第6話 結局は
「…そんなとこさ。身投げって言っても自分からししたかった訳じゃない。変わりたくも無かったんだ。」
僕がそう言うとアルは先ほどの意気揚々とした雰囲気とは打って変わって気まずそうにしていた。沈黙を破ったのはウェイドだった。
「そんな事があったのか。うちの区じゃ子供の身投げなんて名前なかったから結構騒ぎになったもんで、話が二転三転して身投げなんて不名誉が付いたのかもな。」
「まぁ、みんなゴシップは好きだからしょうがない。軍学校じゃ何も言われないだけましさ。」
僕がそう言うとウェイドは重く口を開いた。
「なんというか、すまないな。嫌な思い出だろうに。」
「いや、大丈夫だよ。過去なんて見てても一文にもならないし気にしてないんだ。」
沈黙が、四人席のうち空いている一人分の席居座り始めた。
未だ居続ける沈黙。
僕とウェイドは車窓の外を眺めた。アルはまた寝始めた。結局、心の内では気にしている。きっと、防衛本能というか、自身が危機的状況に陥らないために教訓を学んでいって、変わっていった。大人になるってそういうことだと思うんだ。幼少の頃に見た大人達がみんな聡明に見えたのは多分そういう事をみんな知っていて、変わる前の自分はただただ無知のまま過ごしていたからだ。戦地に行ったらまた変わってしまうのだろうか。もしかしたらよくない方向に、より悲観的になってしまいそうだ。そうなってしまったら今の僕は死んだも同然になってしまうのだろうか。そんなの嫌だ。すごく嫌だ。ましてや誰かの死や自分の傷を目の当たりにするなんて、考えたくもない。でも逃げることなんてできない。一寸先は戦場なんだから。
僕の向かいに座っているウェイドが口を開き始めた。
「おい、あそこ。」
僕の後ろの方向の車窓の外、列車の向かう先には煙がいくつも上がっていた。恐らく砲撃とカバネの攻撃による煙とが混じったものだろう。前線はそう遠くない。
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