第22話 呼ばれぬ神々

ギルドの広間は、昼下がりの光に包まれていたが、空気はどこか重苦しい。イアたち新米冒険者は森の聖堂での任務から戻り、報告のために集まっていた。しかし、口にできるのは事実のごく一部だけであり、胸に刻まれた「何か」が彼らを静かに締めつけていた。


「聖堂の封印は、確かに脆くなっていたけど……ただの魔物の暴走じゃない。あの場所には、何か――説明できないものがいた気がする」イアは言葉を選びながら話すが、仲間たちの目には言葉以上の意味が映っていた。


ルナは一歩前に出て、眉をひそめた。「あの瞬間、私には、まるで昔の記憶が頭の中でざわめいたような気がした。……でも確信は持てない。あれが何なのか、何を意味するのかはまだ分からないわ。」


その言葉に、場内は一層静まり返る。報告書には到底書き記せない“何か”が確かにそこにあった。だが、それは公式には“記録できない”事象だった。ギルドの規則が、そう決めている。


そんな時、薄暗い廊下の奥で、ひそひそとした声が交わされていた。


「イアの正体が、確かに何か特別なものだと見ていいな。」


「旧時代の存在、つまり神々の時代からの力……あの子が世界そのものと繋がっているのかもしれない。」


「これ以上、放置しておくわけにはいかない。ギルド上層部に知らせるとしよう。」


冷たい決意を込めた声は、まるで古の神々の呼び声のように、闇の中で反響した。


一方、イアはその頃、ギルドの自室に戻っていた。心の中には、聖堂で感じた「懐かしさ」と「違和感」が入り混じっていた。


「私、あの時何かを感じた。でもそれが何かは分からない……」イアは窓の外に目をやる。夜の闇が街を包み、星が瞬いていた。


ルナがそっと隣に座り、静かに言葉を紡いだ。


「もしかしたら、私たちはまだ知らないだけなのかもしれない。イア、あなたは世界の中心にいる、でもそれがどういう意味かは、これから少しずつ見えてくると思う。」


イアは静かに頷き、心の奥底にわずかな希望を灯した。


その頃、誰にも気づかれず、闇の奥で「呼ばれぬ神々」が動き出していた。彼らは古の力を取り戻すため、そして世界の未来を揺るがすために、静かに歯車を回し始めていた。


イアの旅は、まだ始まったばかりだった。彼女の知らない力と秘密が、ゆっくりと姿を現そうとしていた――。

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