第5話 イアの魔法特訓日記
朝の森は静かで、涼やかな風が草木を揺らしていた。
イアは膝をつき、目を閉じる。呼吸を整え、魔力を体に貯める練習から始めるのが日課になっていた。
落ち着いて体に流れる魔力の道筋を変えていくと、
じんわりと体の部位が熱くなってくる。
それを、薄く放出して鎧のようにまとわせる。
「おっ?いい感じじゃん!」
エルのお墨付きをもらった。やった。
「風……火……水……土……」
目を閉じたまま、それぞれの属性をイメージする。
ふと、右手が熱くなる。火。左手が冷える。水。
左足で風が渦を巻き、右足に重みが集まる。土。
「……っ、全部…できた……?」
「へぇ、まさか本当に全部とはねぇ」
木陰から見ていたマーリンさんから言われた。
「いやぁ…なんとなく……できちゃった、みたい……」
「四属性全部の適性なんて、普通は一人もいないもんだよ?
それ、イアの“無詠唱”とおんなじでね。」
【おいマーリン、無詠唱なんて話は1回も言ってないぞ?】
「もう隠しても遅いでしょう?眼の前の光景を見た人がいたらどう説明するわけ?」
エルがこっちを見る。
あっ。黙ったまんまだった。
【言葉を使わず、魔力を直接流す……それって、昔の記録に出てくる“古代魔法”と似てるよなぁー】
「古代魔法……?」
なんだそれ?
「正直、イアの魔力は普通じゃないの。扱い方が素直すぎる。まるで“魔法そのもの”が、イアを選んでるみたいにね。」
魔法そのものが私を?
その日の午前中はそれだけで訓練は終わった。
あとは、空間の魔力。つまりは魔素の使用法の座学だった。
「魔素は空間に点在する魔力のこと」らしい。
あとは、「魔力圧縮法」魔力を圧縮して威力や使い方の幅を広げる技術らしい。
午後は周辺の森で訓練をするらしい。
「森に今から入るから、気をつけるのよ?」
マーリンさんに言われた。
私は無言で頷いて足を踏み入れた。
「森での訓練は、風属性を足にまとわせて移動速度を上げる訓練よ。ツタに足を絡ませないようにねー」
気を引き締め、足に魔力をまとわせて足の負荷を少なくしつつスキップで進んでいく。
「あっ。そうだ。足裏に魔力を圧縮して小さく爆発させたらシュッって移動できるんじゃない?」
ボンッ
小さく土がモコッと盛り上がり、体が中くらいの推進力により弾くように移動する。
「こっちの方がたのしいや!」
少し遊んでいると、変な響きを感じた。
ドドドど地響きが近づいてくる。
「あっ。これも使ってみよ。」
習ったばっかりの「
ちょっと大きい魔力の塊が何個も近づいてくる。
「わぁ。なんかきてる。」
「ちょ逃げよ。」
魔力の板を魔素で形成して浮かせる。
下へ魔力を圧縮して3割で上に体を弾き飛ばして板に飛び乗る。
下を覗いてみると、大きな人形の豚がわらわらと来ているではないか。
「わー。あれってオークかな?」
うーん。すごく気が立ってるみたい。
このままにしていたら危ない。
だが既に恐怖というトラウマで体が動かない。
突如として立っているための土台が崩れ去った。
魔力制御を誤ったのだ。
イアは、真っ逆さまに落下していった…。
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