〜!!!ねぇ〜!何これ!?美味しすぎるんだけど!先生の蜜より美味しいぃ〜!!」


 「アイルーよ。もう少し何事も落ち着いて行動しろ。子が産めなくなったらどうするのだ。(ハムッ)うむ!これだ!火加減も完璧だ!美味いッ!」


 「うん!うん!この肉の脂と歯応え、それに草の匂いがちょうどいい!私、死ぬ時はこれを食べて死にたい!」


 「おいおい。子の話をしている時に死の話をするな。まだまだこれから色々食べさせてやる。こう見えて我はグルメなのだ。美味しい物を適度に食べ、適度に身体を動かし、いつ何時、誰から襲撃されても撃退、撃滅させる力をつけなければならない。

 この巣は大きく造ったからな。兵が必要だ。守り手・・・我は飯を取りに行く時もある。その時は鎮護役が必要だ。それも並の同胞ではいかん。そしてアイルー。未だ二人だけの時に言っておこう。

 アイルーの部屋のこの葉っぱを見よ」


 「美味ちぃ〜!」


 「ハァー。アイルーッ!!真面目に聞け!」


 「もう!分かったよ!なーに?」


 「この葉っぱの裏側に経路がある。巣から少し離れた地上に繋がっている。もし、敵に襲撃され逃げ場がなくなった時はお前はここから逃げろ。そして別の所でまたファミリーを作れ」


 「えぇ〜!?嫌だよ!私のお家はここなの!それに・・・リアクが居なくなったら誰もこのようなご飯作れないじゃん!その時は私も死ぬ〜」


 「馬鹿を言うんじゃない!アイルーはずっと生きるのだ!命令だ!」


 「じゃ〜!私も命令を出そうかな〜!リアク!命令する!」


 アイルーがそう言うと頭の中に電撃が走った感じがした。逆らえない何かのような感じだ。すると自然に我が・・・元大賢者、大魔術師、世界一の武闘家、名伯楽とまで言われた我が平伏していた。


 「ははぁ〜!なっ、なんだこれは!?自然と身体が・・・」


 「リアクはずっと私の・・・横に居て!仕事でお家から出ても必ず帰って来て!私より先に死ぬ事は許しません!後、毎日私に食べた事ないご飯も作って!他にはスキンシップも毎日して!えっと・・・他は・・・」


 「クッ・・・身体が動かん・・・誘惑(チャーム)か・・・この我が誘惑如きレジストできないとは・・・アイルー・・・いつ誘惑なんか覚えた・・・」


 「あっ!いつかまた飴玉のカケラが食べたい!」


 ビシュ〜〜〜〜


 アイルーが言い終わると身体の拘束?のようなのが解けた。


 「アイルー!いつのまに誘惑なんて覚えた!?我になんて事してくれたんだ!我はアイルーの事を・・・」


 「そんな事してないもん!リアク!色々言ったけど、本当の私の願いはリアクが帰って来てくれる事だけなの!だから約束して?リアクが居なければ私お腹が空いて死んでしまうよ〜」


 誘惑とは違う何かを感じる・・・これは種族間の何かなのか・・・レジスト以前の問題だ。絶対に逆らえない、マザーのような感じだ・・・。そして我はハナからアイルーを見捨てるつもりはない。


 「分かった。必ず帰る。そして我は死なん。この改造したアストラルボディに傷を付けられるような魔物はこの近辺には居ないと思う。だから安心しろ。アイルーはいつ新婚飛行に行くのだ?」


 「えぇ〜!?リアクのエッチ!」


 「いや違う!邪魔にならない程度に・・・」


 「リアクは私の交尾が見たいんだ!?」


 「だから違う・・・違う事もないが違う!


 「本当はリアクとの子供が欲しいんだけどそれはできないから〜」


 「同腹から育った兄妹での子作りは危険だ。これはどの生物、魔物でも禁忌に近い。アイルーもその事だけは分かっているようで良かった。我はアイルーとの子は作れないが、常に横に居る。安心しろ。そして・・・(コポ コポ コポ)」


 「え!?子供!?」


 「いや、違う。これは我とアイルーを足したような感じで造った土でできた蟻型ゴーレムだ。小さいから燃費が良い。これを5体護衛として連れて行け。外へ出る時は必ずだ。発声器官はないから喋れないが命令はアイルーが下せるようにしている。

 そして、この巣の鎮護役として、子が産まれるまで・・・(ゴボゴボ)よし。これで良い」


 「えぇ〜!?アブラムシ先生!?」


 「あぁ。アブラムシ先生を模した土のゴーレムだ。同じく喋れないが巣に近付いた敵をこの入り口で防いでくれる。お尻から本来なら蜜を出してくれるだろうがこの土のアブラムシ先生は毒を出す」


