第18話 冒険者ギルド「塔の灯」

ガリレアの街に足を踏み入れた私は、その光景に息を呑んだ。


壊れかけた城塞の石壁は風雨に晒され、ところどころ崩れていたが、その古びた姿に威厳があった。城門のそばには冒険者たちの姿が見える。鎧を纏い、剣や弓を携えた者たちが行き交い、街は活気に溢れていた。


「ここが噂の、冒険者ギルドか……」


エルが呟く。彼女の目も鋭く輝いていた。


ベルンが馬車の手綱を引き、街の中心へと進んだ。道端には市場の屋台が並び、香辛料や金属細工の匂いが漂ってくる。


「さあ、ここで新たな一歩を踏み出すんだ。イア、気を抜くなよ」


ベルンの声に私は頷き、革のバッグをしっかりと握りしめた。


街の一角に建つ、燃え盛る松明の下で、巨大な木の看板が掲げられている。


『冒険者ギルド「塔の灯」』


扉は重厚で、大勢の冒険者が出入りしていた。


私がその扉を押し開けると、中は薄暗くも賑やかだった。壁には様々な依頼書が貼られ、カウンターの奥には中年の男が目を細めて待っている。


「初めてか?」


声をかけたのは、眼鏡をかけたギルドマスターのグレゴールだった。


「ええ……私はイア。今日から冒険者になります」


私の声は少し震えていたが、決意が感じられた。


「そうか。君のような若い魔法使いは歓迎だ。これに手を触れてくれ。」


「これは?」


「魔力量を測る石。ギルド登録前の“計測”に使うんだ。見せてもらおうか、あんたの力」


グレゴールが促し、私は柱の前に立った。


そっと手をかざすと、魔力石が淡く光り出す。


虹色の光が、石の中心から天井を突き破り、天に向かって、まっすぐに伸びていった。


周囲がざわめく。


「……は?あれ、伝説等級の反応じゃないか?」


「新入りだぞ? マジかよ」


私は光が収まるのを見届け、そっと手を下ろした。


「イア。仮登録完了だ。あんた。まずは正規登録試験が待っている。」


エルも傍らで頷き、私の肩に軽く手を置いた。


「最初は誰でも不安だ。だが、慣れと共に自分の力がわかってくる」


「ありがとうございます」


私は感謝の意を伝え、カウンターに掲げられた依頼書に目をやった。


そこには小さな村からの「野生の魔物による被害の調査依頼」があった。


まずはあれをやろう。私は決めた。


そのためにも正規登録試験に合格しなければ。

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