第28話 失われた言葉と、原初の番人
崩れゆく封印区画の深淵に、ルナとゼノが急ぎ足で降りていく。
「ここまで壊されるなんて……誰かが意図的に動かしている」
ゼノの剣が薄暗い空間を切り裂き、光を灯す。
「封印は世界の均衡の象徴。今、このバランスが崩れれば、何が起きるか分からない」
一方、イアは自室の窓辺で目を閉じていた。
夢に見た「記憶の残響」が彼女を呼んでいる。
「イア……目を覚まして」
かすかに聞こえた声に、振り返るとそこには――ロゼが静かに立っていた。
「俺も行く。イアに必要な“真実”を、一緒に探そう」
イアは深く頷き、手を伸ばす。
二人は共に記憶の導くまま、封印区画の崩壊した入り口へと向かう。
その時、奥から重々しい足音とともに巨大な影が現れた。
封印の番人――「アルカナクス」。
漆黒の鎧を纏い、瞳は冷たく鋭い光を放つ。
「…誰だ、お前たちは」
声は低く響き、周囲の空気を震わせた。
イアは震えながらも、言葉を紡ぐ。
「わたしはイア。記憶の断片を求めてここに来た。これは、わたしの“試練”」
ロゼが前に出て、番人の視線を鋭く受け止めた。
「私たちは仲間だ。イアの過去も、真実も、共に探す」
アルカナクスは一瞬の間を置き、そして呟いた。
「…お前の名は……イア。“世界そのもの”。」
イアの心に忘れていた何かが、ざわめき始める。
番人の剣がゆっくりと宙に掲げられた。
「覚悟はできているか。ここから先、記憶は痛みを伴うだろう」
イアは強く頷き、ロゼの手を握り返した。
「どんな痛みでも、わたしは逃げない」
その瞬間、アルカナクスの眼が光を放ち、三人を包み込む。
闇の中で、失われた言葉が蘇り始めた。
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