 「凄〜い!リアク天才じゃ〜ん!ありがとう!!(スリスリスリ)」


 「なっ、アイルー!?何で腹を擦るのだ!」


 「スキンシップだよ〜!ありがとう!」


 ふっ。このくらいは朝飯前というやつだ。まぁ飯は食ったがな。アイルーは直ぐにでも新婚飛行へと向かうだろう。

 種となる同胞は仕込んだら死ぬ運命となるが許せ。それが蟻の生だ。その代わり同胞の子は我が育てよう。

 どのファミリーよりも気高く、どの同胞よりも強い兵士に育て、どの巣より・・・どの家よりも大きく繁栄させてやる。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 そうと決まれば我は即座に行動をする。アイルーは旅立って行った。明確にいつ帰るかは聞いていない。が、アイルーは、


 『優秀な雄の子種を選ぶよ!』


 と、言っていた。我は気の合う奴にしろと言っていた。アイルーと相性の合う同胞の子の方が強い子が産まれると思ったからだ。

 

 我は巣の拡張だ。拡張と言っても部屋数を増やす訳ではない。まず既存の部屋を大きくするだけだ。そして、元が人間だからか排泄物処理はやはり気になる。最下層の一番深く掘った穴に投げ入れ、定期的に時限術式で燃やすようにした。

 その後は何もかも我が決めるのは良くないと思い、空間魔法に山のように入っている、かつての世界の下級魔物の魔石だ。

 この魔石に火、水の術式をエンチャントし、これから産まれる子なら誰でも石を割ればその場限りの魔法を使えるようにした。出力は最低だが、人間のような飯や身体を洗う水などは好きなようにできるはずだ。

 主に元居た世界では魔抜けの人間の為に我が作った魔道具のような物だが、まさかここで役立つとは思わなかった。

 仲間が増えると飯場、保育場、訓練所なんかも必要だ。蟻は賢い。が、学舎も作り、子の内に教育すれば強い種族となれる可能性がある。そりゃ大きさはどうにもならない故に、他の種族を淘汰することは叶わないだろう。我もそんな事は望んでいない。ただ、ファミリーが繁栄する事を望む。

 飯は我が居る間はどうにかなる。が、居なくなれば食べる物も事欠くこともあるだろう。その為には、いつか横に巣を拡張し、養殖場なんかも併設できれば良いだろう。

 それにやはり脱皮する前にはアブラムシ先生の蜜をまだ見ぬ子に飲ませてやりたい。アブラムシ先生の蜜は美味いからな。今でも飲みたいと思う。

 そして、我の探知魔法より優れた何かで敵の襲来を教えてくれるからな。あれはアブラムシ先生の固有技のようなものだと我は思っている。

 だがアブラムシ先生は攻撃ができる技がないからな。オレ達が守ってやらないといけないからな。


 「ほぅ?こんな所に巣なんてあったか?」


 「誰だ!?アブラムシ先生の守護を突破したのか!?」


 「ふぉっふぉっふぉっ。リアクじゃないか?」


 「その声は・・・アブラムシ先生じゃないですか!?マザーの所から出て来たのですか!?」


 「いやいや。実は同族の子が増え過ぎてしまってね。マザーに遠回しに言われてしまってね。このままなら子もご飯になってしまうとね。だから他の場所にも居た同族も子を残して旅立ったのだよ。

 以前、リアクが飛び出してすぐに大きな羽のないトンボが巣にやってきたんだけど、なんとなくアイルーとリアクが送って来てくれたのかと思ってその方角を探してたんだよ」


 「そうだったのですね!ならまた子に・・・」


 「それはもう無理だよ。私はもう少しで死ぬ運命なのだよ。そもそも私がこんなに長生きしているのは子を産まなかったからだよ」


 「え!?」


 「必ず皆平等に死は訪れる。私は他の同族より長生きだけど、それももうそろそろだよ。最後に私が見てきた蟻の中で1番異質・・・いや、良い意味だよ?その異質なリアクが気になり旅をしていたって話だよ。そして、疲れたから休もうとしていた所にリアクの匂いがしてね。来た訳だよ」


 「アブラムシ先生・・・」


 「悲しむ事はないよ。安心しなさい。巣の近くで死にはしないからね。ご飯に困っているなら私を食べなさい。あ、せめて死んでからお願いするよ。痛いのは勘弁してほしいからね。そして、私を糧にしてファミリーを大きくしなさい」


 「・・・・・」


 「口は達者でもまだまだ幼生のような考えのようですね。リアク。大きくなって・・・それに少し身体付きも変わったような・・・」


 「アブラムシ先生。提案があります。先生が何故、子孫を作らなかったかは知りませんが今後もそれはできませんが、命を長らえる方法があるのです!」


 「何かね?それは?」


 「入り口の守護者見ましたよね?」


 「あぁ。あれかね。攻撃されそうになり、私は戦う術がないから仰向けになったら何もされなかったからここに入れたのだよ」


 う〜ん。攻撃の意思ある者を排除するように土のアブラムシ先生を造ったのだけど、攻撃する術のない者は排除しないのか。我が造ったゴーレムだが我でも初めて知った事だ。さすが先生だ。我が師と言っても過言ではないな。戦うだけ、強いだけが全てではないと教えてくれた。これは戒めのような事だな。


 「先生・・・我を信じてくれますか?」


 「信じるもなにも私はもう死ぬのを待つだけだからね。それがリアクに役立つ事なら痛いのは嫌だけど、私を使いなさい」


 「痛くありません!ただ、試した事がないというか・・・自分では失敗した事がないってだけです!他の種族に試した事がないというのが本当のところで・・・」


 「どうせ、太陽があと3回登ったら死ぬくらいだろうから好きにしなさい。失敗しても私は恨みませんよ」


 「先生。失望はさせません」


 先生に戦える外骨格なんか作っても戦えないだろうからな。それにアブラムシ先生はほぼ動かないから機動力はあまり要らないだろう。羽のある他のアブラムシ先生も居たが、我の幼生時の給餌は羽のないこのアブラムシ先生だったからな。まぁそれはおいておいて・・・。

 防衛の要としてベリリウム銅を外骨格にしておけば良いか。魔道伝達が段違いに良いからな。骨格の内側に敵意のある者からの攻撃を自動で迎撃する雷術式魔法の魔法陣を描いておけば良いか。

 そもそもの虫や魔物の転生は初めてだから寿命が分からないな。ならば、念の為にアイルーやアブラムシ先生のアストラル体となり自動でホムンクルスへ乗っ取りできるように魔法陣を追加しておくか。アイルーは帰ってから描かせてもらおう。


 「先生。試した事はありませんが自信はある。よろしいか?」


 「うむ。任せるよ」


 「【イリュージョン】」


 (パタ)


 元の先生は死骸となったか。後はこれに乗っ取りができれば良いだけだ。


 「ファー。おや?」


 「ふっふっふっ。はっはっはっ。ハーッハッハッ!成功ぞ!我こそが大魔術師のブライアン様だ!」


 「リアク?これは成功なのかね?」


 「えぇ!先生!大成功です!これでまた我は一つ上の事を覚えた!まだまだ覚える事が多くて楽しい!我の研究は不滅なり!あ、これを。我が元に居た世界の樹液です。まず問題ないかと」


 「いただこう。こ、こ、これは!?甘い!初めて飲む!(ブルブルブル)出る・・・(ピト)滑り良し、粘り良し。リアク!飲みなさい!私からの礼ですよ」


 「先生・・・(ゴグッ)美味い・・・」


 「ふぉっふぉっふぉっ。良き。私はまたここに住まわせてもらってもよいのかな?」


 「そりゃもういついつまでも!アイルーから産まれる子のためにも!先生のお世話はお任せください!」


 「うむ。ありがとう。だがそれだけでは申し訳なく思うのだが・・・」


 「あっ、ならばこの巣が繁栄するには子への教育が必要なわけです。その先生も兼任していただければ助かるのですがいかがか?」


 「ふぉっふぉっふぉっ。そのくらいは受けましょう。子への給餌、教育は任せなさい。だが、訓練はできませんよ?」


 「それは我がする予定です。さぁさぁ!先生の寝床と学舎は今から作りましょう!アイルーが帰ったら喜びますよ!」


 「二度目の生があるとは・・・リアク。ありがとう」


 本当に面白い世界だ。いや、世界じゃなく虫という多種族様々な生き物が共生し、弱肉強食という世界だが、我はこの環境が好きだ。

 人間のように叡智を持ち合わせ快適な生活が当たり前だった。

 かつて我は便利な魔道具や魔法を突き詰め、魔道の真髄、真理を探究してきたが、己が忠実にただ生きる生は初めてだからな。これから先、命のやり取りもあるだろう。なんといっても最下級といえば否定したいところだが、小さい蟻という事実は変わりない。だが、その蟻の生がワクワクしているのも事実。

 蟻は蟻で地底に楽園を作る事も可能だ。我はこのファミリーから町を作り、街に変化させ、地底に巨大な楽園を作ろう!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る